蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.00点 採点数:1056件

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採点傾向好きな作家

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No.996 7点 天国は遠すぎる- 土屋隆夫 2017/01/17 10:40
裏表紙より~『自殺した若い娘砂上彩子の遺書には、死を誘う歌としてジャーナリズムを賑わせる「天国は遠すぎる」の歌詞が記されていた。翌日、県庁の課長深見浩一が失踪、絞殺体で発見された。深見は土木疑獄の中心人物。容疑はアルプス建設工業社長尾台久四郎に向けられたが、尾台には完壁なアリバイが。この3人を結ぶ線はあるのか?』~

1959年の作品なので、本邦でのアリバイトリックものとしては結構初期の作品群になるのかも?。非常に丁寧に書かれており好感が持てました。2件目のトリックは、うまい組み合わせで非常に新鮮に感じられました。当然見抜くことはできませんでしたが(笑)。著者の作品はこれで7作目となりますが、今のところ外れはないです。

No.995 6点 こわされた少年- D・M・ディヴァイン 2017/01/13 13:25
裏表紙より~『霧の濃い夜、16歳のイアンは家を出た。優秀な生徒だった彼は、ある出来事を境に不良仲間に入り、急に金回りが良くなり、挙げ句の果ての出奔だった。姉は単なる家出と考えていたが警察に。ニコルソン警部と姉の捜査から家族の秘密・不良仲間との関係・学校での出来事・轢き逃げ事故など様々な手がかりが出てくるが。彼に何が起こったのか、生死は…。そして姉が襲撃される。』~

警部ニコルソンと少年の姉アイリーンの視点で交互に語られます。前半は事件も起こらず、捜査状況や家族関係が描かれるだけなので、やや緊迫感に欠ける印象です。後半、アイリーンが襲われるあたりから盛り上がってきます。本作はミスディレクションをメインにした作品という感じを受けました。

No.994 7点 私家版- ジャン・ジャック・フィシュテル 2017/01/05 10:56
裏表紙より~『友人ニコラ・ファブリの新作。それが彼をフランスの第一級作家に押し上げることを私は読み始めてすぐに確信した。以前の作品に比べ、テーマは新鮮で感動的、文体は力強く活力がみなぎっている。激しい憎悪の奔流に溺れながら、この小説の成功を復讐の成就のために利用しようと私は決意した。本が凶器となる犯罪。もちろん、物理的にではない。その存在こそが凶器となるのだ…。』~

前半はミステリー的な要素はほとんどありません。「あらすじ」を読んでいなければ普通の小説のようです。後半になって、倒叙ものとしてミステリーらしくなります。本作については、アイデアが秀逸であると思い高評価としました。実際にあった事件にヒントを得たようですが、その事件から逆転の発想へとつなげるところが優れていると思います。

No.993 4点 死者を起こせ- フレッド・ヴァルガス 2017/01/03 13:28
裏表紙より~『愛称マルコ、マタイ、ルカの、それぞれ専門の異なる若く個性的な歴史学者と元刑事が、ともに暮らすパリのボロ館。その隣家に住む引退したオペラ歌手の婦人が怯えていた。ある朝突然、見知らぬ木が庭に植えられていたというのだ。ボロ館の四人がその木の下を掘るが何も出ない。そして婦人は失踪した。いったい何が起こったのか?気鋭の女流が贈る仏ミステリ批評家賞、ル・マン市ミステリ大賞受賞の傑作。』~
木が庭に植えられたという謎で引っ張っていきますが、ミステリー的には弱いかなといった感じです。ダイイングメッセージも出てきますがフランス語を知らないと無理!!!(笑)。2014年Twitter企画「フランスミステリベスト100」の7位にランクインした作品。ミステリー部分より4人のキャラクターや生活ぶりなどのユーモア部分が高評価の要因なのかもしれません。

No.992 5点 炎の背景- 天藤真 2016/12/27 09:14
「BOOK」データベースより~『新宿歌舞伎町で酔いつぶれた「おっぺ」こと小川兵介は、見馴れぬ場所で目を覚ました。傍らには初対面の通称ピンクルと、もうひとり恰幅のいい中年男。何故かしら男の脇腹には深々とナイフが刺さり、とうの昔に冥途へいらしたご様子だ。山荘の屋根裏に閉じ込められている状況下、前夜の記憶を手繰りラジオのニュースを聴くに及んで、抜き差しならない罠に落ちたのだと悟るおっぺんとピンクル。突如爆発した山荘を命からがら脱出した二人は、度重なる危難を智恵と勇気と運の強さで凌ぎながら、事件の真相に迫ろうとするが…。』~
若い男女の逃避行。著者の作品の特徴であるユーモアは、ややおとなし目でした。もう少しドタバタ調でもよかったのではと思います。二人は性に関し、お互いトラウマを持っており、その点が副主題(青春ミステリー)になっています。「ピンクル」が水死しそうになったあと、「おっぺ」がマッサージする場面があるのですが、非常に微笑ましいものでした。真相やラストについては爽快感不足か?。

