[ 本格 ]
死者はよみがえる
ギデオン・フェル博士シリーズ
ジョン・ディクスン・カー 初出版: 1955年06月 平均:6.36点 採点者数:11人

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採点傾向
No.11 6点 弾十六 2018/11/04 09:36
JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士第8作。1938年出版。創元文庫(1972)で読了。 HPBちょっと参照。
美食に飽きた金持ちが何か変わったものない?と注文して偏屈なシェフ出が出してくるようゲテモノ料理、それがJDCの諸作品なんだと思います。
結末までは本当に素晴らしいのですが、最後は唖然とさせられました。フェル博士のみっともない言い訳(p344)が作者の後ろめたさを物語っています。
主人公はJDCの分身(南アフリカ=北アメリカ)で、人生の苦労なんて無意味と主張したり、「彼は前から人間を観察していないといわれてきた男だった」とか作家にあるまじき人物像を暴露されています。名言が一つ: beware of people who make you laugh, because they’re usually up to no good.(p140) 橋本訳ではハドリー(ぼく)とフェル(きみ)の関係が近すぎる感じですが、二人の関係性を思えば、これくらいが本当は妥当なのかも。(最初、HPBで読み始めたのですが、何か読みづらくて、創元文庫に切り替え。延原信仰がちょっと揺らぎました。)
フェル博士のお気に入り事件は「うつろな男」「ドリスコル殺人」「ヴィクトリア女王号」と自白。
ところでH.M.第3作「赤後家」(1935)に出てくる「ロイヤル スカーレット事件」は本作と関係あり?「ピカデリイのロイヤル スカーレット ホテルで起こった、アメリカの富豪リチャード モーリス ブランドン殺害事件…〇〇(伏字)というトリック…公刊予定…」H.M.が手こずったと明言されています。(ゆるく解釈すれば、〇〇は本作と合致します)
さて恒例の歌とトリヴィアのコーナーです。
p10 パターソン夫人「いったいなんの役に立つのよ?」(Mrs. Patterson: ‘What’s the use? It’s all a pack of lies.’): 何かの引用?それとも架空のパターソン夫人?
p121 「進め! 牧童」という新しい歌を披露(introduced the novel note of ‘Ride ‘em, cowboy!’): 同名の西部劇映画(1936)あり。
p122 夢中でバラッドを歌っている…(singing a ballad whose drift I need not repeat.): 口をはばかる内容らしいのですが題名が書かれていません。
p262 ジェニーはぼくにキスをした(Jenny kissed me when we met): a poem by the English essayist Leigh Hunt (1838) JDC作かと思ったら丸ごと実在の詩の引用でした。
銃器関係ではp154、12口径の散弾銃(a twelve-bore shotgun): 口径の前の数字は直径の意味となってしまうので12番・12ゲージと訳すのが正解。boreは英国表現で米国のgauge。(延原訳では12番の猟銃)

No.10 7点 青い車 2016/10/09 01:36
 何と言っても「意外な犯人・意外な真相」に尽きます。そのために無理が生じているのも確かで、いくらなんでもあの状況下で犯行に及べた、というのはアンフェアと批判されても仕方ないようにも思えます。
 しかし、それはなりふり構わず読者を驚かそう、楽しまそう、というカーの魅力とも取れるのもまた確かです。たとえば、代表作の『三つの棺』のトリックを成立させた超絶のご都合主義と通じるものがあります。ひとつの大きな発想からいくつもの謎が解けていく快感はまさに推理小説の醍醐味そのものであり、面白さの追求の結果生まれた歪さ、という点で最高にカーらしい作品です。

No.9 6点 りゅうぐうのつかい 2016/06/27 17:20
掟破りの真相、この作品を一言でいえば、そうなるのだろう。
無銭旅行後の無銭飲食、その後の死体発見と逃亡、という冒頭のエピソードから読者を作品世界へと引き込み、次々と不可解な謎が提示され、事件に関する捜査と議論が繰り返され、事件を巡る人間関係が明るみになっていく構成は、満点と言えよう。
しかしながら、「え?そんなことが可能なの?」と思わざるをえない真相は、事前の説明が不足で、故意の隠ぺいとしか思えず、本格的視点から見ると零点だろう。
ホテルの事件での犯人の侵入経路に関しても、図は示されているものの、意図的に議論が伏せられている。
また、途中で示された「12個の不可解な謎」の内で、鍵が鍵穴に差し込んであった謎について、十分な説明がなされていない点も不満。
作中で、ニセの手掛かりをばら撒いている可能性があることや、犯人が必ずしも合理的な思考をするとは限らないこと、こういったことを登場人物に語らせている点に興味を引いた。
タイトルの意味、死者とは誰なのか、真相を知るとわかる仕組みになっているのが面白い。

No.8 8点 斎藤警部 2015/10/23 12:49
これは相当に好きだ。出だしも中盤も驚きの結末も文句なし。 あまりに意外な犯人は、、本気(マジ)で分からなかったから、真実(マジ)驚いたな!! でも結末だけの作品じゃないからね、最初にも書いた通りのっけから乗せられてずーっと面白いお話なの。それでいて最後にアレでしょ、こりゃひっくり返りますよ。。 「火刑法廷」なんかよりずーーっといいね。

