[ 日常の謎 ]
風ヶ丘五十円玉祭りの謎
裏染天馬シリーズ
青崎有吾 初出版: 2014年04月 平均:5.67点 採点者数:9人

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採点傾向
No.9 6点 makomako 2017/11/19 08:34
この短編集は作者の体育館の殺人、水族館の殺人を読んでからでないと、興味が半減しそうですので、まずこれらを読んでから手にされることをお勧めします。勿論最新作の図書館の殺人を読んでからでもよいです。大変すばらしい作品ですので本格物が好きな方は読んで損はないと思います。
 話がこれらの登場人物のキャラクターの深掘りといった趣もあるので、読んでからだと、なかなか面白く読めます。
 謎解きとしては大したことはなく軽いお話です。したがって無理な推理などと野暮なことは言わないで読みましょう。
 いつのまにか袴田妹の柚乃ちゃんがかわいくなっています。扉の絵も素敵です。こんな感覚で読むのならそれなりに面白い。
 本格推理の希望の星の作品だと思って読むとちょっと拍子抜けしそうです。

No.8 6点 名探偵ジャパン 2017/11/09 17:51
長編は、さすがのロジックを繰り出してきて、ガチ本格にキャラクター小説のスパイスを振りかけた。程度に収まっている本シリーズですが、本短編集くらいにまでなると、半分以上キャラクター小説です。
正直、そこまでこのシリーズのキャラクターに入れ込んで読んでいたわけではなかったので、ほぼ全てのキャラクターの読み分けが出来ていない「お前、誰だよ」状態でした(登場キャラクターに年齢、職業的相違がない、ほとんどが女子中高生ということも理由のひとつでした。舞台がそうなので当たり前なのですが)。

私は、「混ざるべきでない食品同士が混ざってしまう」という状態に異様な嫌悪感を覚えるので、「もう一色選べる丼」に出てくる「二食丼」は絶対に食せない自信があります。同じ丼に盛る以上、境界線で絶対に混ざるでしょ。麻婆丼と親子丼の具が混ざるって、考えられません。混ざらないように食べるには、相当な努力を要するはず。こんな悪食な真似をするなら、ハーフサイズの丼を二つ出してもらいたいです。これでも本作のトリックは通用しますよね?

一番面白かったのは、「その花瓶にご注意を」でしょうか。あとは、結構、真相を知ったときに「そうだったのか!」と膝を打つというよりは、「しょーもな!」と感じてしまうものばかりで(特に表題作は、それをやったとして、そんなにリターンが見込めるかなぁ?)、やっぱり個人的に、ミステリには「犯罪者」がいないと、どうにも締まらないな、という感想を改めて持ちました。

No.7 3点 ねここねこ男爵 2017/11/04 23:01
ん〜〜〜〜これはちょっと…擁護できない。ミステリ的でない話のほうが良く出来てます。ミステリ的なものだと二色丼の話かな。

表題作があまりにも酷くてびっくりした。『五十円玉二十枚の謎』に挑んでものの見事に滑っている。違った意味で衝撃の真実。

この作者の作風というか悪癖で、解明の論理を先に作り、論理に合うように舞台をオーダーメイドするため、舞台設定が歪んで不自然と言うのがあります。例えば二色丼ってのは「こういう推理をしたいから二色丼ってのがないと困るから作った」んでしょう。時間的人的に高コストな二色丼が現実の学食にあるとは思えない。いや二色丼の創造くらいは別にいいんですが、表題作みたいに舞台不自然、論理強引、真相は意味不明なまでに歪んじゃってると…
ロジックものの名作は、例えばポットに残った湯の量みたいな些細なことから見事な論理を構築することに素晴らしさがあるわけで、「ボクはこういう公式を作りたい!とにかく作りたい!だから公式として成立するように定義を変えちゃえ!」なんてダメのダメダメです。

以下表題作のネタバレと批判。
祭り後に落ちてるお金を拾っていた連中が、もっと利益を上げようとして①使用硬貨を50円に限定→②流通量増加→③落とす確率増加→④ウマーということ。②→③の因果関係は何となくそうなりそうってだけだろ。そもそも一人あたりの流通量の増加じゃなく人の増加そのものが原因じゃね?ってのと落としても祭りの人手では回収困難ってのが落ちてる理由じゃあ。さらに③→④が?実際の祭りのあとだと500円玉も結構落ちている。当たり前だけど50円玉10枚分だ。本当に50円玉だけの方が利益が上がるのか?

