[ 本格/新本格 ]
屋上の道化たち
御手洗潔シリーズ
島田荘司 初出版: 2016年04月 平均:6.00点 採点者数:7人

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採点傾向
No.7 7点 名探偵ジャパン 2017/07/26 21:20
「世界よ、これが島荘だ」
島荘がまだこういったものを書いてくれるということだけで嬉しい。
超常現象としか思えない不可解な謎。それに翻弄される市井の人々。愛され変人御手洗。炊飯器でケーキを作る石岡くん。そして、御手洗が暴き出す「あっと驚く」異様な結末。古き良き時代、と言っては違うかもしれませんが、懐かしい景色がそこにありました。
全くの無関係と思われた各登場人物の行動の全ては、「あのトリック」を引き起こすための周到な(作者としての)計画だった。「これをやるためだけに、お前たちは人生の艱難辛苦を乗り越えて(乗り越えられなかった人がほとんどだけど)きたのだ」本作のキャラクターたちに対しては、本当にお疲れ様、と言いたい。全ては、あの一瞬のために……。
ハードカバーで400ページ越えという分量ですが、ほぼ一気に読んでしまいました。引き込まれるように読む、というよりは、「もう少しだけいいでしょ?」と、中断しようとしたところを上手く誘導されて読んでしまった。というような変な感覚でした。これもベテランの手腕なのでしょう。
ところで、本作の舞台設定は1991年ですが、当時「イケメン」という言葉はあったでしょうかね?

No.6 4点 蟷螂の斧 2017/04/01 14:57
意図的に軽薄な登場人物にしているのは分かるのですが、そのおかげで物語自体も軽薄な感じとなってしまいました。著者に期待していた作風とは、かけ離れていて残念な結果。

No.5 5点 虫暮部 2016/09/30 11:48
 私は、風圧か電気による事故だと予想したんだけど……。 

 銀行強盗の夜の出来事だが、トイレのドアがこじ開けられる→外壁から屋上にダイヴ→サンタがジャンプし電線が切れる、という成り行きなのだから、“ドアを開けた瞬間に停電”ではない筈。秒単位の時間差であって同時だと認識しても現実としてはおかしくないが、小説の文章なのだから“瞬間”という言い方についてフォローすべきだと思う。

 過剰に俗物的な登場人物の会話は、たとえ作者の意図だとしても、私には笑えなかった。

No.4 7点 メルカトル 2016/07/14 22:16
さすが島田先生、群を抜くリーダビリティで一気に読ませます。
全編を覆うコミカルな雰囲気と連続墜落死という不可思議な謎の対比、それに並行するように寄り添うしがないサンタクロースのティッシュ配りの思いがけない展開、何かとついていない男の苦行。これらが混然一体となって一つの収束に向かうプロットは、島荘の本領を発揮していると私は思う。
ただ、トリックには確かに無理があるし、あまりに偶然が重なりすぎており、さすがに手放しで称賛するわけにはいかない点も多い。それも含めてのこの点数である。甘すぎるかもしれないが、往時の重厚な雰囲気の欠片も感じられないが、それでも本作にはどこか憎めないところがある気がしてならない。
作風はずいぶん変わってしまったが、御手洗だけはあの頃と変わらないのが嬉しいのである。

No.3 5点 人並由真 2016/07/01 03:41
(ネタバレなし)
 およそありえない連続怪死事件(自殺? 殺人? 事故死?)という魅力的な謎を提示。やがて種々の多様な伏線の果てに、バカミス的な大技で真相を豪快に割り切ってしまう流れは、なかなか好ましい(まぁ短編ネタのトリックを、むりやり長編化しているという批判もうなずけないでもないのだが)。

 しかし一方、本作の主要登場人物と言えるメインゲストキャラ複数の叙述があまりにくどく、その割には該当の連中にほとんど感情移入の類もできない。そういう部分で、一冊の作品としての評価が下がってしまうのも正直なところ。
 まぁ作者がそういった種類の作劇に込めた狙いは<最後にキーパーソンとして浮上してくるある劇中人物>にも、きっとメインキャラの彼らと似たようなシンドく生臭い事情があったんですよ、と暗に感じさせるためなのだとは思うんだけれど。

