* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”
今年は異色短編作家とB級スパイ小説作家の当たり年で、ダールとエリンという異色短編の2大巨頭が揃い踏みだった
第1弾はエリンから始まったが、年末を締めくくるのもエリンにしよう
”生誕100周年作家を漁る”、第1弾スタンリイ・エリンの4冊目
エリンは長編も結構数多く書いているが、やはりエリンと言えば短編でしょう
ところがね、エリンに関してはある不思議な読者層が存在するんですよ
エリンの長編での最高傑作の1つなのはMWA賞も取った「第八の地獄」だと思うけど、この作はハードボイルド色が強いのがおそらく理由なのだろうけど案外と読まれていない、ハードボイルドというだけで敬遠する読者って居るからね
そうなるとエリンの本領の短編分野となるわけで、まずは短編集『特別料理』から読むのが王道でしょう
ところがね、一部に短編も全く読まず、長編の中で唯一特定の1作しか読んでいないという読者層が存在するんですよ
私はその手の読者層が大嫌いなのだけれどね
でその特定の1作とは、それが「鏡よ、鏡」、つまりそういう読まれ方をする作なのですよ
エリンは「鏡よ、鏡」しか読んでないという読者は、十中八九エリンという作家自体に興味はないのだと思う
興味有るのだったら普通は『特別料理』にまず手を出すでしょ
じゃあ何故「鏡よ、鏡」にだけは手を出したのか?
多分だがその手の読者は、叙述トリックサスペンスものを漁っているんですよ、きっと、そして何かで「鏡よ、鏡」の噂を聞いて手を出したに違いないんだ
エリン作品で「鏡よ、鏡」だけしか読んでいないという読者の多くはこのパターンだと思っていいんじゃないかな
私がその手の読者層が大嫌いな理由は、つまりエリンという作家自体には全く興味が無く、ハードボイルドにも興味が無く、ただ叙述トリックものという観点だけの興味で探しているからである
たださ、じゃあ「鏡よ、鏡」がエリンの中で異色作かって言うと、結構エリンらしい作ではあるんだよね(笑)
エリンの短編分野での代表作の1つ、「パーティの夜」でもやってるからね、叙述
数多い異色短編作家の中でもエリンは技巧派だからねえ
でもエリンのよいこところは、技巧派でありながら話の展開に重厚感が有るところで、決して軽妙一辺倒にならないんだよね
今年の書評がエリンで始まりエリンで締めくくれたのは良かった、来年の”生誕100周年作家”はどんな顔触れになるのだろうか |