[ 本格/新本格 ]
ミステリー・アリーナ
深水黎一郎 初出版: 2015年06月 平均:6.83点 採点者数:12人

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採点傾向
No.12 6点 ミステリ初心者 2017/12/10 10:38
 この作品は、過去のさまざまなトリックが使われていて、ねたが割れてしまう可能性があるため、後回しにしたほうがいいかもしれません。

以下、本作品のネタバレをしながらレビューしています。


 設定が特殊で、すぐに夢中になりました。物語パートの間に解答パートがあり、伏線やミスリードがすぐ回収されて読みやすいです。
 メイントリック?は、マジシャンがよくやるマジックと似ていると思いました。マジシャンが、「今あなたが選んだカードを昨日から予想していました」とか何とか言って、昨日からはっつけておいたカードをだすアレです。マジックとミステリってすごく親和性が高いですよね。

 この作品は、叙述トリックや多重解決?ものを皮肉っているのか、リスペクトしているのかよくわかりません。ただ樺山が言いたいこともちょっとわからなくもないです。叙述トリック物だけでなく、アガサや横溝作品他、"誰が犯人でも間違いではない"系が全ミステリのほとんどだと思います。何が伏線で、何がミスリードかは作者が勝手に決めているだけ。ただ、やっぱり名作といわれるものにはオリジナリティーなり、よいトリックなり、読み物として面白さがあるので、本作品はやっぱりその点で劣っていると思います。

 気に入らない点としては、ギャグ調に展開したのに急にホラーのような要素があり、不要に思えました。なんなら、もっとギャグに徹したほうがよかったです。
 あと私のお気に入り"たま人間説"が早い段階で出てしまって残念w アッーーー!には笑いました

No.11 8点 名探偵ジャパン 2017/08/22 20:34
かなり凝った趣向の大作でした。
作中の「ミステリー・アリーナ」という番組自体に何か仕掛けがあることは、かなり早い段階から提示されますが、出題テキストと、それに答えていくキャラクターと司会者のやりとりが面白く、いい意味で、「仕掛けはとりあえずどうでもいいから、解答を聞かせてくれ」という気持ちになります。

作中作が、あの手この手で回答者を騙しにかかる手段は、「作品を楽しむ」「作品で楽しませる」というよりも、「どれだけ早くトリックを見破るか」「いかに読者を騙すか」に重きが置かれる昨今のミステリ事情を強烈に皮肉っている、と捉えることも出来るのではないでしょうか(それだけがミステリを読む目的であれば、ミステリ「小説」という形を取る必要はなくなるでしょう。「推理クイズ」的なテキストに特化するべきです。まあ、「推理クイズ」で十分だろ、と言いたくなる「ミステリ小説」もあるにはありますが)。

騙し手段のそのほとんどが、「よく読め、確かに書いてあるだろ」的な詐欺まがいの契約書のような細かい記述トリックと「よく読め、嘘は書いてないだろ。お前の勝手な勘違いだ」という叙述トリックに終始しているというのも、昨今のミステリの流行りを茶化しているように思います。
ラスト付近である人物が語る、これまた昨今流行りの「多重解決を成立させるために〈タイムリープ〉や〈パラレルワールド〉を持ち出すSF的設定」についても、その人物は痛烈な言葉を投げかけます。これには私は全面同意してしまいました。

「暮しの手帖」を編集した花森安治が言った、「ミステリを読む醍醐味は騙される快感にある。それを先回りして謎を解くなどというのは、ミステリの読み方としては愚の骨頂」という意味の言葉を思い出しました。

No.10 7点 邪魅 2017/03/25 07:03
良くもまあこれだけ考えたものです

いずれも叙述トリックとしてはごくごく有り触れたものですがこれだけ詰め込まれるとまさに圧巻、ただただ呆れるばかりです
呆れるというのは勿論褒め言葉ですが

いくつか怪しい解決がないでもないですが
それにしてもたまは流石に笑いますね
状況を想像してみるとシュール過ぎると言いますか

しかし面白かったです

No.9 3点 ia 2016/07/12 16:33
新法律に支えられたハイリスクハイリターンの国民的クイズ番組
狂言回しの司会者に潜入工作員の解答者
これは「国民クイズ」という漫画そのまんま。もう既視感しかない

推理クイズとテキストの2つが交互に進むが
解答者の推理はこのあとテキストで否定されるんだろうな、と序盤で気づいてしまうワンパターン構成なので最後の数十ページまで目が滑りまくる。
とにかく流れ作業的。