No.991 8点 恐怖の誕生パーティー- ウィリアム・カッツ 2016/12/23 14:19
事前情報(読むきっかけ)はクリスティ氏のある短篇がモチーフであるらしいとのことだけでした。何も知らず読んだ結果、それが大正解!!。読後はコーネル・ウールリッチ氏の作品(1948)を思い起こしました。本サイトでは本作の書評1件のみでしたが、読書Mではまあまあの数の書評が載っています。結構ネタバレ気味の内容が多いので先に読まなく良かった(ホッ)。著者の作品の翻訳は3~4冊程度みたいです。高評価の理由は、心理サスペンスもので登場人物が少なく読みやすいことと、ラストがドンピシャと壺にハマったということです。

No.990 5点 肖像画(ポートレイト)- 依井貴裕 2016/12/17 21:14
著者の文章は、ややとっつきにくいところがあり相性が良くない。3人称でありながら主語がない文章など。殺人事件が起こったあと、一人が行方不明、一人は部屋に閉じこもり顔を見せない。そのような状況で、警察が来ても「開かずの間」を開けないという不自然さ。開けると物語が成立しないのかもしれないが。また焼死体が部屋にあるにも拘わらず臭わないなどは興ざめです。まあ、ミスリードや伏線の回収などは標準以上であるとは思います。

No.989 5点 死の贈物- パトリシア・モイーズ 2016/12/15 09:15
裏表紙より~(略)『クリスタル未亡人の誕生日には、例年外国人に嫁いだ、三人の娘が集うのが習いであった。スシス人医師に嫁いだ長女ブリムローズはバースデーケーキを、オランダ人園芸家に嫁いだ次女バイオレットは真紅のバラを、アメリカ人大富豪に嫁いだ三女ダフォディルはシャンパンをもって、ドーバー海峡を渡ってくるのだ。主任警視ヘンリ・ティベットにしてみれば、今回の特別任務~被害妄想にかかった老未亡人のおもり役などは心外であった。しかしパーティーの席では毒見役をかって出た。未亡人はケーキを食べ、シャンパンを飲み、バラの香りをかぎ・・・次の瞬間、未亡人は大きくあえぎ、床に倒れたのだ!殺人は行われた。予知された殺人を許し、苦悩するヘンリは、ヨーロッパを舞台に執念の調査を開始した』~

メインはハウダニットになりますが、それは非常に特殊なもので専門家以外の読者が解くことは不可能でしょう。フーダニットについては、前半部分は誰もが怪しくないという筋書であり、クリスティ氏の逆バージョンのような気がします。従って、やや盛り上がりやメリハリにかけるきらいがあります。推理というより、ヘンリ主任警視の調査が主体の物語であると思いました。なお、「著者あとがき」は完全にネタバレしていますので、絶対先に読まないよう注意が必要です。

No.988 7点 恩讐の鎮魂曲- 中山七里 2016/12/09 10:50
前作で御子柴弁護士の過去が判明した結果、「死体配達人」と揶揄され仕事も激減している。そんな中での少年院時代の恩師の殺人事件。この被告人である恩師が一筋縄ではいかない人物であった。リーガル的なテーマは「緊急避難」と耳慣れないものです。緊急避難の寓話「カルネアデスの板」は、船が転覆し海に投げ出された男が板にしがみついた。そこに別の男がしがみつこうとしたが、板は二人の重みには耐えられそうもなく、男はあとから来た男を突き飛ばし水死させた。殺人罪で裁判にかけられたが無罪となったというもの。まだ国内では殺人での判例はない?。まあ、本作の主題はやはりシリーズを通しての「贖罪」でしたね。今回は結構御子柴弁護士の内面に迫ったものが描かれていました。事務員洋子がチョイ役でかなり登場したので、次作は洋子との絡みがあるのかどうか期待するところ大(笑)。

