[ 本格/新本格 ]
夜歩く
金田一耕助シリーズ
横溝正史 初出版: 1973年03月 平均:6.77点 採点者数:22人

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採点傾向
No.22 6点 HORNET 2017/08/18 20:57
 話題になっているように、海外某作品で物議を醸した「あの手法」を横溝正史が使うとは… 良くも悪くも、イメージではなかったので驚いた。

 ただ、先行の海外某作品は、はっきりと一か所、そのために記述をごまかしている部分があるのに対して、この作品ではそれはない(よね?)。そもそも創作文章の体なので、そういう部分を描いていないというだけのことだが。よって、後発であったこともあって、最後の種明かしでそれほどアンフェアという印象はないのかもしれない。しかし考えようによっては、海外某作品はその「ごまかし」の部分がある意味読者にとってのフェアな(?)手がかりになっているともいえるのだが(とはいえ何といっても最初の試みなので、そんな可能性は一顧だにせず読んでいる読者にとってはやはりアンフェアに感じたこともあるだろう)。

 刀の密閉状況のトリック、首の部分の発見のトリックなどは、その場のちょっとしたことの流れでいくらでも破たんする、綱渡りのような(運に頼る部分の大きい)もののように感じるが、猟奇的な事件、複雑に絡み合う親族関係など、横溝テイストがこれでもかと凝縮されており、全体的には満足できた。

 

No.21 6点 パメル 2017/07/24 13:24
旧家で発生する連続首無し殺人事件に複雑な血縁関係と男女関係が入り乱れ真相をなかなか掴ませてもらえない
その登場人物も夢遊病者・酒乱で刀を振り回す老人・淫蕩な未亡人・佝僂(「くる」せむしの意)など個性派揃いで申し分ない
またケレン味に満ちた道具立ても揃っておりワクワクさせてくれる要素が満載
そして誰もが開けられるはずのない金庫に保管していた刀が凶器として使われていたという不可解さに惹きつけられる
ただ死亡推定時刻の解釈には不満が残るし佝僂に関しては身体的差別用語を文字面だけ残し読み方も意味も記述していないのは不親切に感じる

No.20 8点 名探偵ジャパン 2017/01/23 12:25
「らしからぬ」と言っては失礼ですが、意外なくらい「技巧」に走った一作と映りました。現代の作家が書いてもおかしくありません。
「あのトリック」を使う理由を、作中できちんと示しているというのも好感が持てます(ある一定のところまで、読者が読んでいたものが「事実をもとにした小説(作中作)」であるということを明かさないのは、フェアかそうでないか、意見が分かれるところでしょうけれど)。
「絶対に取り出せなかったはずの凶器」「一回りした首切りの論理」と、メイントリックの他にも見所は満載。
犯人が金田一のことを「ナメきっている」のも、読み終えてから思い返すと痛快です。

No.19 8点 2016/08/30 09:53
ミステリー性も十分、物語性も十分。
制作時期は1948,9年。名作群『本陣』『八つ墓村』『獄門島』『犬神家』『悪魔』などとおおむね同じ、脂ののったころ(1945年~1960年)に書かれています。
良作かと思いますが、やや印象が薄いのは、金田一の登場が遅く、事件周辺の(一人称の私を含む)関係者たちが主人公に見えてしまうからなのかもしれません。

事件が起こるまで多くのページが割かれていますが、その部分のサスペンスは申し分なしです。その前半で関係者の人物像を、種々の事象を交えながら描写し進めていく流れは、そこだけ読んでいても楽しめます。
そして、後半(特に金田一登場後)、登場人物だけを見れば前後で何も変わりませんが、舞台をがらりと変えたのは、読者を飽きさせない絶妙な(ある意味安直な)ワザだと思います。これぞ、ストーリーテラー・横溝という感じがします。

最大に評価できるのは、アリバイトリックやあの真相を含む本格色全般でしょう。あれだけあれば上記作品群に決して負けていません。ただ、いろんな意味で問題や疑問点のある作品ではありますが。

No.18 7点 蟷螂の斧 2016/05/31 06:08
題名「夜歩く」はディクスン・カー氏の作品名(1930)と同じだったので、氏を意識した内容か?と思いきや全く関係ありませんでした。それよりクリスティー氏を意識した作品だったのでビックリ!(笑)。首なしの真相とアリバイトリックは秀逸でした。

