斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.71点 採点数:763件

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採点傾向好きな作家

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No.763 8点 誰にも出来る殺人- 山田風太郎 2017/11/16 01:01
ケレン味に、ジットリ情緒が纏わりつくをカラッと揚げて、永遠の新感覚。こりゃチョっとした本格。人気を集めるも納得だね。

途中からミステリってより物語の面白さが引っ張り過ぎるきらいはありますが、、悪いモンじゃありません。

No.762 6点 アルキメデスは手を汚さない- 小峰元 2017/11/11 19:00
義父より借りパク積読しておった一冊。読前の浅はかな憶測を裏切る、分厚く丁寧なミステリ内容の序盤~中盤にどっぷり魅了された。人間ドラマとしてもなかなかシビレる。最終章の独白羅列による構成が素敵。だけどね、その最終章の役割が、既に看破ないし推理されたトリックやら犯人やら事件全体像のおさらいにほぼ過ぎないものになっちゃっててね、わざわざページ数喰ってんだから更にもう一押し二捻りの真相深掘り、或いはロジック構築のミッシングリンク発表でもいいですよ、何らかの付加価値展開で驚かせて欲しかったねえ。でも読中とにかく愉しかったからね。7に迫る6点で余裕の合格。思わせぶりな表題の意味する所が、あまり有機的に真相の中核を貫いていないのは少し残念。 高安(たかやす)関と同じ読みと思われる名前の重要登場人物が出て来るので、その人が登場するたびに高安関のテッポウ姿をいちいち連想せずに読み進める事も重要です。「俺の若い頃と歌謡曲は一向に進歩しておらん」なる当時の中年刑事のつぶやきには笑いました(波止場とか女の涙とかそんなんばっか、ってことらしい)。 ところで田中はなかなか面白い奴だ。演じるなら若造りで山田孝之だな。主役喰うべな。

No.761 4点 透明な同伴者- 鮎川哲也 2017/11/08 00:53
透明な同伴者 /写楽が見ていた /笑う鴉 /首 /パットはシャム猫の名 /あて逃げ
(集英社文庫)

軽い軽い、なかなかに弱っちィ倒叙ミステリ短篇集。四十年代後半モノ中心。自分は鮎川さんの文章世界が好きだから読めるけど、人にはとても薦められない。最後の「あて逃げ」が物語としてちょっと面白いくらい、でもミステリ興味は薄い薄い。「写楽」の指紋や「パット」の遺書エピソードあたり、もう二捻りの余地は充分にあるでしょう、って思うんだけど。なんでそこでチャンチャンで終らせちゃうの、ズッコケるよ~。「あて逃げ」だってこんだけ面白いシチュエーションなんだから更に磨きを掛けりゃ相当の傑作に化けられたろうに。。んで言及しなかった残りの三作はどう捻っても叩いてもどうしようも無さそうなポンコツ共。 ま、こんな鮎川さんも嫌いじゃないさ。

No.760 7点 死者の木霊- 内田康夫 2017/11/07 01:25
振り返れば、真犯人は見え透いているし、では早々に犯人決め打ちで強固なアリバイ粉砕に心血を注ぐのかと言えばそんなことは無い、アリバイトリックの核心は単純極まりない●●だし、主役の若刑事が犯人に気付くタイミングもじれったいほど遅い。なのに、きめ細やかさと胆力とを併せ持つ流石の筆力にほだされて一片の退屈も無く、心地良い読書体験を完遂出来ました。 やはり真髄はバランスですね。 何気にいっぷう変わった人物造形配置のたくらみも見事です(たぶん本作充実の肝はそこ)。 もう少し彼の初期作を読んでみたいと思わせる、人気作家内田康夫のデビュー作でした。

No.759 5点 傾いたローソク- E・S・ガードナー 2017/11/04 19:42
仄かな社会派要素を匂わす”言えない事情”の中にアリバイ乃至逆アリバイ(とは違うか?)の興味が芬々。会話の粋もジャスト・イット。メイスンとデラの関係がS&Mっぽくなるシーンもあったりして(←誤解を招く書き方ですが)。犯行現場と目されるボート内の細やかな物証捌きは宇宙(の一画)規模のダイナミズムがバックボーンとなり(何しろ地球と月が相手だ)、裁判所と犯行現場を股にかけ実にプラグマティックなロジックと直感のマリアージュ劇を見せてくれるわけですが。。。。

時折トライしてみるペリー・メイスン、やっと、初めて、出だしから興味深く中盤を面白く読み進める事が出来ました。結末の真相暴露だけ、微妙に期待ほど踏み込み深くなく、ちょぃとササッと通り過ぎて行きました。いっそクイーンばりに一本の”傾いたローソク”から超絶論理演算をスルスルと紡ぎ出してくれて構わなかったのに。。ともあれ、個人的に初めてのメイスン(というかガードナー)合格点(5.0点超え、5.3程度)です。まだほんの数作しか手を付けてませんけどね。

No.758 5点 犯罪交叉点- アンソロジー(国内編集者) 2017/11/03 01:03
カサックの「殺人交叉点」と間違えちゃいそうですが、こちらは良い意味でぐっと緩めの鉄道ミステリ集。編者は鮎川哲也。

