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平均点:6.68点 採点数:136件

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採点傾向好きな作家

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No.136 9点 図書館の殺人- 青崎有吾 2016/02/13 12:28
〈裏染天馬シリーズ〉の最新刊。
『体育館の殺人』で鮎川哲也賞を受賞したとき、「次は図書館ですか」と大方の読者が予想して、それを外しに来たらしき『水族館の殺人』。そしてこの度、待望の『図書館』が満を持して竣工されたわけです。
……余談ですが、2014年度の「本格ミステリ・ベスト10」の『水族館』の解説で、本家館シリーズの二作目『水車館』をもじって『水族館』なのだ、と何気なく書かれていたときには目から鱗でした。その発想はなかった。

二つのダイイング・メッセージという、本格ファン垂涎の設定が魅力的。
いくつかの手がかりはかなり露骨に提示されているのですが、それを咀嚼し、正確に読み取り、〈犯人の条件〉を割り出すのは至難の業です。かといって、アンフェアだとか論理に穴があるというわけではありません。情報の隠顕、その匙加減が絶妙なんですね。
一番感心したのは、解決編でダイイング・メッセージに与えられるある解釈。あの場面では皆さん、『図書館の殺人』を使って試してみたのでは? それを想定していたとしたら、作者の稚気には感心するしかありません(笑)

また、クイーン系ミステリ特有の「中盤のダレ」も(少なくとも私は)感じませんでした。というのは、事件周辺を取り巻く謎が、順を追って、少しずつ暴かれていくからです。意味深なプロローグに鏤められていたピースが丁寧に回収されていき、どれにも納得させられます。
特に「城峰有紗の大切な本」を巡る解決には、思わず膝を打ちました。ミステリ読みにはある程度見慣れた手がかりが組み込まれているんですが、盲点すぎて気づきませんでした。
学園ミステリとしてもやはりユニークで、『水族館』以来迷走を続ける八橋さんには何度も笑わせられました。

あと、究極にどうでもいい余談ですが、今回は一番アニメネタがわかってちょっと嬉しかったです。『名探偵コナン』『暗殺教室』など、初心者向けのネタが多かったからでしょうか。うるさいことを言いますが天馬くん、『あの花』ではなく『あのはな』ですよ!

No.135 8点 神様ゲーム- 麻耶雄嵩 2016/02/13 11:56
お正月に『螢』を読んで、魅せられた作者。大体、あまりにも有名なこのかたを未読で、「新本格ファン」などと名乗っていたのが恥ずかしすぎますが……。
閑話休題。
とてもジュブナイルとして出版されたとは思えない書きぶりで、これを子供に読ませるのは酷いなあ、と苦笑させられました。私はどちらかと言えば、「残酷シーンや犯罪者の心理を描いた作品は害だ!」と論ずる人のほうを白眼視しているのですが、この小説は進んで子供に読ませたいとは思えません(笑)

被害者になった人物が、少ない出番ながらも好きなキャラクターだったので、その時点でも悲しかったのですが……犯人が裁かれることに「救い」など求めてはいけなかった……。最終章に向かえば向かうほどに悲劇は加速し、ラストでこてんぱんにされます。
主人公くんには強く生きてほしい……。

ところで、「神様は嘘はつかないけれど、真実を全て伝えるわけではない(大意)」といった文章がありましたが、これってまんま推理作家のことですよね(笑)

No.134 9点 - 麻耶雄嵩 2016/02/13 11:46
クローズド・サークル物の、本格ミステリ中毒者にはたまらない一品。
舞台が隔絶されている割に、中盤にはあまり激しい展開は見られないのですが……さすがに解決編に入ってからは読ませます。
複数の仕掛けが絶妙に絡み合い、有機的に機能し合います。
いくらミステリを読みなれたかたでも、どこか一つはギョッとさせられるはず。
その仕掛けが好みに合うか否かは別として、「驚き」を貪欲に求める読み手なら、絶対に読んで損はしないでしょう。
幕切れも秀逸です。まだ少ししか読んだことのないかたですけれど、「カタストロフィ」がこの作者の特徴だそうで。
野暮なもので、自分がこの小説を書いたとしたら(書けませんが)勿体なさすぎてこんなエピローグにはできませんよ(笑)