No.17 6点 風桜青紫 2016/02/11 16:17
トリックは古典的だけども、それなりに楽しめた。古い作品には古い作品なりの奥ゆかしさがあるということでww。元ネタ(?)と同じく首のない死体ものの作品なんだが、せむし男だの夢遊病だのなんだか乱歩っぽい道具が散りばめられていて、空気もなんだかエログロっぽい。しかし最後のどんでん返しには意表をつかれた。横溝もこんなネタを使うんかい。彬光のあれと同じで、「話題になってるからとりあえず使ってみた」という感じがあるけども、まあ、許容範囲。「八千代は処女だったぜ!」とかいちいち台詞が笑えるし。一風変わった横溝を楽しめたということで6点。

No.16 6点 いいちこ 2015/03/27 20:09
横溝としては本格色の強い作品。
夢遊病を犯行の隠蔽に活かしつつ、凶器である日本刀の保管を巡る状況証拠から真相解明に至る手口は鮮やか。
メイントリックについては、登場人物が少なく、かつ犯人と目される人物が相当に限定的であることから、想定した効果を挙げているとは言い難い。
プロットの相違点も含めて、同じ趣向の高木彬光の作品よりは高く評価。

No.15 6点 ボナンザ 2014/04/08 15:43
本格ものとしては中々完成度が高い。ストーリーがよければ他の代表作に匹敵しただろう。

No.14 8点 りゅう 2011/10/11 19:19
 再読です。ストーリーの一部を覚えていたくらいで、犯人は覚えていませんでした。横溝作品にしては登場人物が少なく、人間関係もシンプル。
 海外の某有名作品と同じトリックが使われていますが、一つの趣向であって、この作品の構成要素の一部に過ぎないと思います。犯人の犯行計画が実に巧妙で、予期せぬ人物からのアシストもあって、謎解きを困難なものにしています。夢遊病者の存在がうまく犯行の欺瞞に結びついていますし、また、誰も触れることができなかったはずの日本刀で殺人が行われたことなど謎の提示も魅力的です。犯人が予測していなかったある出来事(これは逆アシストともいえます)によって矛盾が生じているのですが、それを指摘する金田一耕助の推理も鮮やかでした。

(完全にネタバレをしています。要注意!)
 最初の蜂屋殺しの手法に若干疑問があります。犯行に使った日本刀は、直記が父親から奪って自室のベッドの下に隠していたものですが、犯人はどうやってその場所を知ったのでしょうか。また、犯人に首切りを行うような時間があったかどうかが文章を読むだけではわかりませんし(この真相であれば致し方ないとも言えますが)、犯行現場のはなれまで日本刀を運ぶのは目撃される危険性が高いと思います。
 蜂屋と守衛、八千代とお藤、直記と屋代、肉体的条件が似ている人物がこれほど揃うというのもちょっと出来過ぎの感じがします。

No.13 8点 大泉耕作 2011/07/22 14:08
(察しの良い方ならネタバレの危険性もあります)
 横溝正史の作品で様々な人の評価を見たのですが「人間関係がドロドロしている」ということを予め知っていて読み進めていきましたが、ここまでドロドロしていると横溝慣れした僕でもなんだかたまらく憎悪を催します。
 物語中半まではいつもの横溝先生だったのだけれど最後のネタバレで横溝の作風が一風変わったンじゃないか・・・? と、物語のあちこちに証拠を提示してきた横溝の今までの本格探偵を踏まえたならある意味、この作品は横溝作品でも珍しくメタミステリ的なトリックを応用していたところが、そう錯覚させたのかも知れません。
 「物語自体」に奇怪なトリックは登場しますが、大した驚愕は受けません。しかし、最後のトリックは作品をひっくり返してしまうのです。そこでこの物語の本当の驚愕を読者は知ります。ただ、そのトリックのために読者は犯人を「読みちがえる」と同時に、その「読みちがい」が文章を僕らに提示させたためのものということになっているのですが、それがアンフェアだという方もいます。
 ぼくの場合は事前用意のこの作品のことを、評価を見て調べてみると「これはアンフェアじゃないか?」と多々耳にするのですが、たしかにフェアはフェアなのですが、そんなのアリか! って、横溝ファンの僕でも正直、作品を読み終わったあとにそう思わずにはいられないトリックです。ただ、そのトリックに向けて物語の終盤にしっかり伏線も張ってあり一応フェアなのです。だから、良い目線から見れば前例のない大規模なトリック。しかし、疑問を感じずにはいられない方にとってはアンフェアとなりうる、微妙なところにあります。
 この型破りでスッキリしないトリックは文中ではなく物語自体にも伏線が張ってあるので未読の方はよく読んでいただきたい。一度読んだ方ならご存知ですが、登場人物から物語も最後の唐突な展開も狂気じみています。そして、『文章』も引っ張られるように狂いだします。そのためだか、何やら金田一耕助という男もいつもと違う感じがしてならないのです。
 余談ですが、この作品を僕がまだ読んでいない時から調べているうちに金田一耕助があまり登場しない一人称型の小説だということがわかりました。「ええ、出ないの・・・?」僕もあの飄々とした金田一さんが出ないから、横溝正史の事件は全体的に暗いから金田一さんみたいな人がでないとなんだか不安でした。「八つ墓村」や「三つ首塔」も一人称形式で事件は進みましたが、金田一さんが時々現れるので何の不快もなく物語は決着しました。しかし、この物語は違うのでは・・・? と心配する方がいらっしゃいましたら、「大丈夫です」と一言。事件の中心となる探偵作家の男と古神家の男のキャラクターが色を出しているので、寂しい思いはしません。ただ・・・。読み返すときにはその安心も束の間かもしれません。
横溝作品の中でもあまりにトリッキーな作品です。
しかし、首斬るなら古谷のドラマのように腕も斬ったほうがと思うこともありますが、傑作です。