急行しろやま(中町信) /歪んだ直線(麓昌平) /殺意の証言(二条節夫) /急行十三時間(甲賀三郎) /鬼(江戸川乱歩) /轢死経験者(永瀬三吾)
《徳間文庫》

たしか甲賀さんの作でしたかね、夜汽車に乗って紙袋入りのピーナツをボリボリするってシーンが妙に忘れられません。

No.757 7点 終着駅- 森村誠一 2017/11/01 04:25
別々に田舎から出て来た女一人と男二人は中央線内で知り合い、新宿駅で別れた。 二年後、男の一人は屍体で見つかり(高層ホテル密室殺人!)、もう一人は行方不明。。 その後も事件は連発、都合五件!!!!! 錯綜する事件の連関性には偶発事項もちょィと目立つが。。 熱い人間ドラマと相当に複雑な謎解き興味が堂々ぶつかり合った力作である事は確か。 機会があったら、読んでみるといい。

No.756 8点 セカンド・ラブ- 乾 くるみ 2017/10/29 15:05
そりゃ私も読み返しましたよ、アノ部分。。(セックスシーンじゃないよw)  だけど、ァんだよそんダケのオチかよ。。。と悪態ツイてからよぉく考えてみたら、フィードバック回路になってんじゃねえか。。(だからこそ最終章、古風なほど丁寧なドンデン返しの説明を。。。)イッセーさんやのりちゃんさんがその様な主旨の評を書かれる意味がよおく分かりました。こりゃ確かに、「イニシ」より悪どく手が込んでるかも知れない。  ※これ言うと微妙にネタバレ&逆ネタバレかもですが。。。。「イニシ」が仮に日常の謎・叙述ミステリだとしても「セカン」の方は日常の域からはみ出してるってか、はみ出してるかも知れないってか、、、(あのオチの事じゃないよ)、、そこにこそ、本作の怖ろしい秘密が蠢いていますよね。。。。ヤバそうだなあ、乾さんって。もっと読もっと。

そうそう本作は「イニシ」に較べると表面的によりミステリっぽいというか、割と早い段階からミステリらしい怪しいエピソードが出て来たり、積極的に疑惑を生むストーリーの流れになっていたりします。ので、恋愛小説なんてカッタリーという人にもさほど苦にはならないかも。

でもやはり私は、まるで「叙述トリック版 黒いトランク」とでも呼びたくなるほど緻密で美しい企みが網羅された「イニシエーション・ラブ」に軍配を上げます。それでなお「セカンド・ラブ」は素晴らしい作品だと思います。

ところで本作、こう見えて意外と戦後の名作「●青殺人事件」を思わせる所があったりしますよね。。

No.755 7点 少年探偵ブラウン- ドナルド・J・ソボル 2017/10/28 09:05
ジュニア向けオリジナル短篇ミステリの代名詞であり金字塔である本シリーズはThe Rolling Stonesと同期の’63デビュー。

主人公、エンサイクロピディア(百科事典=博学の象徴)ことリロイ(ロイ)・ブラウンは磯野カツ夫と同じ小学五年生だが学業成績や性向はずいぶん違う。そのパパはフロリダ州アイダヴィルなる小地方都市の警察署長。ママはたぶん美人。相棒のようで用心棒のようなガールフレンド、サリー・キンボールは腕っぷし自慢の大柄美少女。仲間にチャーリー・スチュアートやハーブ・スタイン(なんか名前が格好いい)等々。少し年上の不良グループ「タイガーズ」を率いる敵役は陰険系いじめっ子のバグズ・ミーニー(日本語で言うと「陰険クソ野郎」みたいな酷い名前。この名のせいでグレたんでなかろうか!)はいつも最後はグループともどもリロイの頭脳とサリーの腕力にとっちめられる運命。しかし本当の不良は、より年長のハイスクールドロップアウト、いつもインチキ商売でガキどもから金を巻き上げようと企んでは結局エンサイクロピディアに窘(たしな)められるウィルフォード・ウィギンズ、こいつはヤヴァい、だが魅力的だ。マニア向けでは「タイガーズ」をビビらせる年上の「ライオンズ」なる半グレ(?)集団も稀に登場(だがやはりリロイの詭計に討たれて退散)。んでパパが警察から持ち帰った未解決事件や、身の回りで起きた不可解な現象やらバグズの陰謀やらウィルフォードのセコい投資詐欺やらを次々暴きに暴いて、、まァなんともカラフルに愉しいお話がいっぱいなのですよ。

謎と解決の核心は推理クイズ的ちょっとした知識頼みのものがほとんどなわけですが、それがそのまま少年少女の知識欲に訴えるという側面も見逃せず、また何より超若い読者を「謎と謎解き」の魅力の前に晒すという社会的使命(?)に真正面から応えんとするその心意気や如何! おっといつもの癖で美辞麗句でした。

便宜上、シリーズ全体(まだ続いてんのかも知んないが)を評価対象と致しました。(一巻ずつ評したいというコアなファンの方は別途是非どうぞ。私も強いて言えば”ENCYCLOPEDIA SAVES THE DAY”が特に好きです。)

同著者「2分間ミステリ」の評でも同様のこと書きましたが、本作の原書群も英語学習のテキストに最適! 私も、幼少の頃に翻訳も読みましたが、むしろいい大人になってから原典で読んだほうの比重が高いです。