No.133 6点 犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題- 法月綸太郎 2014/12/14 15:32
クイーンの『犯罪カレンダー』的な法月綸太郎の短編集。
法月氏はあとがき等で、「ボーナス・トラック」「オフビート」などと自著を音楽用語になぞらえることが多いけれど、その例えでいくと本書は「コンセプト・アルバム」とでも呼べそう。

私的には双子座にまつわる事件「ゼウスの息子たち」が最も気に入りました。仕掛けどころが予想外で、思わず、そう来たかと唸らされます。
「ヒュドラ第十の首」は、犯人当てということで、私も謎解きに挑んでみました。問題の焦点になっている軍手とゴム手袋が使用された流れを図に起こしてみたりして。最終的な真相まで読み切れたので、私としてはそれだけで満足でした(笑)。神話に内包される暗喩の冴えは、この作がベストと思われます。
「冥府に囚われた娘」も佳品。「都市伝説パズル」の筋かと思いきや、事件の構図が二転三転。最終章で読者は、序盤からは想像もつかない地点まで飛ばされることになります。クイーンがこだわり続けた○○テーマの気配も漂っております。
残り三作は、他の方の書評を見てもやはり相対的に評価が辛いですが、その中であえて挙げるなら「鏡の中のライオン」が秀でているかなと。法月氏の『二の悲劇』では荒井由実の『卒業写真』が引用されていましたが、この短編のBGMは『真珠のピアス』なのでは?
「ギリシャ羊の秘密」は、有栖川先生の短編に近い雰囲気があって結構好き。「六人の女王の問題」は、表題作ながら、個人的にはワーストに思えます。まず読者が推理できるタイプの作ではないし、最終的に明かされる真相も、尻すぼみの印象を拭えず、ブラックジョークとしてもキレがないような。

結論を言うと、全体としては、読んで損のない短編集でした。

No.132 5点 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 2014/09/26 22:40
(ネタバレありです)


「可もなく不可もなく」の5点ではなく、非常に優れている点ととても残念な点が入り混じってのこの結果です。
まず、叙述トリックは素晴らしい、完全に見破れませんでした。人物の性別、年齢、作中の時代、場所……すべてを疑ってみたのですが、それでも全然分からなかった。結果として年齢には欺瞞があったわけですが……。
残念なのはその点。大学生の若者であるかのように描写されている蒲生稔が結果、四十路の男だったというのが真相ですが、目撃証言で犯人を「30歳前後」としておきながらそれは……どんだけ若く見えるんですかね(笑)
まあ、この叙述トリックは、ビジュアルの大胆な転換よりむしろ、登場人物たちの続柄を誤認させることで「世界観の反転」を見せつけることを主目的としたものですから、気にしなくていいことなのかもしれませんが。
ただ、そこの設定がずるかったために「大技っぽさ」が減ってしまったのが悔やまれます。他は、素晴らしかったので。

No.131 7点 卯月の雪のレター・レター- 相沢沙呼 2014/08/15 19:49
この作者の作品は、非ミステリ作品の『雨の降る日は学校に行かない』しか読んだことがなく、「ミステリとしては弱い」という評価をネット上の様々な書評で目にしていたので、実際に読んだ感想としては、「思ったよりしっかりしている」というものでした。

ミステリにおける〈意外性〉というのは、大抵の場合が可視の謎と隠されている真相の間の〈飛距離〉だと思います。日常の謎の場合、とりわけそこが大事になる。
そこに注目すれば、この作品はまあ、よくできている方なのでは。
ミステリ部分の弱さが出るのは、多分、青春小説的側面を強調するあまり、謎が謎として扱われていないことが原因かと思われます。本書でいえば、たとえば「チョコレートに、踊る指」ではそもそも作品世界に謎は存在しません。読者の前に提示される〈真相〉があるのみ。
「狼少女の帰還」でも、謎の解決は教育実習生の主人公が小学生同士の不和を解消するというドラマの通過点として扱われている。やはり謎が存在しない。
上記二作品の真相にそれなりの意外性があるにも拘わらず、逆に、いかにものミステリ=フー&ハウダニットである「こそどろストレイ」では、真相が地味なものであったりする。