No.12 6点 E-BANKER 2011/01/30 22:18
金田一耕助シリーズ。
他の有名作品に埋もれがちですが、横溝作品のガジェットをこれでもかと詰め込んだ作品の一つ。
~古神家の令嬢八千代に舞いこんだ「我、近く汝のもとに赴きて結婚せん」という奇妙な手紙と男の写真は陰惨な殺人事件の発端だった。卓抜なトリックで推理小説の限界に挑んだ作品~

まず、例の「アクロイド殺し」との関連性云々についてですが、個人的にはあまり気になりませんでした。
確かに、唐突にネタバレが行われるので、一瞬「エッ?」という感覚には陥りますが、読み慣れたファンが素直に読んでいれば、ミステリー的に真犯人足り得る人物は相当限定されるはずですし、まぁ想定の範囲内と言えなくもありません。
次に「首切り」についてですが、当然ながら「被害者は本当は誰なのか?」という魅力的な謎を構成させるための条件になっているわけです。
ただ、本作については、ここがかなりシンプルなトリックのため、あまり効果的ではなかったかなと・・・
加えて気になったのは、「指紋」が全く無視されていること。この時代でも指紋捜査は存在してますよね?(もちろん、現在ならDNA鑑定等もあり、孤島や嵐の山荘でない限り首切りトリック自体不可能ではありますが)
トータルでみて、非常によく練られた作品という評価でいいとは思うのですが、個人的な期待感にはやや達しなかったということで、こんな評点になっちゃいました。
(変人たちの間で渦巻く愛憎劇というのが、まさに「横溝!」という感じですよねぇ)

No.11 7点 メルカトル 2010/06/25 23:39
もしあのトリックが前例のないものだったとしたら、間違いなく満点をあげるのだが、残念だなあ。
しかし本作は、首なし死体=入れ替えトリックのお手本としての評価は高いと思う。
また、金庫に保管された日本刀の謎は見事であり、そこから犯人を推理する事もできる、とてもよく出来たアリバイトリックである。

No.10 8点 だい様 2009/10/01 12:34
金田一耕助シリーズ

予備知識なしで読んだ為素直に楽しめました。
また横溝正史氏がこういう作品を書いていた事にも驚きを感じました。

No.9 5点 江守森江 2009/09/21 00:47
※大多数の方々には完全ネタバレです。
諸処でクリスティー「アクロイド」の技法を用いた作品だと語られているので伏せません。
この作品が書かれた時には翻訳され日本人にも「アクロイド」が読めた事。
更に前に同じ日本文学の巨匠・谷崎潤一郎が使用していた事を踏まえると、当時の日本探偵小説界はアイデアの転用(パクリ)に非常に寛容で、大横溝をして何度も“この技法”を使用した事が残念でならない。
その為に基本採点が低くなるのは仕方がない。
根深い憎悪を描いた人間描写、首切り&すり替えトリック、二番煎じである事を感じさせない書き出し等々を評価し同系統な高木「能面〜」より1点高く採点した。
※この技法を使用した後続作品の評価については「アクロイド」の書評で触れたので御参照下さい。