蛇足:
Roy Brownというと旧いR&Bというかロッキンブルーズというかジャンプというか、とにかくイカした音楽の人と同姓同名でもあるです。

No.754 5点 殺人者登場- ナイオ・マーシュ 2017/10/25 21:38
物語は「意外な被害者」から発動! ここでグイッとつかまれたんだが、そこ以外は全般的に古式ゆかしくも軽~ぃ調子でぶっ通し、最後まで使命感(俺には、日本で埋もれたこの小説を掘り返す義務がある! 的な)も無く、ほんのわずかな倦怠を引き摺りながらもスタスタ読み終わってしまいましたよ、ってな感じで。詰まらなくはないですだよ。たしかに犯人設定は意外っちゃ意外なんだが、その暴露に行き着くまでの経緯ってか伏線なりレッドヘリングなりロジックってか何だか、あと最後に犯人に仕掛られけたトラップもね、グッと来ないんですよ、浅くて、ちっとも驚けないしミステリ的な感動もないんだもん。。まあその分ちょっとしたメロドラマ要素で当時の読者のご機嫌を伺ったってとこか。そうそう、ユーモアはやっぱり悪くないですよ! んだども現代日本のミステリ者に必読って事もなかろう、が、前述した「被害者の意外性」に限って言えば個人的に読んで良かったと思います。そいや「目つきに関する証言」だったか、あれはちょっとグッと来たな。私が読んだのは大叔父から譲り受けた旧ゥ~い新潮文庫(第二版、白帯紛失)なのですが、奥付を見ると初版からの間に結構な年月が経っており、当時(昭和三十年代)からあんまり日本人受けしてなかった事が偲ばれます。訳が旧過ぎるんでしょうが「シャネル第五号」ってのは笑いました。なんかマリリンとコント55号が時空を超えてコラボしてるみたいで。 「辻褄の合わない調子で鳴り止む電話のベル」ってのも妙に心に残った訳文。大久保康雄。

しつこいけど、この犯人設定、たとえば調子いい時のアガサだったら、大き過ぎて見えないくらいの豪快なツイストを噛ませて見事に最後まで目くらまし、いやポイントは単に真犯人に気付く/気付かないじゃなくて、如何に真犯人暴露に深みを見せるか、その結果として驚かせるか、そこんとこ上手くやって傑作に仕上げてたんじゃないかな、なんてねえ。まあ本作はジャンル的に軽本格で、そんな重い内容を求める事も無いんでしょう。ただ私の個人的好みにジャストフィットと行かないだけ。

No.753 7点 化人幻戯- 江戸川乱歩 2017/10/21 10:47
まさか、痛恨の出落ちネタバレかと浅はかにも疑えば疑える、このタイトルと第一の事件との相関関係。。へっへっへっ、いゃあ流石に奥行きある物語の全体像。一方で、真犯人を隠匿しようとしてんのかしてないのか、特にナウなヤングにとっては犯人バレバレもいいとこであろう上に「おぃおぃもうバラすのかよ」ってなストーリー配分の唐突感もあるかも知れませんが、このエログロに走らない短い戦後長篇には読者を徐々に酩酊へと誘う落ち着いた妖力があります。またトリックの都合上(!)空間的拡がりと豊かな空気感の終始漂うのが素敵。 ‘ひとたまりもない。。。’ 「抑えつけ」のシーン、アンフォゲッタブルだね(実はこれ、ある部分での●●●ィ●●●●ンになってるわけか)。。
そして、犯人最後のセリフとそれに続く最後の二文、素晴らしく心に刻印される。 「犯人像」ってやつですか。。。。。

No.752 8点 赤ひげ診療譚- 山本周五郎 2017/10/20 00:14
周五郎のミステリというと「あの長篇」と「あのシリーズ短篇集」が先ずは挙げられますが、ところがどうして、この有名短篇集の、少なくとも大半はミステリ範疇です(ストレートな推理小説も含む)。 ご存知「赤ひげ」なる町医者が中心で活躍する連作ですが、あつかう病の多くは心に起因する病。となれば物語の経緯はどうしたってミステリの側に寄り添ってしまうのが理(ことわり)というもの。体の病の話でも、何らかの形で「心の謎」を解きほぐすハイライトシーンが多い。優しさと厳しさに包まれた、現代(発表当時&ナウの両方)に否応無く通じてしまうエヴァグリーンな社会問題と堂々斬りあう重厚な社会派小説(ほぼミステリ)として幅広く読まれて欲しい銘品です。 

狂女の話 /駆込み訴え /むじな長屋 /三度目の正直 /徒労に賭ける /鶯ばか /おくめ殺し /氷の下の芽

No.751 7点 世界から猫が消えたなら- 川村元気 2017/10/18 22:17
なかなかの感動ある物語、そこへ多少なりミステリ要素が見える一冊となれば当サイトで評せずにはいられません。とは言えその人間関係ミステリ要素 .. 余命わずかの主人公(三十歳の男)は、何故父親と疎遠なままなのか? .. は例えば「災厄の町」なんかに較べたら極めて希薄な、霞のようなものではありますが..