全体を見渡してみると、少女文学的な部分とミステリ的な部分の噛み合わせの悪さが問題かなと思います。ナイーブでどちらかといえば内気な少女たちが主人公の小説は、割と需要があると思うのですが、奔放な青春小説と比較するとミステリとの相性が悪い(ような気がする)。
作者にはもっと色々なジャンルに挑戦してみてほしいところです。
ミステリ的部分のみ見れば完成度は高そうだったので、この点数で。

No.130 7点 怪盗グリフィン、絶体絶命- 法月綸太郎 2014/08/07 16:36
よく練られていて、最後の最後まで楽しめました。
リーダビリティは法月氏の作品随一だと思われます(第二部の始まりあたりは、ちょっとダルだったけど)。
ただし、設定・展開等は確かに少年少女の読者に歓迎されそうですが、学術的なセンテンスなども多く挟まっていて、「この意味、子供に分かるか?」というような余計な心配もしました。
また、壮大なスケールのホラ話(褒め言葉)であるがゆえに、小学生くらいの読者だと虚実皮膜の妙を楽しめないんじゃないかな、とも。

それでも全体としては安心して楽しめる傑作に仕上がっています。
続編も出るようですが、どんな書きぶりでどんな形態での出版なのか、今から想像を巡らせて期待しております。

No.129 5点 タルト・タタンの夢- 近藤史恵 2014/07/20 20:50
すぐに読めます。「割り切れないチョコレート」がベストでしょうか。
ただ、前置き→謎の提示→シンキングタイム→真相解明の構成の中、前置きが長すぎ、謎の提示と真相解明の間が短すぎるきらいがあり、ミステリとしては非常にバランスを失しています。最終的な手がかりが出た2ページ後には真相が語られ始める、というようなことも。
フレンチの描写と人間ドラマを軽い感じで楽しみたい、という人向け。ミステリとしては薄味です。

No.128 6点 雨の降る日は学校に行かない- 相沢沙呼 2014/06/28 12:07
今時の中学生の生きにくさを描いた作品。
彼女たち(主人公は全員女の子なのです)の心模様を描いた物語であり、ミステリではありません。
しんみりと共感できるところもあったり、「プリーツ・カースト」のような、ちょっと意外な着眼点から進む話もあったりして、興味深かったです。
表題作や「好きな人のいない教室」のような〈まっすぐ〉で〈ひたむき〉な作品もあれば、「プリーツ・カースト」や「放課後のピント合わせ」みたいな、ちょっとひねくれた作品もあり、誰でも、どこか同調できる部分があるのではないでしょうか。

ただ、これは、(ミステリ作家の作品とはいえ)ミステリではないです。青春小説です。
青春小説としての出来については文句ないのですが、このサイトは「ミステリの祭典」であるため、野暮を承知でミステリとして見た本作についても言及しておきましょう。
ええ、ミステリでないとはいえ、鮎川賞受賞者の相沢先生の作ですから、一応、「らしい」仕掛けは用意されていました。全編を通して読んだ後、「へえ~」と思いました。綺麗につなげたな、と。

こういう作品って、結構需要あると思うんですがね。できれば、男の子が主人公の話も読んでみたかったかな。
そのうち、同系列の作品が出版されたらいいなあと夢想しております。

No.127 7点 りら荘事件- 鮎川哲也 2014/06/04 22:05
真相の意外性・全編に張り巡らされた仕掛けともに冴えていて、確かに「傑作」と呼ばれるに相応しい作品でしょう。細部に凝っていて、解決編で何度も膝を叩きたくなるような展開が登場しました。
この作品の美点についてはもう私がどうこう言うようなことではないので、個人的に気になったところを挙げておきましょう(ちょっと難癖臭いけど)。



