[ 本格 ]
シャム双生児の秘密
国名シリーズ
エラリイ・クイーン 初出版: 1960年01月 平均:5.95点 採点者数:22人

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採点傾向
No.22 6点 虫暮部 2018/07/20 09:31
 シャム双生児の刑罰に関する法律談義が面白い。

 さて、国名シリーズ9作を読み返して思ったこと。タイトルとストーリーの関わりが乏しく、国名を掲げる為にこじつけているようなケースが少なくない。で、あれば。内容の共通性があるわけでもないこれらの作品群を、さほど意味のないタイトルを基準にひとくくりにして、シリーズ内シリーズとして別枠扱いする正当な必然性はあまり無いんじゃないの?

No.21 9点 クリスティ再読 2017/07/02 22:52
皆さんあまり指摘しないようだけど、評者は本作はアンチ・ミステリだと思う。
全体的に仕掛けが素晴らしく成功していて、後期クイーンは本作を何度も模倣した感じの作品を書いているけど、それらは全然本作には及ばない出来だ。本作は「後期クイーン」の前哨戦かもしれないけど、見事にかみ合って後期クイーン的作品の頂点と言っていいだろう。クイーン作家論としても超重要作である。評者なんかミニチュアの「黒死館」だと思うよ...

(アンチ・ミステリの論拠を説明しなきゃいけないから、アカラサマじゃないけど少しバレます)

後期以降定番になるダイイング・メッセージ物である。本作のアンチ・ミステリらしいところというのは、エラリーがダイイング・メッセージの象徴解釈を延々するのにもかかわらず、ダイイング・メッセージ自体が周囲の人々を惑わすための「アンチ手がかり」でしかない。エラリーも象徴解釈が大好きなためにそれに見事にひっかかるわけだ。本作は殺人が起きるまでクイーン父子が探偵だということが周囲に知られていないから、「名探偵をひっかけよう!」というものでもなく、真犯人から見たらターゲットへの「嫌がらせ」みたいなもののようだ。なのでエラリーは本当に黒死館風に「何もないところに空中楼閣を築く」ことになってしまう。後期に繰り返される「探偵の失敗」でも、本作のはアイロニカルな手ひどい失敗である。
犯人を導く真の手がかりは、象徴解釈ではなくて、意味を欠いた盲目なリビドーなので、これも一種の「アンチ手がかり」だったりする。がっかりする読者もいるようだが、評者は用意周到な狙いだと思うんだがどうだろうか?
本作と言えば山火事だけど、これはサスペンスを狙ったもの...と皆さんは読みがちだけど、山火事はすべての意味を焼き尽くしてすべて消し炭に変えてしまうカタストロフである。だから、ダイイングメッセージさえも、山火事は焼き焦がしてすべて意味を奪ってしまうものなのだ。しかし、アンチ・ミステリとして読むのなら、この山火事こそが、過剰な意味(しかも誤った解釈)から浄化して解放する契機だと読むべきなんだろう。そういう構図を見たら、本作は一個の象徴詩みたいなものだよ...

エラリーは、この瞬間、いま一同の注意力が完全に奪われているとき、ほんのつかの間、一同が死から面をそむけているこの瞬間、彼らの上に天井がぐらぐらと、煙とともに崩れ落ちることによって死がもたらされ、なんらの警告も、苦痛もなく、生命が一挙に抹殺されることを、どんなにか熱烈に希求した。

探偵小説が死を扱う「非情さ」に「死を克服しようとする意志」を見るというのを確かカフカが言ってたように記憶するけど、目前に迫る全員の死を前にして、はかない抵抗ではあっても「個人の死」にこだわり続け、犯人を指摘しようとするエラリーの姿が実に尊い。後期みたいにめそめそしないのがイイな。
なので、本作をCCとかいうのはまったく見当はずれで、本作の素晴らしいところはそういうアンチ・ミステリな部分である。あなたはなぜミステリなんて読むんですか?と読後問いかけたくなるような名作だ。