特に前半、何となく断捨離だかタイムマネジメントだかを説く寓話のような感触がありました。それは、本作が小説としてユルユルの構造・細部を露呈しているにも関らず、作者が訴えたい主旨であろう人生指南めいた何かがくっきり提示されている所に、要因がありそうです。。要するに「うざい」と評されかねない要素が芬々なわけですが、どこかで上手にバランスを取って素敵な読み物に仕上げていると思いますね。作者は若き映画プロデューサー。

‘母さん。。。。。。。’ ‘よりによってこんな時に。。。’   父よ。。

頭の中、Stevie B ’The Postman Song a/k/a/ Because I Love You’が終局あたりから流れて来ました。(主人公は郵便配達員)  余韻と言うには拡がりの豊か過ぎるエンディングがたまらなく良いです。

No.750 7点 天国からの銃弾- 島田荘司 2017/10/15 12:04
中篇力作x3

ドアX
冒頭は森村誠一風演説がセックス領域に入り込み過ぎたかの様な上等パロディの様相。その部分含み、等比級数でも放物線でもなく優しい比例直線でむずむず増殖してくれるイヤミス濃度。この、加速を抑えつけようとするかの島荘の優しさ表出には泣ける。こんだけごってり激烈粘着心理劇の末にまさかの大物理現象で〆る気なんじゃ、、と怖れていたら。。 7.2点

首都高速の亡霊
“それでは殺意を悟られる。。。””なんと敏感な奴だ。。””どちらかと言えば善人。。。” バカかこぃつわ バカか、こぃっ,, ちっともイヤにならなぃイヤミス+ドタバタ+豪快物理+偶然+複数視点+ちょィとした怪談風味。しかし最後の「誰も損をしなかった」は大嘘もいいとこ、というか、本作のプチ社会派サイド主題への当てこすりか。 6.8点

表題作
数学的興味が最強の悲しみを削ぎ溶かし続けるかのような、解決シーン滑り出しには何とも本格ミステリ独特の感動があり、泣けた。 謎も熱く、持続する。 日常の謎然としたオープニングからまさかの●●展開、更には盲点を衝く人物背景の暴露、と意外性に満ち満ちた本格興味炸裂の中篇大作。アクションシーンもあるぞ(笑)! 8.3点

通しテーマは「老人の逞しさ」かも知れん。

No.749 8点 災厄の町- エラリイ・クイーン 2017/10/07 12:16
切ない話だ。。。。その切なさの理由は本作のパズラー核心部分が握っている。素敵じゃないか。それは a touch of “アガサへの対抗案”めいたもの,, 最高にナチュラルな微笑みをもたらすオープニングシーンから、哀しくも明るさに取り縋る最後の台詞まで、私ァ好きだ。

事象は毒殺未遂と毒殺。後者は目標外しとも推測され、更にはもう二人があの世行き。。 終盤に近づくにつれ,行く先の見えなさが心地良過ぎて多幸感にさえ包まれる。 大きく拡がった香りを備えた切実な予感だ。。。。

明かされた真相(物語の様相一変でガツンと来ます)によれば、、 或る夫婦の現在の●●が実は意外な●●●●で、と「しこり」を刻印する部分がある。だからこそ一層切ないんでしょう。そこをスッキリさせちゃったら同じ反転劇でも途端にお涙頂戴なものになってしまいそう。

ところで、「登場人物表」に載せる人、もっとふんだんでいいのに(いにしへのポケミスはもっと少なかったから新訳版はこれでもましだ)。 アルバータとか、不動産屋ペティグルー、保険屋ケチャム、カーラッティにオールセン、老詩人(?)アンダーソンだって重要だよ。純ミステリ的には違うけど、ドラマの演出として最高に記憶に残る人でしょう?

No.748 7点 特務工作員01- 大藪春彦 2017/10/05 00:24
公務員でルパン3世+ゴルゴ13(=ルルゴン16)みたいな男が主人公。ナイジョー(内情)こと内閣情報室付特務工作員の中でもピカイチの実力を持つ01番の石坂晃が命を受け國際レヴェルで起こる火急の厄介ごとを次々に斬りまくる、というか撃ちまくる殺しまくるヤリまくる(三番目のはまァ控えめ)のだが、ただ単純に国家武力の先鋒となって問題鎮圧する様を描くのでなく、そこには毎回どうにも嫌らしい釈然としないしこりが空中に漂い、最後にはそのしこりもミステリ的には解き明かされ人間的には依然わだかまりを残したまま。。と苦く激しい魅力たっぷりの一冊。  

第一話 回想録争奪作戦
第二話 原子力空母粉砕作戦

私の読んだ旧い双葉新書(ひょーっとしてプレミア付いてねえべが)には『長編非情アクション』なる素敵な肩書きが付けられています、が実際には六話の短篇連作、但し六話全体通しての大ストーリーも流れているので肩書きも全くの嘘ではない(そのストーリーは言わずにおこう)。 「非情」ってのは情容赦無い殺しっぷりの事か(但し不必要に痛めつける事はしない。必要な時はやるけど)。ハードボイルドの意味での「非情」は全く無く、主人公が狙われ、追い詰められ、反撃し、見事に敵を殲滅するまでの心情一切が赤裸裸に描かれる類の迫真力で勝負。描かれるのは心情のみならず、大藪印の薀蓄波状総攻撃(銃器、肉体、各種ヴィークル等々)もまた最高に興味津々の描写でリアリティたっぷりに晒される。最高だ。

第三話 政府貯蔵金塊強奪作戦
第四話 ジョンソン燃料基地爆破作戦

んでやっぱり、飽くまでミステリ小説として読んで、そのオマケ(アクションだの薀蓄だの國際政治の暴れっぷりだの)の大盤振舞にも圧倒される、ってのが幸せな読み方だなあ、自分としては。

第五話 機動隊殲滅作戦
第六話 テレビ塔爆破作戦

No.747 8点 西郷札- 松本清張 2017/09/30 08:16
至宝「松本清張(初期)傑作短編集」の一角。 新潮文庫、時代小説篇その一。

「推理篇」と大きく違わない「現代篇」に較べればこちらは非ミステリの様相が濃い。とは言えその面白さの核心は何れにも共通の「清張DNA」に在り、陰鬱の嵐に晒されるダーク・サスペンスの基調は揺るがない。。のかと思えばそれなりにカラッと明るい爽快さを放つのもあり、、