真相である解答は、最後の最後に炸裂するようなインパクトも全然無い
くだらないアンフェア。
解答者達に司会者は言い訳しまくるが読者としてはたまったもんじゃない。
頑張って多重解決を詰めまくりました、だから何?という読後感。

No.8 8点 HORNET 2016/06/26 17:56
 まず、本当にこういう番組があったらいいのに。絶対観る。(もちろん…アノ要素はナシでね)
 趣向、発想からして面白い。そして、「多重解決もの」という、この構成にした意味もよく分かる。司会者のキャラクターも面白く、エンタメ要素もアリ。とにかく、面白かった。(あまりにも伏線的な要素が多すぎて、後半はもういちいち覚えていなかったが…)

 ただ、こうした構成上仕方がないのかもしれないが、後半は「叙述トリック」に傾倒していってしまい、一行かそこらの仕掛けでうんぬんするのがちょっと億劫だったのと、前半で何度か司会者が意味ありげな言い間違いをしていたのは結局何だったのかわからずじまいだったことから(わかっていないの私だけ?)、-2点のこの点数にさせていただいた。

 強く印象に残る作品だったことは間違いない。

No.7 7点 まさむね 2015/11/15 19:10
 叙述を重ねに重ねて、なお成り立たせる構成力に、まずは魅かれました。
 さらに、その前提として、よくもまあこれだけの伏線(正確には伏線のための伏線って感じか)を仕込んだものだなぁ…と、その努力にも感心。「はいはい、ここ注目ですよ~」といった判りやすいものから、「そこまでやっちまうのかい!」と突っ込みたくなるものもあって、なかなかに楽しめましたねぇ。
 作者の遊び心を楽しみつつ、読後には結構考えさせられる同志もいらっしゃるであろう、精緻な作品という印象かな。

No.6 7点 メルカトル 2015/11/06 20:07
氾濫する叙述トリックを揶揄しているかのような皮肉さと、色物的なたくらみに満ちた、一気に読ませるリーダビリティを持った異色作。
徐々に明らかにされる問題編に対して、次々と回答される解決編。そのほとんどが様々な叙述トリックを利用したもので、明らかに怪しげな記述から、さりげないと言うかどうとでも取れるような曖昧な表現を突いたものまで、矛盾なく解決に結びつけようとする作者の苦労がしのばれる。その意味では確かに多重解決物の極北といってもいいだろう。
最後に解答者側の狙いが明らかにされるが、やや取って付けたような印象を受ける。さらに唐突な終わり方があっけなく感じたのが勿体ないなと思わないでもない。

No.5 9点 abc1 2015/10/18 15:33
正直絶句した。
何を書いてもネタバレになりそうだが、今後多重解決モノで、これを超える作品が現れるかどうかは疑問だ。
それくらい「やり尽くした」印象がある。
一昔だったら、これ一冊に詰め込んだアイディアで15冊のミステリーが書けただろう。
普通は探偵が行う「可能性潰し」を、この作品では作中作が行っていく。
従って展開がスピーディーで、読み始めたら途中で止めるのは困難。
15も解答があれば、中には「軽い」ものもあるが、真相が次々と、まるでパタパタと風に翻るパネルのように変わっていくさまは圧巻。
さらに大きな枠組みでの愕きまで用意されていて、作者のサービス精神に感服する。

(付記)
本作とほぼ同時に「その可能性はすでに考えた」を読んだのだが、本作のせいで向こうが霞んでしまった。
また本作を「虹のハブラシ」と比較されている方がいるが、その比較はあまり有効とは思えない。
何故なら「虹のハブラシ」は正確には多重解決とは呼べないと思うからだ。
らいちの素性が若かろうが老婆だろうが、事件の結末が変わるわけではない。
つまりあれは単なるらいちの「多重素性」であって、本作と比べること自体が無理だと思う。
ただメフィスト賞のテイストが脈々と受け継がれていることは嬉しく思う。

No.4 7点 文生 2015/10/16 12:30
作中作に基づいて15人にのぼる解答者が次々と真相を推理していく趣向が楽しい。その推理というのがどれもこれもバカバカしいものばかりなのだが、それも昨今乱発されている叙述トリックのバーゲンセールを揶揄しているものと考えれば逆に深みさえ感じられる。

ただ、似たり寄ったりの解答が多いため、中盤少し退屈に感じてしまった。解答者の面々も老若男女色々取り揃えてはいるが、自信過剰の上から目線キャラが多すぎてかなりワンパターン。