No.20 7点 斎藤警部 2016/08/03 12:05
サスペンスを煽るべく使命を帯びた不気味な人物や不審人物が何人も登場しますが、主人公(?)のシャム兄弟が決してそちら側ではなく爽やかな少年たちとして描かれているのが良いですね(穿った見方をすればそのお蔭で彼らを容疑者リストから外せなくなる)。しかし「巨大なカニ」って。。某バンド(バンヅ)のシルエットロゴじゃないんだから。

カードを巡る云々も、そのロジックだけ取りゃ何だかなァという気もしますが、独特の閉ざされたサスペンス感あるからこそなかなかの興味を唆ってくれます。スペクタクルな山火事避難の大団円(?)もエキサイティングで良いよ。唸らせはしないけど、読ませる本だね。

No.19 7点 青い車 2016/02/02 21:37
ダイイング・メッセージを扱った作品は数あれど、ここまで本格的に謎解きの中心とした長篇は少ないでしょう。特筆すべきなのは、二種類のメッセージの真相がストレートなものとは大きく異なるところです(ネタが割れないように回りくどい言い方をしています)。ダイイング・メッセージというテーマそのものの弱点を突いたような内容であり、そのねじれた構図は当時としてはかなり新鮮なものであったのではないかと思います。本作はさらにクローズド・サークルというシチュエーションに、怪しげな登場人物といった他の作品にはない要素が加わり、そこもまた大きな魅力となっています。ただ、ストイックにダイイング・メッセージ絡みにのみ焦点を絞った推理はダイナミックさに欠け、犯人特定のロジックが唐突で浮いてしまっているのは大きな難点です。とはいえ、そこも含め異色の作品として独特の輝きを放っているのは確かで、ファンが多いのも頷けます。

No.18 6点 makomako 2015/05/20 22:25
 このところエラリークイーンにはまって何冊か読み進めていますが、これはちょっと落ちるかな。
 今となっては孤立した山荘での不可解な殺人事件というのもちょっとありふれています(発表当時はそうでもなかったかもしれないが)。登場人物が少ないので読むのは楽ですが、やっぱり犯人は当てられなかった。なるほどそうくるか。
 評価がちょっと低いのは、クイーン警視が容疑者に過ぎない人物を射って重傷を負わせても対して反省していなかいうえに自分のミスで殺人をさせてしまうなど全くさえない。エラリーも事件解決の時までほとんどでくのぼうのよう。
 周囲から山火事が来るのがわかっているのなるまず逃げる算段をし、ダメなら周囲の木や草を刈り取るか穴を掘るぐらいもっと前に気づくべきでしょう。
 ほかの作品が素晴らしいのでちょっと評価が厳しいかもしれません。

No.17 6点 ボナンザ 2014/04/08 17:34
いわゆる嵐の山荘もの。このシリーズにその設定の作品がこれまでなかったのが不思議だが。
なぜか読者への挑戦状がないというおまけ付き。

No.16 5点 好兵衛 2014/04/05 19:09
私としては、4.5点くらいです。

国名シリーズを、準に読んでいますが。
物語は一番面白かった。私の好みでした。
現実感から離れた、
怪奇的、冒険的な部分もありますし。

読みやすかったし、とても早く読んでしまった。
小説として、大分読みやすくなった気がします。
(帽子、白粉あたり、私は凄く読みにくかったので)

推理小説としては、ぬるかったです。
挑戦状つけなかったのも、
犯人断定できないからでしょうか?