犯罪興味をミステリ外の方向へ強烈に引っ張ったデビュー作「西郷札」、逃亡サスペンスの痛さが突き抜け歴史の転換を形成する「梟示抄」、視点の機微が冴える残酷ヒューマン・サスペンス「啾々吟」、事は深刻ながらどこか可笑しみのあるドタバタ劇「権妻」、何故かトボけた明るさ残す嫉妬の経緯イヤミス「噂始末」、際どい所で大胆な救いを見せる悲喜劇「面貌」、追い詰められた自暴自棄イヤミス「酒井の刃傷」、、クライム、サスペンス、パッション、ルサンチマン、、熱い熱い親ミステリ要素が沁み通った作品群に大いに組み伏せられたいではないか、まして秋の夜は、諸君!

だけど、最後の「白梅の香」だけはまるで藤沢周平が風呂あがりにパンツ一丁で書いたかのような軽く優しい明朗作で全く清張らしくない! そのくせ本作だけは純粋ミステリ範疇。主人公が性格良いイケメンってのも実に清張らしからぬ設定! 古いクラシック音楽の世界では時々「伝バッハ作曲」なんてのがあって、その中には「どう聴いてもヴィヴァルディあたりの作だろう」と突っ込みたくなるのも多いのですが、まさか本作、その類ではあるまいな?

西郷札 /くるま宿 /梟示抄(きょうじしょう) /啾々吟(しゅうしゅうぎん) /戦国権謀 /権妻 /酒井の刃傷 /二代の殉死 /面貌 /恋情 /噂始末 /白梅の香
(新潮文庫)

No.746 8点 太陽黒点- 山田風太郎 2017/09/27 23:40
意外と通俗。読み易さが面白さにしがみついた。
しかし、最終章は。。。

最終章に至るまでミステリらしくない、との意見が多いのが意外です。海外某作を思わせる各章表題の「死刑○○日前」。これこそ(某作を知る知らぬに関らず)「こりゃミステリだな」と察する大きなヒントとして風太郎氏が敢えて記載したものではなかろうか。 それに、何気に伏線も豊富ですよ(ってそりゃイニシエーションなんとかも同じか)。。。。ここからちょっとネタバレですが。。。。。。。。。。。。普通だったらチョイ役で構わないような某人物の存在感が途中から増し増しになる流れだって、オカシイじゃあァりませんか。。

さてその最終章での真相吐露ですが。。微妙に期待を裏切ったナ。。。。またしばらくネタバレです。。。。。。。。。。。。。。。。一見どうしたって主人公に見える人物が、実は犯人(黒幕)の捨てゴマの一つに過ぎなかった、、ってのはよろしんだけど、小説自体の中心からいきなりポーンと外周部に飛ばされちゃってるってのは、バランス欠いてるような。。あの人を殲滅のターゲットにした理由もなんだか曖昧で、ミステリの旨味無しで被害者が可哀相なだけ。。そのへんの落とし前はっきり付けた上で更なる大きな意外性で攻めて欲しかったナ! まぁ、滅多なことは言えないわけですが。。

とは言え、そこで大きく減点されてなお8点(8.3くらい)付けちゃいます。とにかく「結末にどんな暗黒が待ち受けているんだろう」とワクワクしながらぐいぐい読めてしまうのヨ。だいたい小説そのものが面白いし。

あと、ご指摘の方もやはり多い廣済堂文庫の裏表紙ネタバレ粗筋はちょっと非常識ですね。せっかく良い叢書なのに残念です。 ところで(これ言うとネタバレか?)表表紙の青年はいったい誰。。。

No.745 7点 遠い幻影- 吉村昭 2017/09/22 01:53
私をミステリにして。。 (私を女にして。。 俺を.. 女に。。) そんな幻聴が遠くから届きそうなくらい、あと一歩n’1/4で如何様にもミステリ域に踏み込んでしまぇそうな、だがそこで立ち止まり、霞の中に佇んで終るような筋運びの、、日常のサスペンス短篇集。いや日常というには抉り過ぎる題材ばかりで、、むしろ非犯罪サスペンスと言うべきか。いや、それでいいのか。。。

時折ゾゥ とするような逸話を埋め込んでいるなど、または明らかにヤヴァぃ親族姻族の過去察知など、ミステリのその気にさせる飛び道具さえ所々見出せるんですが。。でもやっぱり敢えて手前で引いたよな美しい小説の数々(本人はそんなあんな意識してない風ですが)。 逆に「これがもし東野圭吾だったら。」とか「宮部みゆきだったら。。」とか(私の場合だと「佐野洋だったら。。。」がいちばん先に来る)、 色んなタイプの作家がミステリとして展開・完結・時に自爆した場合を妄想してみるのも、単に一興と言う以上の趣き深さを提供してくれるのはno doubt steady go でないかと思われます。

ごめん、しゃべり過ぎた。

梅の蕾 /青い星 /ジングルベル /アルバム /光る藻 /父親の旅 /尾行 /夾竹桃 /桜まつり /クルージング /眼 /遠い幻影
(文春文庫)

