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平均点:6.26点 採点数:697件

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採点傾向好きな作家

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No.697 5点 二度のお別れ- 黒川博行 2020/02/15 12:19
 あまり好みのタイプではない。が、その割に面白く読めた。が、真相は“やっぱりそうか”である。
 逃げ切った犯人がしかし全然幸せになっていない、と言う部分をサラッと流していて勿体無い。そこはもっとじっくり読みたかった。構成上難しいか。

No.696 7点 悪魔の手毬唄- 横溝正史 2020/02/15 12:18
 文章が良い。美文名文ではないが、読者を作品に踏み込んで行く気持にさせる力がある。刀自が手毬唄を聴かせる場面はゾクゾクした。歌詞自体はプロローグで既に提示されているのに改めてそんな気分になるのは凄いことだ。
 真相解明によって全てがピタリと嵌った感じは正直あまり無いが、本作に於いてはさほどマイナス要素ではない。
 登場人物が多くて混乱するので、フルネームでの表記をもっと多くして欲しかった。

No.695 5点 エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン 2020/02/15 12:17
 読みながら思ったこと(順不同)――

・こういうプロットは他にも読んだことがある(クイーンの作品の方が元ネタなのかもしれないが)。
・文化に基づく習慣を根拠に性別を推測するのは強引。
・誰一人引っ掛からない偽の手掛かり、って単なるページ稼ぎでは。
・詐欺行為のカムフラージュに窃盗/強盗/不法侵入を行うのは、捕まるリスクを増やすだけでは。
・七匹も買われる前に何か変だと思わないものか。店員が“買ったものをどうしようと御客様の自由ですから”と言うキャラクターならともかく。
・殺人現場を調査中のエラリーは、何故“偶然、ドアノブを拭いて指紋を全部拭きとった”のか。下手すると証拠隠滅。

 しかし、突っ込みどころの無い作品が優れていると言うわけでもなく、一番面白かったのは、手掛かりがわざとらしい「ガラスの丸天井付き時計の冒険」。巡らした策が却って首を絞めている、余計なことしなきゃよかったのに、と普通なら言うところだが、ここでは犯人のミスに説得力が認められていいね。

No.694 5点 グレイメン- 石川智健 2020/02/08 10:52
 文章は、まぁ褒められたものではない。どうにも硬くて、直線だけで描いた絵、みたいだ。ただ、兎にも角にも絵になってはいる。小説の文章はこうあるべし、と言うのは狭量な先入観なのかもしれない。米韓でも出版されたとのことで、翻訳に於いてはこういう侘び寂びの無い文体が有利に働くかも。
 色々突っ込みどころはあるが、作者の意図はどうあれ、楽しめる与太話。とりあえずそれで充分。

No.693 7点 5まで数える- 松崎有理 2020/02/08 10:51
 可笑しな味わいの、しかしなかなかの佳作揃いだと思う。もとより決してリアルな設定の話ではないが、語り口の醸し出す絶妙な嘘っぽさが本書を特別なポジションに引っ張り上げている。

No.692 4点 ラミア虐殺- 飛鳥部勝則 2020/02/08 10:49
 なんじゃこりゃあ。ゲテモノは嫌いじゃないが、やはりそれだけじゃ駄目なんだな。百歩譲って大まかなプロットとしてはまぁアリかもしれないが、その具体化が全然上手く出来ていない。誰かリライトしたら?

No.691 7点 人面屋敷の惨劇- 石持浅海 2020/02/08 10:48
 状況設定は面白い。しかしこの殺し方はリスキー。被害者が絶命する前に誰かがひょいと現場を覗いたら、一命を取り留めることもあり得る。下手人は被害者に顔を見せているわけで、苦痛を与えることよりも確実な絶命を優先すべきでは。

 “女性らしいふくらみのほとんどない肢体”だから色仕掛けは難しいだろう、と言う意見について、個人的には否定的である。

No.690 5点 宇宙細胞- 黒葉雅人 2020/02/03 13:27
 ぶっちゃけ、『ΑΩ』(小林泰三)みたいだ。“片手”と言う設定から『寄生獣』(岩明均)も想起させられる。『鉄腕バーディー』(ゆうきまさみ)にはバチルスなんてのが登場するし、遡れば『ソラリスの陽のもとに』(スタニスワフ・レム)、新しいところでは『粘菌人間ヒトモジ』(間瀬元朗)等。不定形の生命体とぐにぐにぷよぷよと言うのは一部の人類に普遍的な憧憬なのかもしれない。
 出発点を考えると割と順当な展開で、物凄い驚きは無い。ラストの部分も、もっとグイグイ読ませる文章力があればねぇ……偏執的な文体は意図的なものだと思うが、私とは微妙にセンスが合わなかった。全体的に、もう一つ何か欲しい感じだ。