No.987 8点 今はもうない- 森博嗣 2016/12/07 13:00
作中作の主人公・笹木の西之園嬢に対する恋愛物語が主体であり、密室事件はおまけのようなもの。どんくさい笹木がメインで頭脳明晰な犀川の出番が少ないことが残念という意見もありそうですが、私的にはこちらの展開の方が楽しめました。応援した笹木が頑張ってくれました!(笑)。シリーズでは、今のところ「すべてがFになる」が1位で「本作」が2位ですね。

No.986 4点 残酷な夜- ジム・トンプスン 2016/12/02 18:34
裏表紙より~『身長5フィート、肺病病みの殺し屋リトル・ビガーは、近く開かれる裁判の重要証人の口を封じるため、ニューヨーク州の小さな田舎町にやって来た。真面目な学生を装って標的の家に下宿した彼は、美しいが自堕落な妻を誘惑、下宿で働く片脚の女や世話好きの老人など、周囲の人間を巧みに利用しながら着々と暗殺計画を進めていく。しかし、冷徹なプロの殺人者であるビガーにも予想もつかなかった展開が彼を待ち受けていた…。全篇を覆いつくす暴力と死の暗い影、歪んだ世界の歪んだ愛、そして戦慄のクライマックス。魂の暗黒を描き出すパルプ・ノワールの鬼才ジム・トンプスンの埋もれた傑作。』~
「サヴェッジ・ナイト」翔泳社版で読みました。主人公は殺し屋であるのですが、学校に通いバイトもするというもの。この辺は笑えるのですが・・・。標的をどうやって殺害するのか?といったサスペンスものではありません。どちらかといえば、殺し屋の内面を描いた作品といえるのかも。ラストもあまりピンと来なかった。残念です。

No.985 7点 世界短編傑作集3- アンソロジー(国内編集者) 2016/11/30 21:53
「キプロスの蜂」アントニー・ウイン~(7点)車中で女性が死亡。猛毒のハチに刺されたあとが見つかる。発表は1925年で、当時ではかなりショックのあるトリックであったと思う。
「堕天使の冒険」パーシヴァル・ワイルド~(6点)あるクラブ。ブリッジで勝ちすぎるメンバーに疑惑を抱いた主人公。彼はいんちきを暴くが逆襲にあってしまう。実話に基づくものらしい。トリックよりストーリーが楽しめた。
「茶の葉」エドガー・ジェプスン& ロバート・ユーステス~(7点)トルコ風呂で男の刺殺体が発見された。直前、一人の男が風呂から上がり、他には誰もいなかった。そして兇器も発見されず。本作が有名なトリックの元ネタだったとは・・・。
「偶然の審判」アントニイ・バークリー~(9点)Aにチョコレートの試作品が届く。偶然居合わせたBは不要であれば欲しいという。Bは妻Cと賭けをして負けたのでチョコレートをプレゼントすることになっていた。「毒入りチョコレート」の元ネタ。登場人物が少ないのにどんでん返しがある。単純で素晴らしい。長編「毒入りチョコレート」は多重解決がメインとなり、本トリックがかすんでしまっている印象。長編は、多重解決(どうでもいい推論)アレルギーに陥った作品(苦笑)。
「密室の行者」ロナルド・ノックス~(8点)修行者が密室(体育館)の中のベッドの上で餓死。周りには食料があったのに。後発の小説で本作の名はよく目にしていたが、内容は知らなかった。ビックリ仰天。
「イギリス製濾過器」C・E・ベチョファー・ロバーツ~(4点)教授が密室(窓は開いている)で濾過器に入った毒で死亡。これがトリック?というレベル。
「ボーダー・ライン事件」マージェリー・アリンガム~(5点)チンピラが射殺される。死体の左右には夜警がいた。よって犯人は逃走できない。犯人は近くのカフェにいたが、そこからは射殺することはできない。どちらかというと脱力系。
「二壜のソース」ロード・ダンセイニ~(7点)男と一緒にいた少女が行方不明になった。男は家から外出することもなく、毎日薪をつくっているだけ。ダール氏(後発)の作品集を先に読んでいるため、「奇妙な味」に免疫ができてしまっている。よって驚きがなかったことが残念。
「夜鶯荘」アガサ・クリスティー~(6点)アクリスはディックに好意、しかしジェラルドと結婚。彼女は夢でディックがジェラルドを殺す夢を見る。著者らしいサスペンス。
「完全犯罪」ベン・レイ・レドマン~(6点)完全探偵(すべての犯罪を暴ける)と自称するが、実は最近の事件で犯人を誤って逮捕してしまったか?。屁理屈?論理的?なところが面白い。