楽しい作品であることは間違いないのだが、もう少しメリハリを意識してくれれば傑作になりえたと思う。

No.3 7点 mozart 2015/09/26 16:18
よくこれだけ何通りかの解に向けた伏線(?)を仕込んだな~と率直に感心しました。最後の方はちょっと脱力気味でしたが・・・。
どうでも良いことですが、「アーッ!」ではなく「アッー!」ではないかと。

No.2 7点 BLOW 2015/08/13 00:56
基本的にネタバレはしていないつもりですが、多少中身に触れているかもしれません。あと、早坂吝の虹のハブラシについても若干触れています。

多重解決の極北という惹句だが、確かにこれだけ多重解決を詰め込んだ作品は他にはないだろう。かなりの労作であると言える。
毒入りチョコレート事件などの例を見ても分かるように、多重解決ものは情報をすべて与えた上で各々が推理を開陳するという基本構造のため、終盤に推理が詰め込まれることになる。しかしこの作品は早い者勝ちの推理ゲームという設定を用いることによって、序盤から推理に次ぐ推理の嵐を巻き起こしている。十五通りの解決を提示しながらこれだけのボリュームにおさえたのは驚嘆の一語。異様に密度が濃い作品になっている。
しかし本作はやはりパロディの域を出ていない、というかパロディの上にあぐらをかいているとしか思えない。全体の設定にも、各々の推理にも不満が残る。
はっきり言って、それぞれの推理が面白いと思えない。どれもこれもギャグにもならないようなメタなトリックばかりで辟易させられる。面白いと思ったのは螺旋階段のトリックくらいだ。普通の人は読み過ごすような地の文の些細な記述を取り上げて、作中の人物が「これは実はこういうことなんだよ」と説明させるものの何の興味も湧かないし、そもそもこれは作中作という形式を取っているから可能なことだ。メタなトリックなどは本質的に作中人物が細かな解説を加えることなどできないが、作中作の形を取ればそれが容易に可能となる。作家にとってこれほど楽な道はないだろうが、だからこそ安易に飛びつくべきではないし、読む側の目も厳しくならざるを得ない。この手のネタは、まともな作家なら思いついても書きはしないだろう。十五通りの多重解決というと聞こえはいいが、実態は思いつきを詰め込んだ闇鍋のような作品である。作者の言い訳として作中作という形式を取っているとしか思えない。全体に漂うパロディ感も、言い訳がましさに拍車をかけている。多重解決の極北を謳うのであれば、もっと真っ向から書いて欲しかった。
最近の作品で作中作の形式を取った多重解決ものというと、早坂吝の虹のハブラシがあるが、あちらの作品はそれぞれのトリックが作中作であるという事実に頼っていない。そもそも作中作と明かされるのが、最後になってのことだ。ミステリーアリーナはトリックを成り立たせる言い訳として作中作という設定を用いたのに対し、虹のハブラシは作中作という事実をトリックとして利用するという見事な手綱さばきを見せてくれた。要するに、ミステリ-アリーナは作中作の中にトリックがあるのに対し、虹のハブラシはトリックの中に作中作があるのだ。そんなわけで、自分としては虹のハブラシに軍配をあげたい。

No.1 6点 kanamori 2015/07/08 18:44
大晦日恒例のテレビ企画・犯人当て推理ゲーム「ミステリー・アリーナ(推理格闘場)」が、ミステリーオタク14名を回答者に迎え開催されていた。いち早く正解すれば高額の賞金が貰える一方、外した参加者には悲惨な運命が待っているのだが-------。

ミステリのタイプとしては、デビュー作の「ウルチモ・トルッコ」(=改稿改題「最後のトリック」)と同系統の、コード型本格ミステリの趣向を弄ぶような作品になっている。
全編にわたり”多重解決”に淫しているが、早押しクイズ形式になっている点がキモで、回答した次の章で新情報が出てきて、前の推理が否定される展開が繰り返される。最終的に15通りの解決という”多重解決の極北”を目指し、標榜するチャレンジ精神は評価したい。また、それを成立させるための伏線の多さには感心を通り越して呆れるばかりだ。
ただ、多重解決といっても、同じ情報を基に着眼点の違いによって異なる解を導き出すのが本来の意味の”多重解決”だと思うので、新事実が出てきて解が変わるのはあたりまえでは?と思えたことも事実。
あと、野暮を承知で付け加えると、テレビ企画なのに、問題編が推理ドラマ(映像)ではなく小説の形で提示されるのはさすがに不自然。そんなテレビ映えしない番組が成立するとは思えないw