(以下、ネタバレ気味)
・動機が弱い。また、犯行を隠蔽する目的の犯行のほうが結果的に多くなっているため、あまりドラマ性が感じられない。
・松平殺しの前後で色々と活躍してたこの人なら、こんな危なげな方法じゃなくて、他のトリックでも犯行を遂行できそうな気が……。
・園田花が殺害される理由となったアレの移動の理由が、よく分からない。創元推理文庫版の解説で佳多山氏が解釈を与えているけれど、正直苦しい(笑)
・あの人物が後に殺害されることが早い段階で地の文で書かれているのは、ミスディレクションなんでしょうけど、事件が進行するにつれて私の中では「何でこの人生きているんだ」となってきたので、これはなくても良かったような気がする。

……と、欠点ばかりをあげつらってきましたが、最初にも書いた通りこれは傑作だと思うし、とても好きな作品なんですよ。ハヤカワミステリ文庫の『Xの悲劇』解説で新保博久氏が書かれていたことですが、ディテールの瑕疵が目につくのは、その作品が優れていることの所以だということでしょう。

No.126 6点 イニシエーションラブ- 乾 くるみ 2014/05/05 11:11
うーん、普通……。
トリックはなかなか手が込んでるけど、序盤で何となく見えてくるものもあるし、凄い驚きは無かったかな。
やっぱり、事件も起きないしそもそもミステリではないから、いくら鮮やかな演出をしても、トリックの仕掛けどころがちまちましたものになるのは仕方ないし、必然的に驚きも小さくなる。
まあ、スパイスの効いた恋愛小説としてなら、完成度は高いかな、と。

No.125 5点 恐怖の研究- エラリイ・クイーン 2014/04/27 19:09
うーん、雑だな……。
犯人を指摘するための論理的手がかりが皆無に等しく、クイーンの小説としての魅力に乏しい。
唐突に真相が提示され、事件の背景が殆ど語られない点は、ホームズ物としての面白さにも欠けている、と言える。
台詞が多くて、軽くて、さくさくと読めて……。登場人物のかけあいとか、情景描写とかには、どことなくコリン・デクスターの作品を思わせる雰囲気が漂っていたかな。

全体的に説明不足で、消化不良になる。扱っている題材自体は魅力的なのに……「軽い」の一言に尽きる。

No.124 7点 風ヶ丘五十円玉祭りの謎- 青崎有吾 2014/04/23 21:29
〈平成のクイーン〉が日常の謎に挑戦! ……ということでしたが、やはり日常の謎ものは従来の本格ミステリと違い、推理を「これ以外ありえない」というレベルまで押し上げるのが難しいので、この作者の持ち味が十二分に生かされているとは言い難いでしょう。
この短編集の中でベストを選ぶなら、表題作でしょうか。次いで、裏染天馬の妹・鏡華の推理が堪能できる「その花瓶にご注意を」。

まず表題作の魅力は、ある人物が推理した、なかなかに納得できる〈別解〉を天馬の推理で打ち消す場面。その仮説自体も十分面白いものなのですが、それを否定する推理までも用意しているのが素晴らしい。この点は、『水族館の殺人』でも作者が見せてくれた匠の技ですね。
意外なワトソン役が登場し、ツイストの効いたオチがある「その花瓶にご注意を」も見事。細やかな伏線を拾い集める手際が光ります。
圧倒的に少ないデータから犯人像を緻密に描く「もう一色選べる丼」も佳作。「針宮理恵子のサードインパクト」は、ミステリ仕立ての青春小説という印象ですが、こういう趣向も面白い。
「天使たちの残暑見舞い」は、やや突拍子もない真相ですが、状況設定の巧みさで、無理矢理感は回避できていると思います。

まあ明らかに次回作への布石だと思われるくだりもあり(次の館はもう決まったようなものですね)、裏染天馬を巡る謎も少しづつ解かれているので、シリーズのファンは絶対に抑えるべき一冊と言えるでしょう。
ミステリとしても、クイーン風推理からは残念ながら路線変更されているのですが、見るべきものは多いと思われます。

No.123 5点 養鶏場の殺人/火口箱- ミネット・ウォルターズ 2014/04/20 15:18
この中編集は、「養鶏場の殺人」は実話をもとにしたクライム・ノヴェル、「火口箱」は社会派風の味わいがある本格ミステリとなっています。
どちらも楽しめましたが、どちらかというと「養鶏場~」のほうが面白かったです。最初から結末は分かっているのですが、ルース・レンデルの「ロウフィールド館の殺人」を読んだときにも感じたような、独特のサスペンスが生まれていて、リーダビリティがありました。
「火口箱」は、ミステリ的には少し弱いと感じました。社会派としても、結末のツイストのかけ方が災いして、主題を見失ってしまった感が。少々すっきりしなかった。