No.984 6点 警官の紋章- 佐々木譲 2016/11/25 15:15
「笑う警官」「警察庁から来た男」に続く、北海道警察シリーズ第三弾。本作で警察の組織がらみの犯罪に決着がついたと言っていいのでしょう。3部作で終了かと思って本作を手に取ったのですが、その後もシリーズ化されていました。プロット勝負の警察小説と捉えているので、4作以降どのような展開になるのか興味をひかれます。また佐伯警部補と小島百合の関係がどうなっていくのか?も(笑)

No.983 6点 安達ヶ原の鬼密室- 歌野晶午 2016/11/20 11:11
著者の特徴といえば、バラエティーに富む作品を提供してくれるということでしょうか。本作では、それを一冊の中に閉じ込めたといった印象を受けました。そして、読み終えるとある共通点が”浮かび上がる”といった洒落た作品になっていると思います。表題作は長編で読んでみたい気もしましたが、やはりトリックを隠す点では難しいのかもしれません。如何せん「痕跡」を隠しとおすことには、かなり策を労することになるでしょう。作中作の「密室の行水者」の題名について。著者は小学生の頃読んだロナルド・ノックス氏の「密室の行者」(未読)に衝撃を受けたそうです。そこからのヒントでしょうか?。

No.982 4点 ホット・ロック- ドナルド・E・ウェストレイク 2016/11/12 18:20
笑いのツボが違っているため、あまり楽しめなかった。二転三転くらいが私にとって限度でした。

No.981 7点 傷だらけのカミーユ- ピエール・ルメートル 2016/11/08 22:08
裏表紙より~「カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女(アンヌ)を執拗に狙う犯人。もう二度と愛する者を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠し、残忍な強盗の正体を追う。『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』の三部作完結編。イギリス推理作家協会賞受賞、痛みと悲しみの傑作ミステリ。」~
出だしから圧倒される展開でした。プロット勝負で警察小説の王道を行くような感じです。ついつい感情移入させられてしまいました。これがシリーズ最終作となり残念です。

No.980 6点 ロアルド・ダールの幽霊物語- アンソロジー(海外編集者) 2016/11/08 22:04
「BOOK」データベースより~「幽霊物語の目的はぞっとさせることにある。読者をぞくぞくさせ、不安な気持にさせなければならない―あるTVシリーズの企画のため、原作となる幽霊物語を選定することになったロアルド・ダールは、まずこのような基準を設けた。そして、この基準を厳格に守りながら、古今の作品を読みついでいった。諸々の事情で企画そのものは中止となったが、ダールの手もとには、14篇の宝石が残った。有名無名を問わず、本物の幽霊物語だけが放つ妖しい光。闇の向こうの恐怖が、あなたの安眠をさまたげずにはおかない。」~
ベストは「W・S」~絵葉書(差出人W・S)が、ある作家のもとへ届く。内容は作家を誉めているようでもあり、逆に悪意があるようにもとれる。絵葉書の発信場所が徐々に作家の住まいに近づいてくる。不安になった作家は警察に電話する。そして警官がやって来て氏名を名乗るのだが・・・。幽霊物語ということで、各作品の結末が予想されてしまう点がもったいない。前提なしで読んだら、結構インパクトのある作品集であると思います。なお、ダール氏自身の作品はありません。「女主人」(「キス・キス」に収録)は当初、幽霊物語だったようですが、その秘訣をつかんでいなかった為、結末を現在のように変えたとのことです。

No.979 6点 幻の女- 五木寛之 2016/11/08 22:00
(再読)著者の作品「蒼ざめた馬を見よ」が登録されたのを機会に本作もということで・・・。表題作「幻の女」は女性の生理をメインにした珍しい作品です。デパートの売り上げを伸ばすため、生理休暇を1ヶ月停止するというもの。女性陣は当然反対するのですが、工作に負けてしまい、ある条件を飲むことになります。そこで主人公の女性が取った行動とは・・・。この作品の表紙はムンクの「叫び」です。作中のラストでも、ムンクの「叫び」を夕焼けの情景となぞらえて効果をあげていると思いました。なお、大河小説「青春の門」の続編を、新年より23年ぶりに再開するとのことです。84才お元気ですね。