No.689 5点 キリオン・スレイの生活と推理- 都筑道夫 2020/02/03 13:23
 “こういう奇妙な事件にしたい、その為には犯人がこういう風に動けばいいはずだ”と言う作者の思惑だけで登場人物が駒のように行動して不自然。犯人やその関係者の作為が妙に回りくどかったり、心情的に何故そこでそう動くのか納得しづらかったり。物語としての枝葉末節をもっと整えるべきだった。

No.688 7点 ユートロニカのこちら側- 小川哲 2020/02/03 13:22
 情報技術による“ありそうな未来”、と言うことで大枠のパターンには既視感がある。しかし物語る手管の上手さ、脇役の説得力、あちこちに埋め込まれた小ネタなど、メイン・テーマ以外の要素が良く出来ていてそういう部分で勝ちだ。個人情報の監視によって発見される予備犯罪者への対処、なんて問題も俎上に乗せられている。

No.687 7点 終末曲面- 山田正紀 2020/02/03 13:19
短編と言う枠の中に押し込められた物語の軋みが聞こえる。背景としてもっと大きな世界が感じられ、いわば設定としては長編的、結末は短編的、故に文字で表現された以上のエッセンスが行き場を失くしてえも言われぬ焦燥感を生み出した。特に「薫煙肉のなかの鉄」の世界にはもっと浸りたかった。
 「銀の弾丸」は、日本人作家による史上二作目のクトゥルフもの作品だとか(一作目は高木彬光「邪教の神」)。

No.686 5点 イシャーの武器店- A・E・ヴァン・ヴォークト 2020/01/30 12:37
 二大組織の対立を背景に、スパイ・スリラーや経済事件やロマンス等々の小ネタを混ぜ、面白い部分もあるのだが総体としていまひとつ噛み合っていない。原因は、“武器店”なる存在に説得力が足りない(単なる反政府組織と何が違うの?)にもかかわらず存在感は大きいので、物語の基本設定があやふやになっていることか。過大評価は避けたい。

No.685 6点 牧師館の殺人- アガサ・クリスティー 2020/01/30 12:32
 随分と俗っぽい牧師さんだ。GOOD!
 ところどころにさりげなく埋め込まれたユーモアも冴えている。

 「夜中の十二時にスーツケースを持って、森の中で何をするつもりだったんでしょう?」
 「ひょっとすると――古墳の中で眠るつもりだったのかもしれませんよ」

 とか。これに何も突っ込まずにシレッと続くところが GOOD!

 “最初はまさかアクロイドではと疑った”←私も!

No.684 8点 息吹- テッド・チャン 2020/01/30 12:31
 極端に寡作な兼業作家が、しかし評価も人気も上々、と言うポジションに就けるのは、作品が高水準なだけでなく、取替えの利かない個性あってのことであろう。
 「商人と錬金術師の門」は、まぁ面白いが、意図的に借り物のスタイルで書いているせいもあって“個性”と言う感じはしない。
 それを除けば、どれもかなり高水準かつ個性的。「息吹」など、まさにセンス・オヴ・ワンダー、笑いも感動も許容する無二の世界だ。
 ただ、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は――訳文の巧みさも相俟ってディジエント達の愛らしさがたまらない。考えさせられつつも胸が温かくなる傑作――なのだが、既視感がある。具体的に何に似ていると言うわけでも、この作品に限った話だと言うわけでもないけれど、AIやITを題材にしたSFは“その時期の最先端を見て、更にその先を想像する”と言う点で早い者勝ち競争みたいになっていないだろうか? 「偽りのない事実、偽りのない気持ち」にもそのケがある。タイム・ラグが生じ易い寡作の短編作家は不利。

