[ 社会派 ]
罪の声
塩田武士 初出版: 2016年08月 平均:6.00点 採点者数:3人

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採点傾向
No.3 7点 ねここねこ男爵 2017/11/10 23:21
元新聞記者である作者が綿密な取材活動のもとグリコ森永事件を元ネタに書いた小説。犯行に用いられた『子供の声のテープ』の声の主と新聞記者のダブル主人公が真実を追う。

いわゆる社会派ものなので、証人や秘密を握る人物が都合よく次々とあらわれるのはお約束。ただ、情報が出揃ってからの中盤以降はスピードもありテンポよく面白い。新聞記者の経験を多く盛り込んだそうで、取材の生々しさを感じとることができます。文章も読みやすく、無駄に引き伸ばすこともなくストレスなし。

真相は当時色々推理されていたものの一つに近く意外な真実というわけではありません。ただ、実際の事件でもあった不可思議な点などもきちんと説明されており、「犯人は架空だが、真相や犯人グループの役割などはそれほど外していないと思う」とのことで未解決事件マニアも納得の作品。

普段は本格マニアの自分ですが楽しかったです。
作品の性格上、まとまった時間を用意して一気読みをオススメします。

No.2 4点 虫暮部 2017/08/31 07:17
 31年前の未解決事件を新聞社と俊也が同じタイミングで調べ始める、という偶然はアリか?今になってここまで辿れた線を、当時何故警察は逃したのか?
 実在の事件をネタにしたという以上のプラス・アルファはあまり感じられず、“出落ち”のような印象。この作品自体が広義での“便乗商品”であって、作中のマスコミ・社会批判はそのまま自身に返って来るのである。あまり私の好みではなかった。

No.1 7点 2017/05/16 10:40
昭和最大級の未解決事件、グリコ・森永事件がモデル。本作では「ギンガ・萬堂事件」。
高村薫氏の「レディー・ジョーカー」も同事件のモデル小説だが、本作のほうが実名を使ってある分、本物感がある。

記者の阿久津と、テーラーの主人である曽根とによるカットバックスタイルにより、物語は進行する。
真相がおおむねわかるまでの事件捜査&ノンフィクション風・パートは、登場人物が多いこともあって、やや読みにくく混乱ぎみだったが、事件の核心にたどり着いてからの捜索&社会派ドラマ・パートは、一気読みモードだった。後半の読み応えはすごかった。
中盤まであの表紙の意味を理解できなかったが、読み終われば納得だった。
こんな悲劇が起こっていたとはね。
もしかしたら現実のグリ森事件も同様か、もっとひどいのかもしれない。

阿久津も曽根も、最初はたよりなさそうに見えたが、真相に近づくにつれ強くなっていくようで、社会派らしい地味なキャラクタにもかかわらず気持ちよく感情移入でき、その点にも満足した。特に阿久津の成長には目を見張るものがある。

後半の読書中、久しぶりに感情が昂り、読後の興奮度合は凄まじく、我ながら驚いた。
昨日の読了時には評点9点、でも翌日の今日は、ミステリー性と、興奮が覚めた分とを考慮して、7点かな。
人間ドラマファンや、社会派ミステリーファンなら薦めなくても読むだろうが、本格一辺倒の人たちにも、ぜひ読んでもらいたい。でも、おそらく読まないだろうw