けれどまあ、触れこみ通り、「ウォルターズ入門編」としては良い本だと思います。

No.122 7点 パズル崩壊- 法月綸太郎 2014/04/03 09:30
この短編集は「普通でない」「風変わりな」作品が並んでいますが、用いられているトリックなどは、「普通の」推理小説とあまり変わりがないように思います。
たとえば「重ねて二つ」は状況の作り方がラフスケッチのような風情ですが、トリック自体は確かに〈奇想〉で、もっと長い作品でも通用するネタのでしょう。
非ミステリっぽい「シャドウ・プレイ」も、逆説的で盲点を突いた結末は、まさに正統派ミステリのアイディア。あえて構成を従来のものから崩している、というのが正しい。
「カット・アウト」のホワイダニットも、普通の法月シリーズで短編化できそうなネタで……。

というふうに本作は、「普通のミステリのネタ」をあえて崩した、壊した作品集と言えるでしょう。普通ミステリ的解釈が難しそうなのは「ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」くらいでしょうか。けれどこの〈密室トリック〉は、リュウ・アーチャーものへの批評性が感じられます。『ウィチャリー家の女』を読んだときに、どうもこのアーチャー探偵のキャラが掴めなかったのですが、なるほどそういうふうに捉えられるのですね。

(余談ですが、書きかけ長編の第一章である「……GALLONS OF RUBBING ALCOHOL FLOW THROUGH THE STRIP」の文章はカッコいいですね。まあ最早、99%長編化されないでしょうが、いずれ何らかの形で続きを読んでみたいです)

No.121 6点 殺人鬼- 綾辻行人 2014/03/29 16:09
ホラーではあるけれど、決して怖くはない。ただひたすらに残虐で、気持ち悪い。胸が悪くなる。
ミステリ的な〈仕掛け〉は、たいへん親切な伏線がちりばめられているため、うっすらと予想できなくもない。
ただ、〈殺人鬼〉の正体に関するある点に関しては、ある手法で巧みに真相が隠されているため、全く気づけずに驚けた。

ただ仕掛けはとてもよくできていたけれど、残虐描写に「やりすぎ」の感があり、あまり高い点数はつけられない。

No.120 7点 理由あって冬に出る- 似鳥鶏 2014/03/11 16:04
ネタは小粒ながらもラストの意外性に富み、更にその後のツイストの掛け方に、本格ミステリ志向らしい感性がほの見えます。
キャラクターも個性的。しかもキャラの個性を強調するかのようなギャグ演出まで実は伏線だったりして、油断ができません。
手掛かりが絶妙に配置されていて、読者にも推理できるようになっています。読みながら挑戦してみるのもよいでしょう。
腑に落ちない点をあげるとすれば、やや突拍子もないエピローグでしょうか。ここに繋げる伏線も張られてはいるのですが。どうしてこうした……?

No.119 4点 眼鏡屋は消えた- 山田彩人 2014/03/06 06:42
ちょっと微妙な雰囲気の作。
記憶喪失であることを隠す主人公という設定なのに、記憶がないまま周囲の人物と会話するとき「適当な言い訳をした」とか「何か理由をつけて」とか地の文で済ませられてしまうので、緊張感もなにもなく、雑な印象。
8年前・11年前の些細な出来事を関係者があまりに記憶しすぎているのも、不自然。人々の不鮮明な記憶の穴を推理で埋めていくのが過去の事件を再捜査するミステリの面白さであるはずだが。
また、推理もあまりに飛躍がすぎる。解決編を読んでいて、現在「仮説」が展開されているのか、「正しい推理」が展開されているのかが分からなくなる。可能性の一つをあげて、「それなら辻褄があう」ということで(別解を打ち消すことなく)話を先へ先へ進めるのは、推理なのだろうか?
リーダビリティ抜群の筆致という惹句だけれど、一ページあたりの文字数が多く、数ページおきに同じ情報が何度も繰り返されるので、「もう分かったよ」という気になり、決して読みやすくはない。