No.683 5点 花の下にて春死なむ- 北森鴻 2020/01/30 12:29
 表題作と「魚の交わり」で描かれた哀切な人生と謎の絡みはなかなか読み応えアリ。この2編だけなら高評価出来た。
 しかしそれ以外は、ミステリとしても人情話としても中途半端。文章力がその不足を充分補えたとも言い難い。“わいわい語り合う推理クラブもの”と言う形式を、上手く使いこなせていない気がした。

No.682 6点 樹木葬 ―死者の代弁者―- 江波光則 2020/01/27 11:09
 何年たっても世界は殺伐として、子供達は死ねとか死ぬとか喚き続けるのだろう。でも歳を重ねたって繕い方が多少身に付く程度だ。人間になるのはとても面倒臭い。作者はどこまでも一人称のまま、読者の背中を少しだけ蹴飛ばして放置する。

No.681 7点 声の網- 星新一 2020/01/27 11:03
 広義の“レトロフューチャー”か。電話が携帯電話に進化しないまま別方向へ向かった時間線。同作者のショート・ショート群ともまた違った空気感(登場人物がエヌ氏ではなく具体的な日本人の名前である点も大きいかも)を持つ作品世界の予見性には驚いた。無色透明な文体で綴られる、微かな不穏さを孕む静謐な物語は、それ故に、怖い。
 実は、インターネットが普及する以前に本書を一度読んでいるのだが、その時に抱いた感想は全く記憶にない。もう二度とそんな読み方は出来ないだろう。嗚呼口惜しい。

No.680 5点 最長不倒距離- 都筑道夫 2020/01/23 10:46
 作者の意図は判るが、論理が徒にチマチマしているし、物語としてあまり面白くない。私の読み方が下手ってことで。
 夜中の12時に置時計が鳴る場面があるけれど、客から文句が出ないのだろうか。

No.679 8点 キリングクラブ- 石川智健 2020/01/23 10:45
 この導入部で『DINER』(平山夢明)を連想するのは致し方なかろう。正直、前半のうちは“或る種のパターンに則って上手に書いており見事、だがそれだけ”と悔し紛れのイチャモンのような感想だった。しかし後半の、設定自体をレッド・ヘリングに据えたが如き展開にはびっくり、脱帽。
 第四章、脳外科医の意外な行く末はとても面白かった。第五章の出版社のエピソードはその後に全くつながっておらず不要なのでは。

No.678 5点 大江戸ミッション・インポッシブル 顔役を消せ- 山田正紀 2020/01/23 10:44
 天保の江戸を舞台に闇の勢力が激突(密室殺人も発生)。人間離れした遣い手がアレコレ登場するが、ギリギリ現世に留まっている(か?)。
 近年はSF回帰の傾向が目立つ作者だが、こんなシリーズに対する意欲もあるのかと意外に思った。終盤は強引な展開で無理に見せ場を作った感あり、以下次巻。

No.677 6点 イヴの末裔たちの明日- 松崎有理 2020/01/20 11:04
 結構バラバラな作風の短編集だが、器用貧乏には見えないところが立派。御題は脱獄・宝探し・新薬実験……最も異色な「まごうかたなき」が特に良かった。
 ただ、思わせぶりなリンクが有ったり無かったりで、“アレは何だったの”と言う疑問が幾つか無くも無い。例えば、主人公がキスチョコを路上に散らしたことと宇宙生命体がキスチョコ型であることは関係があるのか? とか……。

No.676 6点 密葬 ―わたしを離さないで―- 江波光則 2020/01/20 10:59
 物語的にも心情的にも内向きに完結した『鳥葬』にどんな続きがあるのかと訝ったが、それでも人生は続くわけだ。捻りは無いけれど、嫌な人物を魅力的に描く腕も、投げ遣りな文芸論も、なかなか悪くない。

No.675 7点 赤い部屋異聞- 法月綸太郎 2020/01/20 10:56
 オマージュ作品を集めた短編集。とりあえず、オマージュ云々とは無関係に概ね楽しめた。ベストは「まよい猫」。
 私が知っていた元ネタは一つだけ。元ネタ既読ならもっと違う景色が見えたかもしれないが、それは判断出来ない。オマージュを先に読んでしまうことで、いざ元ネタを読む時に興が殺がれている可能性はある。
 元ネタがどの作品か事前に判れば読者が主体的に読む読まないを選べるが、タイトルから元ネタを予想出来るのは2編だけ? 元ネタの一覧表は無く、各短編のあとに解説が付されているので、途中のページをパラパラめくって確かめることになるが、それだと余計なネタバレが目に入りかねないのが問題。
 事前に判ればいいとも限らず、読みながら嗚呼この話はアレかぁと気付くのが楽しいかもしれない。しかし(多分)なかなか幅広いセレクションで、元ネタを全部知っている読者は限られるのではないか。