No.6 6点 E-BANKER 2017/08/27 19:34
「体育館」「水族館」と続いた裏染天馬シリーズ初の短篇集。
すでに三作目「図書館」のアイデアはまとまっていたが、編集側の要望で連作集が先に発表されることになった模様(巻末解説より)。
それはともかく、“平成のエラリー・クイーン”の惹句は短編集でも生きているのか?

①「もう一色選べる丼」=風ケ丘高校学食の一番人気「二色丼」。半分残された「丼」に纏るミステリーが連作の第一編。お得意のロジックから絞り込まれた容疑者は呆気なく罪を認めジ・エンド、ということなんだけど、どこかこう背中がむず痒くなる推理。そう、「こんなことどうでもいいだろ!」ってことかな・・・
②「風ケ丘五十円玉祭りの謎」=若竹七海氏の実体験から生まれた伝説のアンソロジー「五十円玉二十枚の謎」。作者がこれにインスパイアされたのかどうか定かではないが、やっぱり本編の真相にもかなり無理がある。そう!一言で言うなら「こじつけ」だ!
③「針宮理恵子のサードインパクト」=「体育館」にも登場した学園の問題児・針宮理恵子と年下の恋人に纏る謎を扱った第三編。まぁ、そういう解法になるよなぁーという程度のことなのだが、その光景を想像するとなかなか羨ましい!(正直、見たい!!)
④「天使たちの残暑見舞い」=一番「こじつけ」っぽいのがコレかな。厳しめに言うなら「ご都合主義も甚だしい」ということなんだけど、二学期制・三学期制という言葉がさりげなく触れられている辺りに、作者のセンスは感じる。
⑤「その花瓶にご注意を」=個人的に一番感心したのはコレだ。本編のみ妹の鏡華が天馬に代わって探偵役を務めているのだけど、コチラの方が(探偵役として)いいんじゃないかと思ってしまった。美少女キャラで名探偵なんてね、本シリーズにはいかにも嵌りそう。それはともかく、本編では「傘」・「モップ」ではなく、「花瓶」という小道具からお得意のロジックが全開!

以上5編。(「おまけ」あり。天馬の父親が初登場?だよね)
長編二作と比べてはいけない。
とにかく軽くというか、ちょっとしたインパクトや雰囲気を重視したような作品が並んでいる印象。
ラノベテイストも長編よりは高めなので、純粋な本格ファンには物足りなく映るだろう。

かくいう私もそうなんだけど、まぁ“箸休め”的な短篇集ということで、次作に期待というところ。
作者は寡作でいいから、できるだけ質の高い本格ミステリーを書いていただきたい。
(⑤でも書いたけど、今後は天馬ではなく、鏡華の方が探偵役に相応しいんじゃないか?)

No.5 6点 メルカトル 2017/07/28 22:04
裏染天馬が日常の謎に挑戦する連作短編集。
全体として平均的な出来で、突出した作品や他より劣るような作品はない模様です。
表題作は祭りの屋台のおつりがどこも50円玉で返ってくるという魅力的な謎に対して、裏染が暴く真相はかなり拍子抜けの感は否めません。
最も面白かったと思うのは『もう一色選べる丼』で、学食のすぐ外に放置されたどんぶりの謎に挑んでいます。ただ、裏染は犯人を左利きだと断定していますが、実際自分で試してみたところ、必ずしも左利きとは限らないことが判明しました。まあケチを付ける程度のレベルですが、このように限られた枚数の中で論理を展開して完璧な解決に導くのは難しかったようで、ややこじつけがましい点がないでもないと感じます。しかし、やはり本作もロジックに特化した本格ミステリであるのは間違いなく、今この範疇での第一人者は青崎氏だというのは万人が認めるところだと思います。
まるで関係ない話ですが、香織の名が出るたびに松村香織の顔がちらつくのには参りました。