良かった点を挙げると、24章で発見される事実は、面白い発想だと思った(ただし、そこでの「繋がった感」がありすぎて、以降で明かされる真相が、大したことなく思えてしまうのだが)。
また、藤野千絵殴打事件に纏わる真相だけは、それなりに納得できた。

No.118 6点 虹果て村の秘密- 有栖川有栖 2014/02/07 18:10
容疑者も少ないし、犯人は当てやすいです。
密室は、トリック自体は秀介が言うように初歩的なものですが、「なぜ密室にしたのか」の論理が効いています。
ただ、六章まではやや単調な印象でした。
(それにしても、警察官が二人だけとはいえ、完全に警察立場ないな……これ)

No.117 8点 折れた竜骨- 米澤穂信 2014/01/27 20:38
非常に意外な展開が多く盛り込まれているので、誰でも一か所くらいは驚けるだろう、という本格ファン垂涎の品。
「この世界でしかできないロジック」に酔いました。やや読者には飛躍が感じられる部分もないではありませんでしたが、ロジックそのものに意外性が仕掛けられていたりして、純粋に楽しめます。
推理部分以外での見どころといえば、なんといってもクライマックス近くの激戦シーン。エンタテインメント性豊かな小説を読む愉しみが詰まっている場面です(しかもそこにすら様々な伏線が仕込まれていて油断できない)。

No.116 7点 キングを探せ- 法月綸太郎 2014/01/13 10:59
派手などんでん返しとかはないですが、読者が事実だと錯覚していたことを一つ一つひっくり返していくところに、職人的技巧が光っています。
珍しく「読者だけに仕掛けられた罠」らしきものもあり、ちょっと専門的な知識が必要になるのですが、普通に上手いと思いました。

あと、ミステリ部分とは関係ないですが、非常に現代の世情に忠実な話だということに驚きました。
短編『現場から生中継』など、以前からタイムリーなネタや民衆感情を題材にした作品はありましたが、今回は特に顕著。
犯人の計画に電子マネーが織り込まれていたり、犯人の独白部分にネットスラングが使われていたり。
一番驚いたのは法月警視が「自宅警備員」と言ったところですが。

No.115 7点 最後の女- エラリイ・クイーン 2014/01/06 20:49
フーダニットとしては、無難な着地点。
現場を見たエラリイが引っかかっていた〈何か〉も、割と容易に見当がつけられます。
三つの衣類の論理は、初期作品ほどの厳密さにはかけるものの、なかなかレベルが高いです。
けれどそれよりも、この作品で一番興味深いのは、犯人の性格設定、その〈正体〉でしょう。こういうところに意外性を求めるのは、後期クイーンらしいですね。
派手さは全くないですが、手ごろな長さでそれなりに楽しめました。

No.114 8点 二の悲劇- 法月綸太郎 2013/12/28 21:41
ページあたりの文字数が多く、多少の読みにくさはあったものの、飽かずに読めました。二人称の特性が生かされていたと思います。
尋常じゃないほどの〈悲劇〉で、主要人物が漏れなく不幸になるのですが、不快感はあまり無かったです。
誤解とすれ違いが主軸ですが、いつものパズラーの手法に上手く絡められていて、ラブストーリーとしても上出来。
『三の悲劇』が読みたいところですが、本作の発表から二十年が経とうとしている今では、無理なのでしょうか。

No.113 7点 雪密室- 法月綸太郎 2013/12/25 20:02
この時期になると読み返したくなる作品。
多分、このかたの作品の中で最も本格度が高いもの。
トリックも、目をみはるような斬新さは無いながらも、巧みで納得のできるもの。
フーダニットとしても貫き通していて、好感が持てる。
ただ、やっぱり、非常に暗い……。