物語の面白さ、プロットなどもあると思うのですが。
彼の持ち味って、そこではないと思っていて。
やっぱり、謎がないと。
推理小説じゃなくても、いいわけですし。

トランプのくだりは、面白かった。
そこしか、推理する要素が無かったかな。
短編ででも、まとめられたような気がします。

No.15 5点 アイス・コーヒー 2014/01/16 19:18
国名シリーズでは珍しい、山火事で脱出不可能になった山荘での事件。冒頭からその雰囲気は良く出ていて、どこか「Yの悲劇」を思わせるが、推理の方はもっぱらダイイングメッセージで物的証拠の組み合わせなどはない。ただ、この手のミステリで、ここまでき壮絶な終わり方は珍しいんじゃないだろうか。さすがに「骸骨」はひどいだろ、と思ったり。そこが気にいった。
しかし、論理が中途半端でいくつか不満も残った。詳しくは下に。
以下ネタバレ気味。


多重解決のような構成をとっているうえ、物的証拠がほとんどないなら、最終的にエラリーが出した答えが正しいとは一概に言えないのでは?伏線も少なかったし、少し物足りない。それにトランプにあれだけしっかりと指紋が残っているなら対処のしようもあると思うのだが…。
自分の好きなクイーンらしさが出ていないような気がしてならない。評価は好き嫌いで大きく分かれるはずだ。

No.14 8点 バード 2013/09/07 07:58
順番をがん無視して初の国名シリーズとして読んだ、個人的にはX,Y,Zに勝るとも劣らないロジックでクイーン凄いと思わせられた。特に死後硬直からダイイングメッセージの真偽を暴く理論は素晴らしく伏線とロジックは今の作家達が手本にしたがるのもうなずける。

火事のおかげで物語りに緊張感があったのも良かった。個人的に残念な点は中盤までは結構退屈な展開だったのと犯人の決め手となる指輪の盗難癖は唐突なうえに事件と独立してしまっていた2点、その2点分をマイナスさせてもらった。

No.13 6点 ガーネット 2012/11/08 20:40
国名シリーズ7作目。
ホラー映画じみたマッドサイエンティストや嫉妬深い妻、《骸骨》と呼ばれる使用人、ホームズという名の科学者などの個性的な人物とクイーン親子は、山火事によりアロー山に閉じ込められる。
迫りくる業火の中、殺人事件が発生する。疑心暗鬼にかられる人々。巨大なカニのような謎の影。クイーン親子も焦燥感を抱き…
かなりスリリングで魅力的なストーリーです。「フランス白粉」や「オランダ靴」など、解決の緻密さを優先するあまり、ストーリーの起伏が少なめな国名シリーズ初期の作品と比べると、確かに飽きさせないサスペンス性があります。




(ネタバレしています)
しかし、この作品は国名シリーズ初期の作品と比べると論理的解決の魅力を欠いています。
クイーン警視の指輪が盗られた→犯人は窃盗病である→ゼーヴィアの寝室から指輪が駆逐されていた→犯人はあの人
簡潔に言えばこれがロジックの全てです。しかしこれだけではロジックがいくらなんでも飛躍しすぎでしょう。何よりまずいのは、あの人以外にも窃盗癖を持つだろう人物がいる可能性を検討していないことです。クイーンとは思えないような初歩的な穴です。
読者への挑戦は「うっかり忘れた」などとすっとぼけていますが、やはりあえて抜いたという可能性が濃厚ですなぁ。
まあ楽しめたからいいけど…あんまり国名シリーズっぽくない作品。いや、作品の内容とタイトルが合致しているという点ではある意味一番国名シリーズか?(笑)
そしてやはり体が結合しているシャム双子の片方が無実の場合、罪状の執行はどうなるのかという問題は興味深いもの。そういう状況って考え付かないけど、本当にそんな事が起こってしまった場合、どうなるのだろう…?

No.12 7点 あい 2012/10/30 18:33
事件の推理、とくにトランプについての推理はおもしろかった。しかし山火事の危機感とか緊迫感はまったく感じられなかった。

No.11 4点 HORNET 2012/10/09 22:08
 私の好きなクイーンの国名シリーズだったが、他作品とは色が違う。この色の違いをよしとする人もあれば、そうでない人もいると思うが、私は後者である。要はクイーンに何を求めるか、だと思うが。
さらにきっとクイーン自身も新たな境地に挑む意欲作だったのではないかと推察するが。
 怪奇的な要素も盛り込まれ、いつも以上に特殊な状況下での展開は、確かにリーダビリティが高い。が、ダイイングメッセージの解釈の二転三転が中心となったこの話は、それにしては冗長すぎる。その埋め合わせとして、怪奇的な要素や、山火事の進行という要素を盛り込んだという感じがする。そう思うと、このタイトルもどうかと思う。
 唯一、「クイーン国名シリーズ」の特異性という点で印象に残った。