ともあれ、あのね、美しく、読んで愉しい短篇小説集です。

No.744 8点 赤い指- 東野圭吾 2017/09/20 01:21
加賀刑事、斬れること。偽装工作の諸要素を瞬殺で打ちのめし続ける様子はほどんどユーモラスな域の容赦無さ。それにしても気になる、嗚呼タイトル気になる気になる,, 現物(赤い指)が最初に顔出して直後からは長い潜伏の恫喝が突き上げた。。。その言葉の意味は最後に大化けを果たす。サブプロットいちばんの泣かせ所をも大いに巻き込む立体交差で。

心に残るラストシークエンス、最高のラストシーン。このラストは加賀刑事が「昔から優秀で(正確には’勉強もよく出来て’だったか)」ってのが(シリーズモノとは言え)伏線になってたのか? と思えばちょっとクスッと来る。それすら愛おしい。

終結近くまでは、書き込みは緩いけど構成の巧みさが光る準社会派ミステリ7点相当(6.6くらい)と憶測を働かせたが、最終コーナー一気に本格の本性を現した所で、その熱気にやられて8点(7.8超)にジャンプアップ。その本格魂こそ人間ドラマ感動構築の中心に位置するというのが素晴らしい。 本作、複数の大きな社会問題を、巧みに倒叙パズラーの枠組みで弾けさせた、倒叙応用篇の成功作と思います。

No.743 4点 赤い箱- レックス・スタウト 2017/09/16 08:06
ユーモアなかなか。ドタバタ退屈。真相いまいち。スリルとサスペンス、ありません。 「赤い箱」に纏わるイキサツがさんざ仄めかされた挙句、それですか。。。(最後、小道具としての使われ方はちょっとびっくりだけど) 主役コンビを中心とする掛け合いに、眼の醒めるロジックだとか、斬れる物証だとか、心理探偵専門ならそれなりの心理トリックなんかが絡められたら相乗効果で興味津々の一作にもなりそうだが、そういうのも無いんで、ミステリ部分に限ればただただ古臭いばかりに思えてしまいます。 ただ、やっぱりユーモアは良いね。

No.742 5点 アメリカ探偵作家クラブが選んだミステリBEST100- 事典・ガイド 2017/09/14 01:19
1995年の本。内容詳細については蟷螂の斧さんの書評を御参照いただきたく存じます。
ミステリ総合人気投票トップ100に日本ではプレゼンスの低いトニイ・ヒラーマンがやたらランクインしてるのを見、そうかこれは米国だ、全世界じゃないんだと納得しちゃったりなんかして。

後半、サブジャンル別の実作家エッセイ、これが良い。ハードボイルド篇(スー・グラフトン)と犯罪小説篇(リチャード・コンドン)は、憂愁の犯罪大国アメリカならではのその癒しの効用を高らかに謳い上げる(前者の方は、加えて黄金時代~現代のその役割の変遷を見事に言い当てる)。ユーモアミステリ篇(グレゴリー・マクドナルド)の深く詩的な洞察もおなかに沁みた。

ランキングの話に戻ると、アガサ・ドロシー・ナイオの英国三人娘がやたら幅を利かせているのも印象的でした。(ふた昔以上も前とは言え)現代の米国なのに。

No.741 6点 まどろみ消去- 森博嗣 2017/09/10 10:55
偽幻想、重度おふざけ、お愉しみ。 まるでミズスマシのような気分で読めました。わたしは好きです。 この作家さんについては、難しい学術用語で言うと「逆近親憎悪」みたいな気持ちを抱いているせいか、仮に純粋ミステリの味は薄くともかえってスイスイ引き摺られペラペラ読んでしまうんです。 優しさと、 。。。
ところで、個別にコメントしておきたいのが幾作かございます。 順不同で題名は伏せますが、下記の通り。

某作 9点
これはアツい! 「安易な叙述トリック」のパロディを、ずっしり重みある対抗案で打ち返してやったような快音が響く。好きだ。

某作    1点弱
いちばん普通のミステリなんだろが、真相もオチも詰まらな過ぎ! あれ、オチってのは特に無いんだっけ?? 忘れちゃったよもう。どうでもいいや。だけど思わず噴き出すワンセンテンス有り。そこだけ最高。

某作   7点
本作のおふざけ炸裂はかなりの好感触。ミステリ部分もふざけとるが、ま特には。

某作   5点弱
ゆるゆるながらもやさしいオチ。

某作 8点強
同心円の余韻に頭をまかせ。。。。。。素敵だ。

シリアスなテーマで貫かれていたり、素のままっぽいキャンパス描写だったり、企画性の高いユーモアだったり、実験的フォルムだったり、いつもの感じだったり、そんなアンバランスこそ本作を読む嬉しさの象徴。喩えて言えば個人的にキンクスのアルバム「フェイス・トゥ・フェイス」のような一冊です。

ところでどうでもいい事ですがこの作家さんの場合、人名で「モリオ」って書かれてもほんとは「モリオー(盛り王)」なんじゃないかって疑ってしまいますよね。

No.740 7点 トリック・ゲーム- 事典・ガイド 2017/09/08 01:05
国内外著名ミステリネタバレのイメージが強い本書ですが、実はオリジナル推理クイズ(これがなかなか凝ってて難しい)も結構収録されています。 点描による美しくもちょっと不気味な挿絵の効果も相俟って、なんとも言えず鮮烈な、独特な、眩しい印象を残す一冊。 私は好きだ。

No.739 8点 ハサミ男- 殊能将之 2017/09/06 23:26
こいつオカシイ、医師もオカシイ。死にたいシリアルキラーと警察側のカットバック(●●●●●●)。ところが警察が捜査してるのはシリキの真似した模倣犯の事件。シリキも警察とは別箇に模倣犯を追いつつ自殺トライアルも死力を尽くして律儀に繰り返す。それを冷笑する医師「お前は死ねない」。経緯あって模倣犯事件の容疑でシリキに目を付け始める警察(●●●●)。じっくり読んでる筈なのにハイスピードでページが進んで悔しいこと悔しいこと。お、カットバックご両方の接点が遂に来た、と思ったらあれ、クロスしたまま離れて行っちゃってるじゃん(X型)?! いや、そう見せてやっぱり違うのか(Y型)!?

