[ 本格/新本格 ]
致死量未満の殺人
三沢陽一 初出版: 2013年10月 平均:6.12点 採点者数:8人

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採点傾向
No.8 6点 名探偵ジャパン 2017/08/30 18:08
一件の毒殺事件だけでここまで書く。というよりも、事件に対してページ数が多すぎるように感じました(序章とか、あんなにいる? 本編に入っても、「俺が殺した。俺が殺した」と引っ張りまくって、回想で実際に事件が起きるのは、全ページの半分くらいに達してからです)。コンテストの応募規定枚数に載せるために水増ししたのでは? などと思ってしまいます。短編から中編のボリュームに収めたほうが、かっこよく決まったのではないでしょうか(当作が受賞したコンテストには応募できなくなってしまいますが)。
この「水増し」を行うためなのか、いやに詩的な言い回しがあちこちに出てきて、これにはちょっと苦笑しました。

ミステリとしては、練られたプロットが心地よく、犯人が最初から判明している倒叙もの、と思わせて隠された真相が、それをさらに飲み込む新たなる真相が、という多段階構造も楽しめました。

余談ですが、本作のトリックのひとつである「砂糖壺」のやつは、遙か昔に「マジカル頭脳パワー」というクイズ番組で見たことがあります(懐かしい)。

No.7 6点 BLOW 2016/08/06 19:30
文章や人物造形は拙いが、毒殺という一点に絞ってこれだけ書けた点は素晴らしいと思う。
ただ、ネットを漁っていて知ったのだけど、どうもこれって2003年の鮎川哲也賞最終候補作「玩弄迷宮」と同じ作品っぽい。島田荘司の選評がネットに残っていて、その内容がモロに本作と一緒だった。
とはいえ選評と照らし合わせてみると、かなり手を入れたようだし、まったく同じということはないだろう。それに、ある賞で落選した作品を別の賞に送る、というのは全然構わないと思う。それでデビューしてる人もいるんだし。ある年の鮎川賞一次選考通過作には白井智之の「人間農場より」というのがあって、これはもしや「人間の顔は食べづらい」では、と思ったりもしたわけだし。ある賞で見すごされた作品が別の賞で世に出るということは全然あってもいいとは思うのだが……ただ、この作品の場合、時間が空きすぎじゃないだろうか。
2003年の鮎川賞で落ちた作品が、2013年のアガサ賞を受ける……その間、10年。10年前に書いた作品が新人のデビュー作として扱われる、というのは、少々問題があるような気がしなくもない。はたして、その新人に先はあるのでしょうか。三沢陽一氏の今後の動向に注目していきたいと思います。

No.6 6点 nukkam 2015/12/31 05:48
(ネタバレなしです) 三沢陽一(1980年生まれ)が2013年に発表したデビュー作でアガサ・クリスティーのデビュー作の「スタイルズの怪事件」(1920年)をちょっと連想させる、犯人当てと毒殺方法の謎解きをメインとする本格派推理小説です。冒頭に自称犯人を登場させており、その自白にもそれなりの説得力があるのですがそこからのどんでん返しの連続が半端ではありません。やたら登場人物の多いミステリーが氾濫しているこの時代に少ない登場人物で深みのある謎解きに挑戦した姿勢に好感を持ちました。

No.5 5点 蟷螂の斧 2015/11/17 09:22
題名ってつくづく難しいものだと思いました。旧題は「コンダクターを撃て」ですが、これはある意味絶対ダメですね。「致死量未満」もいかがなものか(苦笑)。序章と題名で大筋が読めてしまいました。人間うんぬんは気にならなかったのですが、やはり毒殺トリックにリアリティ(完璧なものを求めるわけではありませんが)を感じられなかったことが惜しい点です。アイデアは買いますが・・・。

No.4 7点 E-BANKER 2015/11/01 16:49
2013年発表。作者の処女長編。
第三回アガサ・クリスティ賞受賞という評判作。

~雪に閉ざされた山荘で女子大生・弥生が毒殺された。容疑者は同泊のゼミ仲間四人。外界から切り離された密室状況で、犯人はどうやって彼女だけに毒を飲ませたのか? 容疑者の四人は推理合戦を始めるが・・・。そして事件未解決のまま時効が迫った十五年後、容疑者のひとりが唐突に告げた。「弥生を殺したのは俺だよ」・・・。推理とドンデン返しの果てに明かされる驚愕の真実とは? アガサ・クリスティ賞に輝く正統派本格ミステリー~

このプロットを思い付いたことをまずは評価したい。
「雪に閉ざされた山荘」や「互いに隠された悪意を抱いた仲間が集う」、「繰り返される推理合戦」などなど、これまで幾度もなく目にしてきた本格ミステリーのガジェットが盛り込まれた本作。
いったい、従来の作品とどこに“違い”を付けるのか?
これこそがミステリー作家の頭の悩ませ所になる。

そこで本作のプロットなのだが・・・
まさにタイトルどおり「致死量」がプロットの鍵となっている。
人間の体のことだし、ここまで計算どおりにいくのかや、薬学的な知識は合っているのかなどの疑問はあるものの、真相解明の場面では久々に「へぇー」と唸らされた。
その後も二転三転、或いは二重三重とでも言うべきドンデン返しが待ち受けているのだ。
ここまで畳み掛けれれれば「おっと・・・」と仰け反らざるを得ない。
巻末解説で有栖川氏も触れているけど、クローズドサークルで制約の多い設定のなか、ここまでの技巧を発揮できれば十二分に及第点、それ以上の評価を与えていいだろう。

まぁ敢えて突っ込むなら、他の方も書いているとおり、人物描写の不足ということになる。
分量を敢えて増やさないことにしたためかもしれないけど、確かに人物が書けていないのは事実。
それが気になってしまう読者がいるのは仕方ないかな。
とにかく次作以降も期待したい。
(本格ミステリーもまだまだ可能性があるのだなと感じさせられたことが大きい)

No.3 7点 HORNET 2015/09/20 22:16
 トリックは、「よくぞそこに着目した!」と思う秀逸な着眼点。その点では満足。過去の焼き増しや、諸要素の複合ではない、一点モノという感じがした。
 鼻についたのは、青臭い心理描写や人物描写。今後磨きをかけていただきたい。
 また、トリックが秀逸なだけに、下手な偶然要素でここまでかさを増す必要はなかったのではにかとも思う。「これが最終の真相ではなくて、実は…」の仕掛けは、やっても花帆まででよかった。最後は自分としてはくどかった。
 ミステリとしての出来はかなり上々だと思う。

No.2 6点 まさむね 2014/03/21 18:31
 第3回アガサ・クリスティー賞受賞作品。
 賞の名にふさわしい,しっかりとしたプロットの端正な本格作品。派手さはないものの,楽しめました。
 しかし,文章力・表現力という観点では「まだまだこれから」といった印象。特に,被害者・弥生の描き方が物足りないので,動機に結構な違和感が残ります。

No.1 6点 虫暮部 2014/02/20 19:17
弥生のキャラクターだが、そんなに“悪魔みたい”“殺されてもおかしくない”とは感じなかった。それは“殺されてもいい人間なんていない”といった意味ではなくて、彼女の行動なんて所詮は大学生レヴェルの悪行じゃないかということ。他の登場人物の育ち方が健全だから悪意に対する耐性がなかっただけじゃないの、と思う。あまつさえ15年が経過しても悪魔扱いというのは、共感出来ない。
 トリックについては評価したい。毒物がそんなに計算通り作用するのか、という点についてはこの際ミステリの美学として目を瞑っても良い。