No.10 5点 isurrender 2012/05/31 07:23
山火事によるCCものですが、日本のCCと比べ登場人物たちは特にパニックになることもなくのんびりしているのが印象的です
トリックもそこまで機転の効いたものではないと思います

No.9 6点 ミステリー三昧 2011/04/10 01:50
<創元推理文庫>国名シリーズの7作目(長編)です。
本作の特徴として、舞台設定がクローズドサークルとなっていることが挙げられますが、それほど設定を生かし切れていません。逃げ出すこともできず、また外部との連絡も遮断され状態で、なおかつ身近に殺人鬼がいるといった状況下であるなら、もう少し緊迫した雰囲気があっても良かったはずです。私的には「つぎは私が殺されるかもしれない」といった脅える姿がいっさいなかったのに違和感を感じましたし、また第二の殺人が発生したとき、エラリーはみんなの寝室を訪ねに行きますが、殆どの人間がドアに鍵を閉めていなかったことに驚きました。まるで、もう殺人は起きないことを知っているかのような振る舞いです。もう少し舞台設定に沿った展開、ストーリー運びが必要だなと思いました。
フーダニットに関しては、詰めが甘く評価は低めです。〇〇に対するロジックの積み重ねが薄く、そこから犯人の癖を導き出すのは難しい。犯人を当てるのは読者にとっては不可能に近いでしょう。ただトランプカードを手掛かりとした推理の二転三転は読みごたえがありました。ダイイングメッセージは、大したことありませんが、利き手に関する気付き1点からからのロジックが素晴らしい。トランプカードに対する最終的な解答に至るまでの過程は、高く評価したいです。

No.8 5点 kanamori 2011/02/04 17:55
山火事に取り囲まれた山荘での殺人や、怪異なシャム双子の登場など、面白そうな演出がありながら、あまり活かされていないように思う。やはり、クイーンはストーリーテラーとしては一流とは言えないと再認識させられた作品。
メインの謎は、二度にわたるトランプのカードによるダイイング・メッセージですが、偽の手掛かりを入れて徒に複雑化している点で面白味に欠ける。読者が推理して真相に至るのは難しく、カタルシスも感じなかった。
だいたい、ダイイングメッセージを扱ったクイーンの長編で感心出来たものは見当たらないけれど。

No.7 8点 monya 2010/10/11 23:02
私的には国名シリーズの中でベスト3を争うぐらい好きな作品。
なにせ、面白い。
クイーンの国名シリーズはストーリーとしては退屈なことが多い。それは「読者への挑戦」や「数学的な推理」の比喩に現れているように、クイーンの真摯な姿勢の表れだから悪いとは言わない。だがとっつきにくいのは事実だと思う。
それに対し、このシャムは違う
発端からラストまでハラハラドキドキさせてくれる。おどろおどろしい雰囲気、クローズドサークルのスリル(まあクイーン親子は生き残るに決まってんじゃんと冷めた目で見る人もいるだろうが)! それだけじゃなく、クイーンの論理もきっちり決まっている。
必読の一冊だろう

No.6 5点 E-BANKER 2010/09/12 21:34
国名シリーズ。
クローズドサークル内の殺人事件や、「読者への挑戦」がないなど、シリーズ中でも異色の作品として有名。
他の方の書評でも触れられてますが、確かに全体的に中途半端感を感じてしまいますねぇ。
異形の双生児や「骸骨」という名の登場人物(すごい名前・・・)など、ちょっとおどろおどろしい雰囲気作りもあり、フーダニットとしての味わいとしては優れていますが、真相は「うーん」という感想。
今回、エラリーの推理は二転三転するのですが、徹頭徹尾トランプによるダイイングメッセージに拘り、推理内容のほとんどがそれだけに終始してしまうのも何か消化不良です。
ちなみに、NYではないためか、いつもの覇気が感じられないクイーン警視の弱気な態度が逆に新鮮でしたけど・・・

