[ サスペンス ]
大いなる幻影
戸川昌子 初出版: 1962年01月 平均:6.78点 採点者数:9人

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採点傾向
No.9 6点 蟷螂の斧 2017/09/11 10:10
東西ミステリーベスト100(1986年版)の77位。オムニバスに近い感じで、アパートの住人(老嬢となっているが、現在の感覚ではまだまだ若い女性)の秘密が語られる。その部分は、どちらかというとサスペンスより一般小説に近い感じがします。ミステリー的には、誘拐の真相一本の方がよかったのかな?という印象です。宗教家とそれに関わる○○のオチがあるのですが、かえってピントがボケてしまったような・・・。誘拐>○○、誘拐=○○、誘拐<○○、作者はどれなのかなと悩んでしまいました(苦笑)。

No.8 7点 パメル 2016/11/13 01:15
老朽化した女性専用のアパートが舞台
登場人物の老女たちはそれぞれが孤独で秘密を抱えながらも他人の秘密に興味を
持ちながら生活をしている
それぞれの人生の断面を残酷にえぐり陰鬱な雰囲気に満ちている物語は二転三し惹きつけられる
冒頭で提示された謎が最後に収束する展開はお見事
タイトルも秀逸

No.7 6点 あびびび 2016/06/29 12:05
昔は時代の先端を行く女性専用のアパートも、今はオールドミスの館になり、奇奇怪怪な行動をする住人が増えた。その怪しげな雰囲気の中で繰り広げられる心理的な戦い。これが男性専用のアパートなら、話は続かなかっただろう。

最後に犯人の独白があるが、ひとり二役など、スーパーウーマンすぎるところは首をかしげてしまう?

No.6 8点 クリスティ再読 2016/05/26 21:39
戸川昌子氏が亡くなられましたね...初期の乱歩賞受賞作の中では断トツの名作だと思います。
でこの人もやっぱり組合関係者だよね。シャンソンっていうとそういうわけなのさ。乱歩賞を競った中井英夫も組合員だからちょっと「虚無への供物」は賞的にはめぐり合わせが悪かったわけだ。
今回改めて読み直して「女性的な悲惨さ」みたいなものがよく描けてて怖い。評者もそろそろ年だから、洒落になんないなぁ...本当に「大いなる幻影に捉われた不幸な人々」のオンパレードである。女性らしい矜持があるからこそ、悲惨に転がり落ちていくのが本当にイタい。で女性らしさ、というと妄念に悲惨な生活が彩られているあたりがよく描けているため、シュールな妖気さえ感じるよ(森茉莉とか実際そんな感じだったらしいし...というか戸川昌子自身だってゴミ屋敷って報道があったようだね)。ワカメさんと指紋の話が評者昔結構トラウマだったな。今風に言えば「イヤミスの元祖」の作品じゃないかな。
建物移動のイベントに向けての焦点の絞り方とか、多視点での切り替えとか、構成にも美点がある。この構成の力で情念を扱いながらもそれに堕さずにクールで非情な感覚を保ち続けているのが非常にイイ。時代水準を大きく抜いていて、今でも古びていない独自な作品。すばらしい。

No.5 6点 ボナンザ 2016/01/16 12:12
乱歩賞受賞作の中では本格よりの佳作。
結末まで一気に持って行く独特の読み味が見事。

No.4 8点 斎藤警部 2015/05/25 16:42
「老嬢館の殺人」。。なんて副題は付いちゃいませんが『館』を舞台とした雰囲気満点の力作です。 旧びた高級アパートメント(女子専用)で繰り広げられる、薄暗~~い、陰鬱としたサスペンスが実に魅力的。。 ですが結末はやや「チャンチャン」の感が。でもやっぱり名作と思う。 小説としては意外と浅い気がするも、ミステリとしてとても愉しく読めました。 表題の意味は、読後すぐに分かります。

No.3 6点 kanamori 2010/08/01 20:20
老朽化し取壊し寸前のアパートを舞台にしたサスペンス。
いわゆる集合住宅もののミステリで、アパートの住民たち(本書では老譲たち)の隠された秘密が暴かれていく過程が読みどころですが、女性作家らしく老譲たちの異常な心理・生態描写が巧く、フランス・ミステリのような味わいがあった。

No.2 7点 測量ボ-イ 2010/06/04 20:21
50年近く前の乱歩賞受賞作品。女性専用アパ-ト内で起こる
事件を扱うので、登場人物の殆どが女性です。そこで自身が
女性でもある作者は、登場人物の心理描写を巧みに描いてい
るのがこの作品の特色です。
トリックはありきたりですが、意外な真相の演出には一役か
っています。
不満点といえば、読者が真相を推理で100点満点の答えを出
すにはややデ-タ不足の感があることくらいですが、まずは
水準以上の力作だと思います。

No.1 7点 こう 2008/09/14 02:27
 戸川昌子処女長編かつ乱歩賞受賞作です。老女ばかりが住む女性アパートが作品の舞台となっている作品です。冒頭の部分で男女の会話より赤ちゃんの死骸を地下室で埋め、この作業を誰かが目撃しているところが描かれ、また視点が変わり米軍少佐と日本人妻の一人息子が誘拐された事件の記述がされその後マンションの住人の視点で日常で行われる様々な事件が描かれてゆきます。
 一見無関係な事柄が最後にマンション移転日に意味をもってつながってゆく作品で乱歩賞の作品中でも記述、構成についての完成度は非常に高いと思います。(ちなみに中井英夫の虚無への供物や天童真の陽気な容疑者たちが落選した年です。)但しその真相がある人物の独白で語られるのですがこの人物の行動はフェアではないもので絶対にうまくいかないと思います。また珍しく「操り」をしているわけですが狙いどおり動いてくれるかどうかが疑問です。またその人物の一連の行動の動機も今では古臭いかな、と思います。その後ラストで語られるエピローグでの一ひねりはありきたりですが上手いと思います。
 トリック(というかある人物の行動)の部分の説明には正直納得できない所はありますが作品自体の出来は良いと思います。