No.112 6点 ノックス・マシン- 法月綸太郎 2013/12/19 19:11
読んでて疲れる!!!(笑)
『ノックス・マシン』は辛うじてついていけたけれど、2のほうはかなり混乱したし、『バベルの牢獄』に至っては意地で読み通した感じ。東野圭吾さんの短編『超・理系殺人事件』を思い出した……。
理系の知識に疎いので、SF的なネタは全然理解できず。
ただ、書物の電子化を進めていくことには懐疑派なので、この〈未来図〉にはちょっと複雑な思いをさせられたり。
『引き立て役倶楽部の陰謀』だけは純粋に楽しめた。まあ全然知らないワトスン役もいたけど。

No.111 6点 犯罪カレンダー (7月~12月)- エラリイ・クイーン 2013/12/15 21:21
傑作揃いです。
特に、『殺された猫』は素晴らしい。伏線の仕込み方が巧みで、フーダニットとしても、一番切り詰められていて魅力的。
『クリスマスと人形』も、クイーンが怪盗ものを描いた稀有な作品ということで興味が沸く。
『ものをいう壜』は全体的にユーモラスですが、ギャグらしきシーンにも実は重要な意味があったというような伏線の仕込みが、一番冴えています。

No.110 6点 犯罪カレンダー (1月~6月)- エラリイ・クイーン 2013/12/15 21:14
全体的に見て、7~12月のほうが粒がそろっているという印象です。
唯一、『くすり指の秘密』には「おっ」と思わせられました。7~12月の解説で、発表時期にも関わらず〈苦悩する名探偵〉のモチーフが現れていないことが指摘されていましたが、この話のオチは、〈名探偵〉としてのエラリーの行動が空回りする、〈名探偵〉の風刺のような話になっていて、興味深かったです。

No.109 5点 Another  エピソードS- 綾辻行人 2013/12/09 17:44
これまでに私が読んだ綾辻作品と比べると、ちょっと残念な出来という印象。
意外な真相も、途中では気づけなかったけれど、大胆に仕掛けすぎていて、却って驚きが少なかったです。
シリーズものとしても、前回出た登場人物でまともに活躍するのは鳴だけで残念。前作のネタバレにならないようにそうしたのかな、とも思えたけれど、最終章でしっかりと前作の核心がネタバレされていて、一体何だったのかと首を傾げました。

けれど、この作品は『暗闇の囁き』と主題を共有しているようなところもあり、『暗闇……』はとても好きな作品なので、こういった〈描き方〉もありか、と感心されられたりもしました。
綾辻小説には〈少年少女〉のモチーフが頻出しますが、今作では想という少年がそれなのでしょう。真相を知ると彼はちょっと可哀想なのですが、とてもいい子だと思います。この方の書く小説って、子供はどこまでも罪のない存在として描かれていますね。
やりきれない話ですが、そこまで悪い人間が出てこないので、読後感は悪くないです。

No.108 6点 ウィチャリー家の女- ロス・マクドナルド 2013/11/09 23:04
会話主体の文章で、すらすら読めた。
重要な部分も全て会話で済ませ、会話の流れに主人公の独白や語り手の様子がほとんど割り込まない。
だからリーダビリティはあるのだけれど、トーンを変えて濃く描写すべき部分が浮いているというか、地の文で読者を煽るべきところが軽く完了しすぎているうらみがあった。
ハードボイルドファンでない私は、新本格作家である法月綸太郎氏が選んだ感涙ミステリベスト5に本作があったことから手に取ったのだが、文章の流れが良すぎるためか、感涙どころがよく分からなかった。
もっと酷い結末を想定していたが、〈救い〉も多分に描かれており、それほど後味悪くなく本を閉じられた。

No.107 7点 名探偵の証明- 市川哲也 2013/10/20 00:04
密室殺人の解明の時点では、あまりにも真相が単純にすぎて拍子抜けしたけれど、次第に事件の奥の深さが明かされていきなるほど、と唸らせられます。
ただ、ラストの意外性はあるものの伏線が少なく、論理的に真相を推理するのはハッキリ言って不可能でしょう。
ただ設定自体がすごく面白く、選評にもある相棒刑事の悲哀には感涙。
ところどころ日本語が変でしたが、それはまあ許容範囲。
シリーズ化はほぼ不可能と思える結末ですが、この方は凄いストーリーテラーだと思うので、次回作に期待。

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