No.4 6点 アイス・コーヒー 2014/06/14 18:36
県立風ヶ丘高校に住むダメ人間、裏染天馬が探偵役を務めるシリーズ初の連作短編集。
テーマが日常の謎だけに、肝心のロジックには強引さが生じるものの全体としては中々よく出来ていた。長編ではあまり描かれなかったキャラのアナザーストーリーもあり、次回作(図書館の殺人?)への期待が高まる。
ミステリとしては「天使たちの残暑見舞い」や「その花瓶にご注意を」あたりが面白かった。
前者は二人の女子高生が、一見不可能に見える状況で消失するもの。トリック自体は何とも言えないが、残暑の設定をうまく活かしている。
後者は、天馬の妹・鏡華が活躍する。真犯人との論破合戦が見どころだが…いまだに彼女のキャラがよく分からない。仙堂警部の娘・姫毬も登場する。
他にも、夏の風ヶ丘を舞台にした作品が並び、中々楽しませてもらいました。

No.3 6点 まさむね 2014/05/17 21:18
 裏染シリーズ初の短編集。
 ちょっと恣意的な設定も見受けられるし,ロジック展開としてもこれまでの長編に及ばないのですが,ユーモアミステリ的な側面も増していて,サラッと読む分には楽しめると思います。よくよく考えてみれば短編集にマッチする舞台構成ですしねぇ。個人的なベストは「もう一色選べる丼」かな?
 ちなみに,「体育館の殺人」の次は「図書館」と想像しつつ,「水族館」に持っていかれた者としては,とうとう「図書館」が読めそうなのが嬉しいです(苦笑)。

No.2 5点 kanamori 2014/05/06 14:57
風ヶ丘高校の校舎内に住み着くオタク高校生探偵・裏染天馬が”日常の謎”に挑む連作短編集。

殺人事件を扱った既刊の長編のようなクイーン流のスキのないロジックを展開して謎解くという趣向は弱い。全体的に論理が雑で恣意的なものが目立つし、犯人がなぜそのような持って回った行為をしたのか納得がいかないものも多かった。
レギュラーとその周辺人物のやり取りは学園もののラブコメを思わせるところもあって、シリーズのファンが気軽に読んで楽しめればいいのではという感じを受けました。

収録作のなかでは、お祭りの屋台の釣り銭が全て50円玉という謎を扱った表題作と、裏染の妹と仙堂刑事の娘の中学生コンビによる番外編「その花瓶にご注意を」がまずまずかなと思う。
次の長編「図書館の殺人」に期待しよう。

No.1 7点 ガーネット 2014/04/23 21:29
〈平成のクイーン〉が日常の謎に挑戦! ……ということでしたが、やはり日常の謎ものは従来の本格ミステリと違い、推理を「これ以外ありえない」というレベルまで押し上げるのが難しいので、この作者の持ち味が十二分に生かされているとは言い難いでしょう。
この短編集の中でベストを選ぶなら、表題作でしょうか。次いで、裏染天馬の妹・鏡華の推理が堪能できる「その花瓶にご注意を」。

まず表題作の魅力は、ある人物が推理した、なかなかに納得できる〈別解〉を天馬の推理で打ち消す場面。その仮説自体も十分面白いものなのですが、それを否定する推理までも用意しているのが素晴らしい。この点は、『水族館の殺人』でも作者が見せてくれた匠の技ですね。
意外なワトソン役が登場し、ツイストの効いたオチがある「その花瓶にご注意を」も見事。細やかな伏線を拾い集める手際が光ります。
圧倒的に少ないデータから犯人像を緻密に描く「もう一色選べる丼」も佳作。「針宮理恵子のサードインパクト」は、ミステリ仕立ての青春小説という印象ですが、こういう趣向も面白い。
「天使たちの残暑見舞い」は、やや突拍子もない真相ですが、状況設定の巧みさで、無理矢理感は回避できていると思います。

まあ明らかに次回作への布石だと思われるくだりもあり(次の館はもう決まったようなものですね)、裏染天馬を巡る謎も少しづつ解かれているので、シリーズのファンは絶対に抑えるべき一冊と言えるでしょう。
ミステリとしても、クイーン風推理からは残念ながら路線変更されているのですが、見るべきものは多いと思われます。