No.978 6点 蒼ざめた馬を見よ- 五木寛之 2016/11/08 21:59
(再読)直木賞受賞作品で、冷戦時代の賜物といったような感じを受けます。短篇なので若干物足りなさはありますが、筋は謀略物で今読んでも面白いですね。主人公が壁に飾ってある額をずらし、隣の部屋にいる重要人物を覗き見る場面があります。その額の絵は、ムンクの絵としか書いてありませんが、次の展開から予想すると、題名はあの有名な「叫び」ということになるでしょう。著者はムンクが好きで他の著書の表紙にも使っています。そんなことで「叫び」が表紙の「幻の女」を次の書評にしたいと思います。

No.977 4点 拾った女- チャールズ・ウィルフォード 2016/11/08 21:54
ノワールに分類されるようですが、どこがノワール的なのかよく分かりません。解説者の杉江松恋氏は「これは、ある男女のやりきれない恋愛物語である。」としていますが、どこが恋愛?(単なる出会いでは?)この辺もよく理解できませんでした。後半の違和感が伏線になっているとのことですが、「ああ、そうなんですか」という程度のものです。ミステリー的な伏線とニュアンスが違う気がします。結局のところ、掴みどころのない小説ということになるのでしょうか。

No.976 5点 図書館の殺人- 青崎有吾 2016/10/31 16:46
うーん、犯人の行動が不自然です(苦笑)。著者の売りである「論理」を優先したあまり、結果として不自然な犯人像が出来上がってしまったとの印象です。つまり、無理やりに論理づくりをしたためではないでしょうか?。5つの条件に当てはまる人物、それが犯人である。それはいいでしょう。しかし、犯人に関する伏線が生きていません(まあ、数行あるといえばあるという程度ですが)。これでは「あっ、そうなの」で終わってしまいます。伏線の妙(おお!あそこが伏線か)があってこそ論理が生きてくるのでは?・・・。
理解できな犯人の行動は、①被害者の後をつける行動。非常に稀なケースです。②動機が弱いとの評が多いのですが、それは突発的な要因で犯行に及んでしまった、あるいは咄嗟の判断で保身を図った、ということで許容できるものと思います。しかし、精神的に動揺している犯人が、犯行直後に冷静に証拠隠滅を図るという行為が、どうもアンバランスで納得しにくいのです。③血のついた○をトイレで処理する。これはまったく理解不能です(笑)。そんなことをする人がいるのかなあ?。もっとほかの方法をとるでしょう。この行動が犯人特定の重要部分になっているので、個人的には大きなマイナスポイントになってしまいました。④ポケットに○○○○を戻す行為。さて何のため?。
その他の疑問は、①犯人が「鍵の国星」を読んでいるのかどうかは不明です。この点はいただけないですね。②それに関連し、「ラストの一行」的な意味での「く」を理解できる読者は果たして何人いるのでしょうか?。読者は「鍵の国星」を読んでいないわけだし、それほど伏線があったとは思えないし・・・。実は「く」ではなく「ク」でしょうか?。最後に”若き平成のエラリー・クイーン”の宣伝文句はどうなんでしょう。評価が高いので、あえて辛目の採点で。一行一行読むのではなく、サラッと流して読むタイプなので、読み落としによる理解不足があると思いますので、この苦言は気にしないでください。

No.975 6点 もう誘拐なんてしない- 東川篤哉 2016/10/25 13:11
誘拐、偽金とくれば結果は予想しやすいのですが・・・・。やくざの物語でもあり、どう落とし前をつけてくれるのか?が勝負。いい意味で、予想外の展開でした。青春コメディと捉えています。本格はおまけか?。解説に「万人が泣く映画を作るのは容易いが、万人が笑う映画は難しい。笑いのツボは人によって違うから」とありましたが、まったくその通りと実感。本作は今までの著者の作品の中で一番笑えました。

No.974 5点 殺人者は夜明けに笑う- 香川由美 2016/10/23 22:15
「そして誰もいなくなった」の映画化が決定し、その撮影が開始されると同時に殺人事件が起こるというものです。倒叙形式なので犯人は最初から読者にはわかっています。謎は死体がどうしてハリウッド広告塔にぶら下がったかという派手なものです。誰が実行したのか犯人にもわかりません。なかなか犯人の思惑通りにいかないところなどは楽しめました。しかし、謎が謎ではなくなってしまうという瑕疵がありました。読み込みが甘いのかもしれませんが・・・。当然、原作については、ネタバレのオンパレードです(笑)。