No.5 5点 測量ボ-イ 2009/06/03 19:58
読んだのは2年ほど前ですが、年とともに(?)翻訳ものを
読む頻度が減ってきて、この作品も正直キツかったです。
犯人を特定する論理にも、他の作品ほどのキレがないような
感じがしました。

No.4 7点 nukkam 2009/05/08 11:53
(ネタバレなしです) 1933年発表の国名シリーズ第7作は国名シリーズの中でも屈指の異色作です。まず「読者への挑戦状」がないこと(とはいえ謎解き伏線はちゃんと張っています)。そして閉ざされた山荘を舞台にして登場人物を限定していること。無駄に登場人物が多くてごちゃごちゃしている過去の作品に比べてかなり読みやすい作品です。秘密主義者と言ってもいいエラリーが早い段階から推理を披露しているのも珍しいです。山火事と謎解きとのサスペンスの相乗効果が秀逸です。

No.3 7点 2009/02/25 21:35
前作が、少なくとも共犯者になり得る人間が2万人もいるというシチュエーションだったのに対して、今回は容疑者の数が最初からきわめて限定されています。迫りくる山火事や二転三転する事件の流れなど、サスペンスに重点を置いた、国名シリーズ中の異色作ぶりは、かなり気に入っています。シャム双子に対する作者の視線が横溝正史などと全く違うのにも、好感が持てます。
次作『チャイナ橙』では、前回は読者への挑戦を入れ忘れていた等ととぼけていますが、そうではないでしょう。真犯人を指摘する論理は、クイーンには珍しく弱いものです。もちろん、その答ですべてのつじつまが合ってくることは確かなのですが、いつもと違い、他の可能性を否定しきっていないのです。
ただし、ダイイング・メッセージと、それから導き出される推理については、初めて中心に据えた長編だけに、凝りまくっていながら最終的に不自然でない形にまとめていて、そこはさすがだと思います。

No.2 3点 響の字 2009/02/06 21:12
パニック物を採用したクローズドサークル。オカルト的な描写を盛り込もうとして失敗した感があって、ミステリとしては・・・
よく言えば凡庸。
辛く言えば失敗。
クイーンはもっと王道で勝負するべき。

余談だが”綾辻行人の『暗黒館』を読んだ事が無いんだけど読んでみようかしら”と思っている人はその前に是非一度。ささいな処で笑えます。

No.1 4点 Tetchy 2009/01/25 19:18
カナダからの休暇旅行の帰りに山火事に出くわし、アロー・マウンテン山頂に聳え立つ館へ避難を余儀なくされるクイーン親子。
そこで殺人事件が起き、警察が来られない事で捜査を一任されるというクローズト・サークル物。
クイーンの国名シリーズでも異彩を放つ本書は、なんと定番の“読者への挑戦状”が挿入されていない。
それでも私は推理に挑戦したが、確かにこれは挑戦状を挟めないなぁ。

クイーン親子が館に辿り着く前半は、怪しげな館の住人たち、道中ですれ違った車の存在を誰も知らないこと、クイーン警視が見た蟹の化け物、などなどクイーンらしからぬ怪奇趣味が横溢してあり、新機軸かと思われたが、それらの謎はいとも簡単に明かされ、その後はオーソドックスなミステリに終始している。
もっと魔物の仕業としか思えない殺され方とか、曰くありげな館に纏わる因習など、カーなら絶対に盛り込むであろうオカルト趣味が持続すればよかったのだが、あまりに平凡すぎるし、エラリーは何度も推理を間違うし、最後の決定打は理論的にも押しが弱いしと、物語が進むに連れてスケールが尻すぼみしていった作品だ。