[ 本格 ]
毒蛇
ネロ・ウルフ
レックス・スタウト 初出版: 1958年01月 平均:5.50点 採点者数:2人

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採点傾向
No.2 7点 2018/07/17 15:46
 49種類の銘柄のビールを吟味している時、ネロ・ウルフはイタリア女マリアの訪問を受けた。失踪した金細工師の兄を探して欲しいというのだ。メイドのアンナが見たという新聞の切抜きの形から、ウルフは大学総長変死事件との関連を嗅ぎ付けるが…。

 ネロ・ウルフ初登場のスタウト処女作。1934年発表で、同年には「オリエント急行の殺人」「チャイナ・オレンジの秘密」「プレーグ・コートの殺人」が発表されています。
 ハメット「マルタの鷹」の発表がわずか4年前の事にすぎず、チャンドラーの本格的活動開始はさらにこの5年後です。新鮮な会話ときびきびした文章に加え、個性的な探偵を登場させたこの作品は当時から大きな反響を呼び、ウルフはアメリカのシャーロック・ホームズ、彼の登場する一連の事件群は古典として、現在に至るまで一般にも専門家の間にも高い評価を得続けました。
 同時代の他作家たちと比較すると、やはり会話が突出してますね。ただ「シーザーの埋葬」を除く初期5作を読みましたが、読み難さはこれが一番。スタウトの文学趣味がもろに出た感じですが、悪くありません。殺されたバーストウ教授の自宅を訪れるシーン。彼の家族、特に教授の妻との会話には緊張感があります。
 ミステリとしてはウルフの探偵テクニックや彼の肖像が読み所。読んだ限りではスタウトには凝ったプロットはあまりなく、真相の究明よりも証言・証拠の入手に重点が置かれます。よってウルフとワトスン役のアーチー・グッドウィンだけでは足りず、証拠固め役のソウル・パンサー以下3人も含めたウルフ・チームを形成しています。アメリカのホームズと言われる所以でしょう。第一次大戦後のアメリカにホームズ物を成立させるために、それが必要だったのです。
 本作でも根本の動機となる、ある人物が二十年間心に秘めてきた出来事をウルフがあっさりと訊き出すシーンがあります。会話の妙と言ってしまえばそれまでですが、凡百の探偵にあの真似はできません。かたくなに口を噤むアンナから証拠を得る方法はまあアレですね。あそこが山といえば山なんでしょうが。
 既読の初期5作中のお勧めは「ラバー・バンド」ですが、ちょっとシンプル過ぎるので一番はやっぱりこれかなあ。未読の「シーザーの埋葬」も、内外共に評判が良いんで楽しみです。

 追記:作品を読み返してみて、導入部の切り抜かれた新聞記事とか、ウルフの生活の詳細なディティールとか、タイトルのアレとか、予想以上にホームズ要素があるのに驚きました。作者はこのへんかなり意図的にやってるんでしょうね。

No.1 4点 mini 2008/10/18 12:45
ウルフもの第1作目
『このシリーズはどれを読んでも同等なレベルだから、どれが代表作でも同じ、だからその作家の1番の作品への投票は「毒蛇」でいい』みたいな意見を他のサイトで見たことがあるが、その意見には全く賛成出来ない
おそらくそいつはそもそもスタウト作品を1冊でも読んでいたのか疑問すら感じさせる
スタウトの代表作あるいは最高作が「毒蛇」って絶対有り得ない、「毒蛇」が知名度が一応有るのはウルフシリーズ第1作だからという理由しか思い付かないな
私は作品ごとに結構バラツキがあると思う
「毒蛇」は1作目なこともあってか、作者がミステリーを書くことにまだ慣れてなかったんじゃないだろうか、犯人をばらすタイミングが実に中途半端である
物語全体の2/3位で犯人を明かしているが、普通の本格のように終盤まで隠そうと思えば隠せたはずで、でなければ逆に半分位の時点でわざと明かしてしまい後半を犯人とウルフとの対決によるサスペンスに持ち込むという手もあったと思う
少なくともスタウト作品としては「料理長」や「シーザー」には明らかに劣る出来だ