●●●●●●●●●●が結構長い、しかも意図的に●●●●●●●●●●どっちの●●●●●●●●●●なる●●●●●●●●●●「死の接吻」●●●●●●。

●●●●●●●、マスコミ●●●●●●●●●●●●●●●●設定●●●●●●、アンフェア●●●●●●●●●。

それにしても、こりゃ●●●●●●●●●面白そう(おっとネタバレか?)。
それと、いい文章だね。 云い難い品格を感じます。 タイトルがXTCの曲に引っ掛けてあるのは良かった。アンディ・パート●ッ●が「ノッてるかーい?」とか言ってンのは(わざと書いてンだろうが)引っくり返って大笑いです。

余計な●●●●●●●●●●●●●●、まっとうなサイコキラー警察小説で通したら完璧作になったのに(評価や評判の高低は別として)、と思わぬことも無かったですが、やはりこの●●●●あってこその闇の突出、ひいては作品の突出ですよね。

一人●●●二人●●●上手に●●●●●(片方だけ●●●●●●●●●●●●巧妙)、これぞミス●●●●●●●魂! って感じにキメてくれたのも光ってます。●●●●●や●●●●●●を髣髴とさせますよ。
 
しかし最後まで●●●●●●●●●●●●●●●●●●なんて。。こりゃ本作をうっかり「●●モノ」とカテゴライズしちゃう人もいるかも知れませんな(●)。

No.738 5点 殺人博士からの挑戦状 ~完全犯罪のトリックを見破る~- 事典・ガイド 2017/09/05 00:09
題名は推理クイズ本っぽいけど違います。ミステリとは切っても切れない縁である様々な「殺人手段」について幅広~~く雑学風にまとめた一冊。電気だのトリカブトだの●●の××だの。。 飽くまで殺し方の「素材」を並べたもので、その使い方に工夫を凝らしたトリックのネタバレ本ではありません(稀にトリックの域まで踏み込むが)。文章もちょっと面白く「邪魔な亭主を葬りたいなら」だの「アンタの女房もこれでイチコロ」だの耳元で読者に語りかけて来る、何ともユーザー・フレンドリーな本。実践派のあなたにお薦めです。 

No.737 8点 社会部長- 島田一男 2017/09/02 19:01
いつも気ッ風のいい手練れの文章で愉しませてくれる島田一男先生ですが、本短篇集のキレキレっぷりはまた格別!! 余ッ程α波が頭ん中スクランブル交差点を駈け巡ってたんでしょうナ! おなじみ有楽町は「東京日報」社会部の赤鉛筆使い、北崎部長がまた最高に良い! クシャクシャのハンチング、遊軍記者の亀田(亀チャン)もまた最高! 他に桐さん何さん、警察側とか、動きのいい脇役にチョイ役、いィ~っぱい出て来て活躍します。

社会部長(表題作)
解決はどうッて事も無いが、事件はちょッと面白い。要するに羊頭狗肉ってワケだが、何しろシマイチ先生の会話文も地の文も快調に飛ばし過ぎてるモンだから文句など付けられン。昭和の音楽業界の裏で起きた連続殺人。まァでも薄味ミステリだからネ、それでも7点。

三つの仮面
事件解決に直結したラストシーンが堪らなく沁みるんだ。。。。解決そのものは平々凡々、事件はまずまず興味深し。つまりは羊頭狗肉最後にまた羊ってナもん。またもや会話に文章最高。戦後の混乱を引き摺る昭和の失踪事件。親子の情の物語上級篇。やるじゃねえか、アプレの娘。。8点。

泥濘の町
泣けました。もうこれだけでネタバレです。都下の腐敗した街で起きた新聞記者殺し。8点強。

女殺陣師
稽古で使う竹光が真剣に掏り替わって人が死ぬ。ところがこの剣劇団、斬るシーン以外は普段から真剣でチャンバラやり合ってたってんで話がチト面倒。これも解決自体は平凡なもんだが、心に残るエンディング。刃傷からんだ人情話。7点。

三行広告
珍妙な新聞広告はもう出オチのネタバレに見えチャった。。果たしてその通りだったが解決の糸口はなかなか肌理(キメ)細か。某ホームズ譚の応用篇かな。緩さがB級ぽィが悪ヵない。 7点チョィ。

幻の男
某著名作とは関わり無し。自分は狂ってるかも知れない、狂ってないなら命が危ない、と精神科で不思議な陳述をした男が、殺された。魅力ある謎はまずまずの反転解決を見る。でもやっぱり会話文が最高、結末の驚きを上回っちゃってまさァね。7点強。

特ダネ売り
隻腕の彫刻家が持ち込む奇妙な事件ネタ。入れっぱなしって。。歯って、そっちか。。。よろしく⚫️⚫️すべし。。スッと消え行く寂寞のエンディング。こりゃァ独特の味。 8点弱。

アリバイ売ります
河内桃子。。最後の最後で急に話が大きくなった。隠しの巧いブラウン神父直系欺瞞+α。シマイチ流の複雑系タマシイがやっと炸裂してくれたってナ。ショートパス決まり過ぎのラスト数十文字、たまらンね! 8点強!