 ところで本書は、タイトルロールにある「道化」のキーワードがあまり意味を持ってないよね? なんか計算違いがあったんでしょうか。  

 新人か、まだ新鋭と呼べる領域の作家がこれを書いていたのなら、評価はもう1点上がるんだけれど、ベテランなら、まぁ良くも悪くも期待の範疇・・・ということでこの評点。 

No.2 8点 Campus 2016/04/28 10:27
「まったく自殺する気がないのに、その銀行ビルの屋上に上がった男女は次々と飛びおりて、死んでしまう。いったい、なぜ? 「屋上の呪い」をめぐる、あまりにも不可思議な謎を解き明かせるのは、名探偵・御手洗潔しかいない! 「読者への挑戦」も組み込まれた、御手洗潔シリーズ50作目にあたる書き下ろし傑作長編! 強烈な謎と鮮烈な解決! 本格ミステリーの醍醐味、ここにあり!」(Amazonの作品紹介欄より)

うっわあ、驚いた。
滅茶苦茶ストレートな御手洗潔シリーズの傑作です。
たった一つのネタで全ての謎をねじ伏せる様は、もしかしたら『暗闇坂』……いや、『北の夕鶴』あたりの初期作品以来かも。
ぶっちゃけた話、そのネタ自体は(島田ファンにとっては)分かりやすいとは思うのですが、まさかそれでここまでの物語と謎を作り出すとは。作中で御手洗が美しい数式と述べていますが、まさにそれで、xに特定の数を代入することで全てが解き明かされる方程式みたいな趣があります。
まさしく剛腕。ぶっ飛びました。

もうちょっと具体的に良かった点を並べてみます。

・謎が強烈
粗筋に書いてある通り、自殺なんてする筈がない銀行員たちが屋上に上ってぴょんぴょん飛び降りて死んでいくのがメインの謎。どうです?これ、読みたくなりません?
「はは、僕が自殺なんてするわけ…」→ドーン!の連続はただただ強烈。

これ以外にも、死んでいった銀行員たちの中での隠し事や宇宙人、ひいては近所の店が妙に景気が良いなど、関係ないとしか思えない謎がぽんぽん出てきます

・で、その謎が全て一つのネタで解明される
上で述べた通り、ここが素晴らしい。
島田荘司フォロワーというと谺○二や小島○樹など、みみっちいショボイ謎を人が飛んだりする程度のショボイトリックで解明してドヤ顔する系の連中が多いわけですが、はっきりいって、そいつらとは格が違います。
島田荘司は人を飛ばすから剛腕なんじゃないんですよ。全ての謎を一つのトリックで解き明かす手腕が剛腕なんですよ。
やはり神。

・『嘘でもいいから~』以来のコミカルさ
謎解きもの以外の部分でも結構楽しませてくれます。
まず、全体を通して非常にコミカル。
道化という単語は多分、このあたりから来るのかなあ。第一章の飛び降りの連続とか大爆笑です。

・御手洗潔が御手洗潔してる!
で、更に素晴らしいのがこれ。
『ネジ式』とか『魔神』とかのミタライではなく、「舞踏病」とか「疾走する死者」あたりの御手洗をしてくれています。もう、ここだけでファンとしては感涙。

久々にかっ飛ばしてくれた快作でした。
もうちょっと文章を絞って300頁前後にしてくれれば引き締まったのになという感じがしなくもないくらいかな。不満を言いたいのは。
でも『幻肢』みたいな冗長さはないので、そこまで気になったというわけでもないのですが。

本格ファンは必読でしょう

No.1 6点 Fareast 2016/04/27 18:51
長編というよりは短編の御手洗物を思わせる展開。舞踏病事件の頃の雰囲気を感じました。
登場人物がおかしな人ばかり。
肩の力を抜いて楽しむのがいいのかも。