 つまり、作品集の体裁に、読者の“何をどういう状態で読みたいか”と言う選択肢を奪ってしまう側面があるようだ。好きな作家なので読んだが、こういうのはこれきりにして欲しい。好き度のもっと低い作家だったら“オマージュ短編集”と言う時点で敬遠したと思う。

 “片”は確かに人に見える! だったら“介”は首無し死体?

No.674 5点 七つの棺- 折原一 2020/01/20 10:53
 トリックの傾向を考えるとパロディ形式の選択は妥当だけれど、ユーモアのセンスが自分にはあまり合わなかった。“要は見せ方なのだ”との作者の言に同意(見せ方が合わないのでアウト、と言う意味で)。

No.673 6点 鳥葬 ―まだ人間じゃない―- 江波光則 2020/01/16 13:23
 鳥葬とは、モノの本によれば、単に遺体を処分する便宜として食わせるわけではなく、鳥を媒介にして空に死者を葬る、との思想だそうな。なんてロマンティックな。ついでに資源のリサイクルにもなる。私の望む葬送法第1位だ。2位は医学の為に献体してそのまま標本になること。
 いや全然そんな話じゃないんだけどね。“鳥葬”も比喩表現だしね。

No.672 5点 青列車の秘密- アガサ・クリスティー 2020/01/09 12:01
 次々に新しい人物が登場して、ええっ多過ぎるよと思ったが心配無用、読み進めるとそれぞれ適切なところに落ち着きスッキリ整理された物語だ。この作者には紋切り型のキャラクターを生き生き描く才があり、風俗小説として面白い。ミステリとしてはつまらない。
 あの人の頭文字が●だとは、推測は可能だが気付かなかった。“彼女(メイド)の名前はエレンなんですか、それともヘレンなんですか”と言う台詞が日本人向けの伏線なのである。

No.671 6点 贋作ゲーム- 山田正紀 2020/01/09 11:59
 作者曰く“実行不可能な作戦を数人のチームが達成する”シリーズの短編4本。個々の作戦は面白いし、短編サイズで過不足ないネタを上手く配している。しかし基本コンセプトが共通なのでどうしても似通った印象。主人公がみな世を拗ねてうらぶれた中年男なので尚更。そして、同趣向の長編に比べて切迫感が無いと言うか、やや淡白。

No.670 7点 屈折する星屑- 江波光則 2020/01/05 12:50
 厳しく言えば、殺伐とした不良の青春小説の舞台を宇宙時代に移しただけ。とは言えアレンジの仕方としては悪くないし、小手先の技ではなく作者がきちんと作品世界を“引き受けている”感じで好感が持てる。タイトルを始めとして散見されるデヴィッド・ボウイ用語は鼻に付くが、作者にとっては重要だったのだろうからまぁ大目に見よう。

No.669 8点 神々の埋葬- 山田正紀 2020/01/05 12:48
 『神狩り』『弥勒戦争』『神々の埋葬』で“神シリーズ”とも呼ばれるらしい。しかし山田正紀は以降も繰り返し神をテーマに取り上げているわけで、その呼称はあくまで初期の視点による過去のものと捉えるべきだと思う。
 さて本作。スケールの大きさは言うまでもなく、若書きなりに『神狩り』等と比べると登場人物は存在感を増したが、まだストーリーを勢いで駆け抜けてしまった感がある。美味しいキャラクター設定だけしてガンガン使い捨てている。例えば後藤貢あたりのエピソードを一つでいいから(伝聞ではなく)挿入してあれば、ハードボイルドな結末の無常感もいや増したのではないか。

No.668 8点 弥勒戦争- 山田正紀 2020/01/05 12:45
 乾いた筆致の仏教SF。水面下の全体像がきちんと在って、その上で氷山の一角だけ断片的に描いている感じ。逆に言えば“ここをもっと深く掘ってよ!”と言う箇所があちこちに見られ、決して小説巧者ではない。しかし妙な生々しさが時折グイッと鎌首をもたげる。なんだこれ。

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