No.736 6点 水の柩- 道尾秀介 2017/08/31 12:27
いつやるんだ!? いつなんだ?! 本当にやったのか! 叙述トリックか(笑)!? って気になるんですよ「あの事」が!! いやァ引き込まれますよねえ。。それであの、めくるめく混乱を抱いた、輝いて尺たっぷりのフィナーレね、心に残ります。 まあ、ミステリの手法を借りた普通小説って体ではありますが、、だけどその割には、イジメの件にしても過去の或る事件にしても或る家庭の暗さにしてもその描写にはミステリ的な「割り切ったアッサリ感」というか記号っぽさが目に付く、っつうか「うわぁ酷い、ここまで酷いともはや文学的!!」と胸を突かれる様な感動に至らず、中途半端ながらやっぱミステリ範疇なのかなあ、、かと言ってイヤミス的に嫌ャ~~ァな波動が押し寄せるのでもない。ついでに言やァ主人公父親の苦悩なんかも、もっともっと掘り下げられるのに。。 なーんてね、でも面白く、(特にフィナーレは)爽やかに読みましたよ。やっぱり「あの二人」のあのハイライトシーンが素晴らしいね。

No.735 6点 雪盲- ラグナル・ヨナソン 2017/08/30 12:33
♪ あれからニシンは 何処へ行ったやら。。 金融破綻後のアイスランド、人口千人ちょっとの海沿いの街。名士である老作家は劇団主幹。公演を直前に控えたある日、階段から転げ落ち死亡。。。。

文庫帯の惹句『アイスランド、ヤバい!』はなかなか唆る。実際読んでみると良い意味で普通に共感出来るほのぼのした味わいが強い。しかし巧みな複雑構成(事件は一つ二つじゃない!)と斬れの良い叙述操作で読者牽引力はハイエンド。そして人間関係の描写がヴィヴィッド。主人公刑事アリ=ソウルは人口十二万の大都会レイキャビクからの新参者だ。まあ、序盤~中盤に強く引き込まれる割に、結末がちょっとなあ。。意外性も(ミステリ的な)深みも、惜しい所で肩透かしからの空回り。それでも読んで愉しかったんだよ。

かの国と言えば、やはり白夜の温泉でシガー・ロスを流しながら朝まで読書、みたいなステレオタイプのイメージに引き摺られますが、少なくとも「世界で最も読書する国民」というのは事実であるらしきニュアンス、文章の端々からそれとなく伝わるのは素敵です。

日本の残暑厳しき折こそ、冷ンゃりした冬季アイスランド・ミステリがよくハマる。あなたも、如何です?

No.734 9点 宵待草夜情- 連城三紀彦 2017/08/26 18:22
能師の妻
女子でありながら能楽の卓越した伎倆を持つ義母と、その弟子である義息、明治中期、飛んで昭和高度成長期。 戦慄のニ重底ホヮイダニット「何故、屍体の一部を隠したのか」はもう一つの事件の常軌を逸したハゥダニットと相即不離で悪夢を誘う。 8点

野辺の露
義姉と私と義姉の息子、大正初期から昭和戦中。まるでエロスを纏ったブラウン神父のような、或いはブラウン神父の濡れ場を覗くようなw手紙形式反転劇。非対称の切実な叫び声に打たれる。 8点。

表題作
死期を想う元画家の男と、カフェ女給、大正中期の三日間。真相ちょっと説明過多とも見えるが、いえ何、そこは伏線回収の醍醐味と抒情炸裂の交叉点ですから。確かに事件解決としては不思議な緩みを抱える一点突破。しかしミステリ小説の全体は、連城ならではの泣ける逆フーダニット。しかし伏線の一つに「活動写真」か。。序盤の男女の会話がチャラくてびっくりしたwがしかし、そこから後の文章は水際立って美しい。8点。

花虐の賦
劇団主幹と、病夫を抱えた看板女優、大正末期。 「賦」とは叙情を廃し事物の客観的列挙で情緒を醸しだすハードボイルド的漢詩文体のこと。 力点と作用点の距離が長い大トリックに引き摺られます。中トリックでは、まさかの数学パズル的要素を、隠された情念物語に美しく絡めていたのに驚きます。語り手の存在が最後くっきりと力を増して浮かび上がるのも素敵。 先生。。 9点。

未完の正装
女と、男と、女の亡夫と。。終戦直後、少し飛んで高度成長期。唖然とするほど豊富なミステリ要素が濃縮された短い物語を構成するのは流麗過ぎず剛健な文体。ミステリの側があまりに強烈で小説サイドが押され気味、連城らしくない。。なんて贅沢な文句も出てしまいそう。いやいや本作のただ事でなく夥しい各レベル各種トリックの有機的噛み合わせはカー「三つの棺」を髣髴とさせかねません。だけど本作も一番外枠の大トリックはブラウン神父直系ですね。そして一本筋の通った文学的テーマの存在が作品を引き締めています。なんとまあ豊潤な。10点超え。

いやはや、連城短篇の濃密さ、精妙さは喩えようがありません。

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