No.973 7点 アルモニカ・ディアボリカ- 皆川博子 2016/10/15 22:28
謎解きというより、前作「開かせていただき光栄です」(2011)で出奔したエドとナイジェルのその後の物語といった感じです。ナイジェルの生い立ちや、その周辺の人物の恋物語(アルモニカ=グラスハープを制作する若者とその手伝いをする娘、恋人を守るため精神病院にあえて入っている人物)が描かれています。法を守ろうとする盲目の治安判事ジョン・フィールディングの悩みが主題の一つになっていました。

No.972 4点 赤い殺意- 藤原審爾 2016/10/02 17:44
若竹七海氏「さよならの手口」の巻末にある紹介本です。1964年今村昌平監督により映画化されています。キネマ旬報「オールタイムベスト・ベスト100」日本映画編(1999年版)では第7位にランクインしています。(参考~1位・七人の侍、3位・飢餓海峡、5位羅生門)。
内容は、平凡な主婦が夫の出張中に強盗に犯されてしまう。夫に言おうとするが言えず死のうとも思う。夫の不在時、また強盗が現れ「自分はもうすぐ死ぬので優しくしてほしい」という・・・。
原作は昭和34年の発表で時代の差を感じてしまう。つまり当時の貞操観念が現在とはかけ離れており、その女性心理がよくわからない。死ぬこともできず、告白することもできない。相手を殺そうとも思うがそれもできない。ずるずると関係を続けてしまうのです。あえて愚鈍な女性として描いているのかもしれませんが共感できなっかった。直木賞作家で、心理描写には定評があるそうですが、イライラしてしまいました(苦笑)。

No.971 6点 陽気な容疑者たち- 天藤真 2016/10/01 13:58
著者のデビュー作。後発の作品に比べれば、ユーモアはあまり感じられなかった。本作にユーモアがあるとの書評が多いということは、後発の作品がいかに面白いかの証左ですね。本作はのんびりした、ほのぼの感のある作品といったイメージです。白眉は、結婚式で明らかにされる元警察医の視点とそのロジックです(感心、感心)。

No.970 5点 キルトとお茶と殺人と- サンドラ・ダラス 2016/09/24 11:48
裏表紙より~『カンザスの田舎町ハーヴェイヴィル。不況の波は農村にも押しよせおまけに日照りつづき、しかし主婦たちはキルトの会に集まってはお茶と噂話に日をすごす。ある日現われたのはキルトより“事件”が好きという新聞記者志望の若い女性、それから何かと騒動が起こりだす―流れ者の登場、不倫と妊娠騒ぎ、そして殺人事件まで…。』~

若竹七海氏「さよならの手口」の巻末紹介に、「最後の一撃」ものとあり手に取りました。前半はキルト仲間の日常が描かれます。コージー的な作風がお好きな方には良いかも?。中盤から殺人事件が起きますが、ある程度ミステリーを読んでいる方には、やや物足りないかもしれません。後味は決して悪くありませんし、いかにも田舎らしいほのぼの感があります。

No.969 5点 ペンローズ失踪事件- R・オースティン・フリーマン 2016/09/19 12:12
~骨董品のコレクターであるペンローズ氏が失踪。自動車事故で老婦人をはね、その後病院から姿を消したらしい。ペンローズ氏の父親の死亡により、遺産相続問題も発生した。ペンローズ失踪の裏には何があるのか?。ソーンダイク博士が捜査に乗り出す。~
地味な展開で、あまりメリハリがありませんでした。じっくり謎解きをする方にはいいのかもしれませんが・・・。ラストはそれなりのどんでん返しはあります。

No.968 6点 死刑台のエレベーター- ノエル・カレフ 2016/09/15 09:39
結末の皮肉がいい!滑稽でもあり好みです(笑)。このようなモチーフの作品は他にないのでは・・・。やや中盤に退屈感があったのが残念。その分は後半で盛り返したか?。「大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150」(1991版)では、第5位となっており映画の方が有名ですね。

No.967 5点 さよならの手口- 若竹七海 2016/09/11 22:38
ハードボイルド風の展開が、あまり肌には合いませんでした。本題とは関係ありませんが、主人公のバイト先がミステリ専門書店であるところより、巻末に「おまけ」として店長のミステリ紹介が載っています。「オリエントの塔」(水上勉氏)「赤い殺意」(藤原審爾氏)「キルトとお茶と殺人と」(サンドラ・ダラス氏)は読んでみたいと思います。

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