No.7 8点 ボナンザ 2015/02/03 23:13
横溝正史がカーの最高傑作に推したと言うのもわかる気がする反則技の問題作。
当然賛否両論でしょうが個人的には好き。

No.6 9点 nukkam 2010/12/21 12:42
(ネタバレなしです) 1938年発表のフェル博士シリーズ第8作の本書は典型的な「巻き込まれ型」サスペンス小説のような出だしで始まりますが、死体を発見する羽目になったケントが警察に追い詰められることもなくあっさりフェル博士のもとに辿り着いているのはちょっと物足りなかった(笑)。怪奇趣味もなく不可能犯罪でもなくユーモアやロマンスも控え目で終盤まではとても地味な展開ですが、結末で待ちかまえていたのは驚愕の大仕掛けでした。この仕掛けは反則だという感想も少なくないし、その気持ちもよくわかります。ただ反則であってもこれほどの劇的効果をあげていることはやはり評価に値すると思います。そして最後の最後に明かされる、皮肉に満ち溢れた人間関係が何ともいえない後味を残します。

No.5 5点 kanamori 2010/07/01 23:09
フェル博士ものの第8作。
どんな手を使ってでも読者を欺いてやろうというカーの稚気が目いっぱい出ていて、怪奇趣向のないフーダニットに特化した作品です。ちょっと評価に迷うのですが、まあこんな点数にしておきます。

No.4 7点 文生 2010/01/19 14:20
本格ミステリーとしてはアンフェアもいいところなんですけどこの堂々としたアンフェアっぷりが逆に面白かったですね。
まあ、それもカーに愛着があればこそで、もしこれがこの作品ひとつしか書いていない作家のものなら壁に本を投げつけていたかもしれませんけど。

No.3 6点 ミステリー三昧 2009/12/17 19:54
※ネタばれあり<創元推理文庫>フェル博士シリーズの8作目(長編)です。
この作品は怪奇趣味・不可能興味を一切排除した分、フーダニットに特化した作品となっています。カーの作風を考えると異色作ともいえそうです。
前の方も書かれている通り、いくつかの真相に対して良い意味でも悪い意味でも「ええっ!?」となったことは認めます。でも、私の中ではバカミスの域には届いていない中途半端な作品に思え高評価ができない。(まだバカミスに対する見極めができていないかもしれませんが・・・)
許容範囲を超えたずっとずっと遥か彼方に(バカミスと称された珍品だけが集える)特別な聖域が存在するわけですが、そこを本職とするミステリ作家はもっとえげつないことをやってくれる気がします。
また、作中には「12個の不可解な謎」が提示されるわけですが、それらに対して要領の得ない解答があったことも評価を下げた原因です。







(ここからネタばれ感想)
ホテルでの殺人事件が「外部からの犯行だった」という真相には驚きました。しかも「4章の見取り図」をヒントにフェアな論理展開がなされていた。そもそも外部からの犯行が事前に否定されていたので、疑いもしなかったです。この抜け道にはやられました。
ただフーダニットに対する意外性の演出が根本にあるため、かなり無理が生じてしまっている。「留置場の秘密の抜け道」は伏線を張っているとはいえ、許せません。
「左腕に麻痺がある」ため凶器としてタオルを使ったこと、トランクを利用したことには納得できましたが、ロドニー殺害の方法はイメージに苦労した。今でも、理解できていない。
犯人の行動が気まぐれ過ぎる。札に「女の死体」と書き残したことも「ドアノブに鍵を差し込んだまま」にしたこともゲイ邸での「狂言」も特に必然性が感じられない。
「ホテルの制服」と「警察の服装」が似ていた点も指摘されていましたが、納得できなかった。
その他いろいろありますが、長くなりそうなのでやめます。

No.2 1点 Tetchy 2009/01/06 23:14
この作品を手に取る人はミステリに対してかなりの寛容さを持ち、なおかつカーの稚気が解るほどに精読しておかなければならない。
私はこの作品はカーを読むに当たり、かなり初期の段階だったので、「何じゃあ、こりゃ~!!!」と憤ったクチです。

いやあ、ほとんど反則の連続なんですよ、コレ。
「えっ?」、「ええっ!?」、「えええっ!!?」となること、請け合いです。

No.1 7点 2008/11/30 19:35
カーのバカミスといえば『魔女が笑う夜』が有名ですが、個人的にはなんといってもこの作品。
真相のとんでもない掟破りには、もう笑って拍手するしかありません。出方のいんちきは当然ですが、入り方もたまたま痕跡を残さずに済んだだけですし、フェル博士の推理は循環論法に陥ってしまってるし、もうムチャクチャです。
乱歩先生が『皇帝のかぎ煙草入れ』や『帽子収集狂事件』と並べてベストの1つに挙げていたというのが信じられない珍品です。
なお、この創元版タイトルはゾンビをも連想させますが、原題の "To Wake the Dead" は「死人を目覚めさせるほど大きな音」のような場合に使う表現であり、ホラー・テイストはありません。