No.8 9点 ミステリー三昧 2009/09/04 02:02
<角川文庫改版>金田一耕助シリーズの代表作です。
今にもハチ切れんばかりの憎悪・嫉妬が渦巻くドス黒い人間関係の大爆発・大崩壊が一番の読みどころです。特にラストの大どんでん返しが圧巻。この時代からこの手法があったことに嬉しさを感じます。まさかの大発掘でした。真相は強引ですが、偶然を頼らぬ完全犯罪系として高く評価したい。
この作品は、首切りトリックと「夜歩く」病(夢遊病)が重要なキーとなっていて、特に前者は申し分のない出来栄えでした。「被害者は誰か?」で二転三転するプロットの質の高さと首切りの必然性に十分納得できた点で不満が見つかりません。後者もミスディレクションの骨格として十分な役割を果たしていました。特に第一の殺人では、ある点に関して完全にミスリードされたので、犯人を称賛する他ない。
ただフェアな作品とは言い切れないので、あまり推理せず、ピンと張りつめた息苦しい人間関係の崩壊と細部まで血が通った完全犯罪の構図に期待して読むと評価を下げずに済む。
(2009/10/20追記)
私的横溝No.1作品です。この作品で語られる真相が最も印象的でした。トリッキーな犯罪・意外な犯人・終盤のドンデン返し・探偵の秀才ぶり・・・など本格的要素が他の横溝作品に比べて高い。小説世界でしか楽しめない作品です。
ただし、読者によって新鮮度が違ってくる。真相に既出感を感じる可能性があり、平均点が低いのも納得できる。早めに読むべき作品です。

No.7 6点 nukkam 2009/06/12 09:35
(ネタバレなしです) 1948年発表の金田一耕助シリーズ第3作である本書の前には「本陣殺人事件」(1946年)や「獄門島」(1947年)、後には「八つ墓村」(1949年)や「犬神家の一族」(1950年)といった代表作とされる作品が次々に発表されており、それらと比べて知名度で劣るのは地方色や時代色といった背景描写が弱いからでしょうか。逆に考えれば今読んでもさほど古さを感じさせないという長所でもあるのですけど。語り手による1人称形式を効果的に使って重く暗くそしてサスペンス濃厚な雰囲気づくりに成功している点はやはり全盛期に書かれた作品だということを納得させます。

No.6 7点 E 2009/06/07 00:29
おどろおどろしい雰囲気は横溝氏特有(だと思ってます;)。
「まさか・・・なぁ・・・」と思っていた犯人が的中したけれど、ぐんぐん読ませてくれる。犯人予想がついても“読ませる”文才!!事件の背景には吃驚。

No.5 7点 2009/05/18 22:15
本作と、他の人も言及している海外某作品とはむしろ違いを強調したいところです(むろんヴァリエーションではあるのですが)。本作の場合には、そのネタを使った理由を工夫しているわけで、そのため某海外作品はとりあえずフェアと言えるのに対して、本作はどうしてもアンフェアな部分が発生せざるを得なくなっているというのが、個人的意見です。実は、横溝正史は以前の長編でもこの手をちょっと試みているので、今回はいわばその拡大版と言ったらいいでしょうか。それに首なし死体パターンをひねって組み合わせていて、なかなか読みどころの多い作品です。
後の『悪魔の手毬唄』とは多少食い違いがある鬼首村が後半の舞台です。

No.4 5点 spam-musubi 2009/03/09 11:39
読み始めの段階で、「あれ、一人称なんだ。八つ墓村と同じだなー。」とは思ったんですけどね。
地の文まで…とは思いませんでした。

個人的にはやっぱり「ずるい」感が否めません。

No.3 8点 シュウ 2008/09/24 16:13
この作品で使われているトリックは、海外の某有名探偵小説に使われた叙述トリックのさきがけともいえる凄いトリックと同様なもので、
あの作品も特にアンフェアだとは思わないのでこっちも同じくアンフェアではないと思いますw
この作品は前半は館ものとして楽しめ、後半は岡山に舞台を移しての怪奇ものとして楽しめるという1作で2度おいしい作品です。ただ個人的に
岡山ものの方が東京ものより好きなのですが、この作品に出てくる異常な人々が前半の方が異常っぷりが弾けてるのに対して岡山に移ってからは
なんかおとなしくなってしまうのでちょっともったいないなあという感じです。

No.2 5点 マニア 2008/08/11 22:21
非常に採点しにくい作品。

最後に、それまでの小説世界をぶち壊す大技!横溝作品でこれをやられるとは思わなかったが、それについては自分にとって明らかにアンフェアでミステリとしては評価できない。しかし、極端な怪奇趣味と昼ドラを遙かに凌駕するドロドロとした人間関係、鬼気迫るド迫力の解決編は読み物としては間違いなく楽しめる。

今回の金田一は珍しく天才(笑)

No.1 7点 おしょわ 2008/05/05 22:31
いろんな意味で現代だと受け入れられない作品でしょう。
当時は結構衝撃的だったんではないかと思うと、それはそれで楽しめます。